気丈な婦人 強盗を走らす
昭和8年4月7日の『東京朝日新聞』に「気丈な婦人 強盗を走らす」という見出しでいさのの事が出て居る。このころいさのは東大の文学部副手をしていた長男摂郎と二男の醇郎、三男和郎と本郷区龍岡町に昭和7年の正月から住んでいた。新聞によれば4月6日の夜9時15分ごろ、いさのと三男の和郎がいるところへ出刃包丁を持った強盗が押し入ったということである。以下新聞にはこのように書いてある。
強盗は30円だせと行ったがいさのが5円だすとこんな家に住んでいてこれだけのことはないだろうといって、二階に上がってきたので、さらに5円を与えた。その時いさのがうっかり電気スタンドを蹴倒してしまい、その音で強盗が下に逃げたので、いさのは下に行ってみると強盗はまだいて、あたりを物色中であった。いさのが気を落ち着かせて「お茶でも入れましょう」といって油断させ隙を見て外に飛び出すと、賊は慌てて10円と金の指輪を奪って逃げたということである。この話はいさのが強盗に説教をしたという風に私は聞いてあたのだが、それはちょっと話がいつの間にか大げさになったのかもしれない。しかし事実は以下のようにちゃんと新聞記事になったのである。