農地改革への疑問 小松いさの

今度の農地改革制度は他府県の如き
大地主の有る処では適当の法案
の制度ならんも当長野縣の様な零細農
家の集れる地方に於てハ
害あって益無く平地波立たせる乱を起こすに過ぎません
全く見当違ひの制度と云へませう
此辺の農村ハ土地所有も大体平均して
居り二代三代と勤勉粒粒辛苦の家が
餘分に土地も所有し親の代今の代と
なまけ者不真面目のものが土地を失ひ所有耕地
の少い家となって居ります
今当地方で地主と目されて居る者は次の場合  あります
地主小作と称スル者も他府縣とは全然性質を異にして居ります
便宜上耕地を依頼した者が地主と称されて耕作し居る
者を小作と称云るに過ぎません時には
地主の方が持地の少なく小作の方が所有地の多い場合もあります
今地主と(目されて)なって居る者は大体次の場合です
一、子供が  子に し
修学して出て 残る職に
就き    土地耕作を人に頼み有る者
二、所有耕作出し二人三人の子供にて耕作し
生活するに足らぬ場合その中の一人に耕作を
任せ他に出でし   職を其他に
を持ち協力して生活し居る者
三、一家死亡し相続人たる子供が外村の
 家にて育てられ居り返り来る
い来りて家をつぐとそれ迠所有地を人に
  める者
等々であります
以上の如き場合土地名義人が他出
親兄弟妻の耕作し居る家多し
此度の制度によれば土地名義人不在なれ
(他誰が在郷しても)
は不在地主と称し耕地を買い上げられ
ると聞いて居ります
此様な家ハ一時耕作を人に依頼せしに過ぎず
他は職を失ひ又は職を止めて帰郷の
場合は何によって生活すべきか家
          い爲称であります
実に不当も甚しい事です
今日迠小作料の如きも目下の非常なる
底額(ママ)なる上に小作人の都合次第
地主たる者は実に気の毒な状態で有り
ました 此様な零細地主   すぎず  隠
農地や土地等有る筈  いのです   それを
無理に取り上げる   も甚しい事です
此様な時に際し今度の制度ハ地主に非常に
不利にて気の毒とも云ふべき言葉がありません
此制度を全国一律に適用するが故に
此様なムジュンと甚しき事になります
そこを土地々々により適当なる方法を
講するにあらねば当地方の如き
に   てハ
を講じられんを切望します
講じられる事は最目下の急務と思います
三町歩以上位の土地所有者は土地の
開放も農地制度改革上止むを得ない
でせうが先祖より  そう大切な土地に
        すべきもので有ります
他に其人々の事情意志を尊重し
此の制度のために  し
し不幸人を出さぬように極力つとめ
なくてはならないと思います
一、一家に一人  も存 が居る家は不在地主と認めぬ事
二、一時  に逆上がる如きはよろしからず
凡て現状で丈 すべき事
三、三町歩以上の所有者にて土地手放す場合には其場所と
売渡す人の   は地主の意志を十分に尊重すべき
事等々
村々の農地委員が其村民の
為に親切に裁量する
      立て前なって居るとは聞いて居りますが
此の制度実施ハ中々容易ならぬ困難な
仕事でありまして縣の
方よりの指令を待たなくてハ
到底出来ない事と思いますから
以上の三ヶ条大至急  それそれ御指令
有らん事を祈って止みません
目下の當村の状態 此制度  利
農村の状  ハみてその
一歩手前とも云う  か 実に憂慮の
         失礼なから  を呈し
し  殿の深甚なる御配慮と
なる  ん事を御願い  す次
第で有ります
農家で子供に修学させる ハ餘程 作く
の家に人並以上   以上学費を
出したる実に苦心すへき  です
代々勤勉篤行有り村にも国にも
よく奉仕したる家が地主と目されて
僅か  りの先祖代々の何物にも替へ難き大切なる耕地を
取り上げられ
不まじめ   村人にも
迷惑をかけて有る如き者
としても困りの者が小作者なる故に
良民の大切なる土地を
労せずして確得する事に至っては天人
共に許し難き事と思います
三ヶ条を実施するに  てハ
目下の重大時局を
大いに抵抗するに  ると考えます
他出し重要なる職につける者も職を止めて帰村して
有る    多も
           就職先ては有用の人材
を失ひ農村にてハ人  も  由々しき  問題
となる      云へませう