五月一日 天氣 快晴 寒暖 暖 來信 父、弟妹 發信 父
○時間割変更、三日より施行。水、第二時ぺ独、第六時鮫体。
金第一時英、第六時山体三。
五月二日 天氣 晴 寒暖 暖
○何処へ行つても僕は苦しむ様に出來てゐる。普通の人は何とも
思はないのだが、僕に取つては非常に苦しい。然し、苦しいのは僕の為に
良いのかも知れない。他の人が平気で居るのを見ると羨しい。僕は
どんな境遇に置かれても、人一倍苦しまなければならない。苦しむのは
つらい。然し、雄々しく「苦」に対して闘つて行くべきであらう。
五月三日 天氣 快晴 寒暖 暖 發信(母、弟、妹)
○本年度授業概観。
修身。春山春樹氏。國語。今井彦三郎氏。第一學期大鏡。二學期枕草紙。三學期
源氏物語。漢文。左傳戰國策。戰國策を終へ左傳へ進む。四月二十六日戰
國策四六頁より初む、昨年は二八頁迄やつてある。國漢は一髙編纂の教
科書。尤、今井先生の時は、解釈書類を教室へ持込んでも可。東洋史、中村久
四郎講師、那珂東洋小史。西洋古代中世史、亀井髙考氏。心理学、
髙橋穰氏、経済学、竹内正瞭氏。山崎覚次郎氏経済原論。物理学、竹内潔氏。化学、富
永齋氏。囗文法、杉敏介氏。獨語、岩元
禎氏。Scheffel Hugideo,Juniperus, Kellers Das Sinngedicht,
菅虎雄氏。 Goethes Kindheit. Petzold氏。体操 鮫島
精一氏、軍教 山内六郎氏
五月四日 天氣 曇 寒暖 暖
五月五日 天氣 曇 寒暖 温
○今井博人君小林直人君明道館訪問。
五月六日 天氣 曇 寒暖 冷
五月七日 天氣 細雨静々 寒暖 冷
○今日の晝休には沢山を用をたした。
⑴鈴木敏雄君から宮本氏の哲学概論を持つて来て、野木
新一氏に返す。
⑵上田中学出身宮下通長君を和寮十二番に問ふ。
⑶竹内潔先生に通学願許可を通知に行く。
○夜、佐藤國男君、小口幸夫君と散歩す。雨上りで空気淸澄、
風柔く気持大いにす。
五月八日 天氣 快晴 寒暖 暖 發信 姉
五月九日 天氣 快晴 寒暖 暖
○温度漸に上る。
五月十日 天氣 晴 寒暖 暖
○近頃神経衰弱の気味である。
○五月六日作文日、島田鈞一先缼席、本日の漢文の時間に書く。「初夏」。
センチメンタルなものを書く。
五月十一日 天氣 小雨 寒暖 冷
○今日は学校を休んで保養。二三日保養する積り。神経衰弱だか
風だか良く分らんが、何処となく具合が悪い。
○一髙入学より今年の三月末日迄。出金計五百二十円三十二銭、一月平均四三円
三六銭。
○ドストエフスキーのカラマゾフ兄弟を読む。「いのり」と云ふ事の如何に力強いかを
知つた。宗教の本質は「いのり」である、「いのり」なき宗教は眞正の宗教
でない。
五月十二日 天氣 小雨 寒暖 冷 來信 岩波書店 姉 發信 新潮社、内田老鶴圃、福永書店、誠文堂、アルス、近代社、姉、井上信之介
五月十三日 天氣 曇 寒暖 寒 來信 母 發信 姉
○病気らしいものも治つたらしいので、午後から出る。幽霊で。
○夜に入りて、頭非常に澄む。愉快。小口幸夫君とのみに行つて、昨夜一時にねて、六時間
きりねないのに睡眠不足でないのは、熟睡した為ならん。
五月十四日 天氣 曇 寒暖 寒 來信 近代社、福永書店、学生聯合禮拝本部
○阿部次郎著倫理学の根本問題を読む。実に良い。飜譯も又上乘である。
五月十五日 天氣 曇 寒暖 冷 來信 醇郎 發信 醇郎
○第二回東京市内外学生大聯合禮拝に出席す。省線お茶の水より
澁谷迄約三十分。午後二時正開會、午後四時二分閉會。靑山會館。
○研究社英文学叢書二十四冊五拾五円で売つてた。一冊平均すれば二円
二十九銭強となる。
五月十六日 天氣 晴 寒暖 暖 來信 アルス
○小林直人氏、北澤壽久氏明道館訪問。北澤正氏と四人で神楽坂九
段方面散歩。
五月十七日 天氣 快晴 寒暖 暖 發信 新生堂、改造社、大日本図書株式會社、寶文館、弘道館
五月十八日 天氣 曇 寒暖 暖 來信 新潮社
○大鏡に關する文献。
第一高等学校國文学部編纂 高等國文大鏡 六合館藏
訂重 |
有明堂文庫 水鏡 大鏡 増鏡
佐藤球著 大鏡 全 明治書院
訂校 |
久松潜一編 大鏡 中興館
博文館 日本文學全書 二三編 水鏡・大鏡
博文館 校註 國文叢書 第九巻 水鏡 大鏡・今鏡・増鏡
鈴木弘康校訂註釋 大鏡註釋 靑山淸吉藏版
正校 |
頭註大鏡活釋 小林榮子著 大同館
五月十九日 天氣 曇 寒暖 暖 發信 姉(二つ)
五月二十日 天氣 曇 寒暖 暖 來信 新生堂
○体操のとき狭サク射撃。一学期の時のより的が小さい。初め零
点、次に一点。然信号手が出駄羅目をするから、何だか分らない。
五月二十一日 天氣 雨 寒暖 冷 來信 誠文堂、姉
五月二十二日 天氣 雨 寒暖 冷 發信 姉
○姉を訪問しやうと思つたが、雨が降るので止めにした。
○明道館員で合作小説を作る事にした。合計十名 僕は四番
目。一人三枚以上、一晝夜以内。
五月二十三日 天氣 曇 寒暖 冷 來信 大日本図書株式會社 發信 母
○姉を問ふ。郊外はやはり良い。
○手を合せる心持のない人間はだめ。
五月二十四日 天氣 曇 夕立 寒暖 暖
○宗教信者の禱を見て、今迄は何故あんな事をするのだらう、わざく
あんな形式を取らないでも良いのに、と思つてゐたが近頃、いくらか其
の心持が分つて来た様な気がする。全心全霊を捧げて、一心不乱
に何者にか対して禱ると云ふ心持が分つて来た。
五月二十五日 天氣 村雨 寒暖 暖
五月二十六日 天氣 晴曇半ばす 寒暖 暖 來信 母、改造社、小包
五月二十七日 天氣 晴 寒暖 暖
五月二十八日 天氣 曇 寒暖 暖 來信 百枝
○「考へ方」帝大一髙大會に出席。午後六時からと云ふのが、七時十分頃初まり
十時四十分頃終つた。出席者少く、藤森先生及学生十五名だけであ
つた。塚本先生に通知をするのを忘れる様な間抜けをしたのださ
うだ。
五月二十九日 天氣 雨 寒暖 暖 発信 母
五月三十日 天氣 雨 寒暖 暖
○明道館員一同、隣の片倉直人氏宅へ呼ばれて行つて、晩餐
を共にす。
五月三十一日 天氣 曇 寒暖 暖