○六月一日(日)  曇 冷

午後、散髪。

薜暮橋著『物の考え方・学び方』をよむ。

アメ帝は最後のあがき。吉田内閣も同じ。国会をのり切れるかどうか。場合によっては大きい変動が起る。

パージ問題。闘いが終ったとは思っていない。持久戦と思っている。武市を追出すことが第一段階。

 

○六月二日(月)  晴 暖

午後、御影。京都の宮内氏に会う。助手連と雜談。

夜、「叙事詩と国民文学」を書く。五枚。

昨日の北京放送。中日貿易協定。

 

○六月三日(火)  曇 暑

午後、御影。長倉、小川君に会う。

昨日の文科教授会。破防法反対を表明。

東大新聞の原稿発送。のせるかどうかは分らないが。

『歴史における民族の問題』をよむ。

アメリカにおける経濟危機の政治危機への轉化。

 

○六月四日(水)  晴 暑

午後、六甲。研究室。

夜、『歴史における民族の問題』讀了。非常に面白い。

朝鮮、ドイツ、フランス、騒然。

アイゼンハウァー、内部崩壊を説く。流石よく事件を知っている。

夜、永井氏来る。

 

○六月五日(木)  晴 暑

午後、御影。青木君等とテニス。研究室で雜談。

朝鮮の問題ではアメリカもイギリスも相当あわてている。李承晩政権の崩壊。

発信 今泉三良

受信 今泉三良

 

○六月六日(金)  曇 暑

疲れて、休養。風呂へ行く。

今泉から知らせて來た都大の件。うまく行けばいいが。時間講師でも大きい意味がある。

毎日重大な事件が起る。米製鋼ストの意義は大きい。国内では明日のスト三〇〇万。

 

○六月七日(土)  晴 暑

九時半家を出る。十一時半奈良着。女子大へ行く。関西哲学会。午前、總会。

ひるに街へ行く。市役所へ行って、和郞に会う。女子大へかえる。午後、研究発表。四時終了。後、梯氏等と奈良見物。七時二十分、奈良発、九時すぎ家えつく。

受信 石母田正

 

○六月八日(日)  雨 冷

昨日の奈良行で相当疲れた。一日中家にいる。午後、赤松来る。岩井氏、岡井氏来る。夕方、池田氏、青木氏来る。

 

○六月九日(月)  小雨 冷

午後、元町。御影へ行く。六甲へ行き、歯医者に支拂いをする。

夜、『世界』をよむ。

 

○六月十日(火)  晴 暑

午後、御影。青木君等とテニス。

六甲で破防法講演会。盛会だった由。

夜、雜誌をよむ。

赤松がくる。

 

○六月十一日(水)  曇 暑

午後、六甲。海道さんに会う。

満洲爆撃説。最後のあがき。

Conforth: Dialectical materialismを訳し始める。

 

○六月十二日(木)  晴 暑

午後、御影。堀氏等に会う。小川君から日文協の報告をきく。

この頃飛行機が盛んに飛ぶ。

飜訳少し。まだ始めだが、その中に調子が出るだろう。夏休にし上げる予定。

 

○六月十三日(金)  晴 暑

午後、風呂へ行く。

七時、御影。民科の会議。九時終了。

夜、飜訳少し。これは気永に少しづつ訳すこと。あせらず、たゆまず。

朝鮮問題、新しい展開を示しそうである。

破防法難行(ママ)。今後の狀勢によれば、にぎりつぶし、吉田内閣崩壊も可能である。

 

○六月十四日(土)  雨 冷

午後、大阪。民科。幹事会。笹川君と一緒に中央公会堂へ行く。六時からソビエト研究の夕。柳田氏、山辺氏の講演。「大音楽会」の映畫。すばらしい映畫。九時終了。

 

○六月十五日(日)  曇小雨 暑

休養。

梅雨に入った。

夜、飜訳少し。ボツボツやること。

受信 母

 

○六月十六日(月)  曇後晴 暑

午後、御影。新開地へ行く。第一劇場で「勇敢なる人々」をみる。かなり世俗的。

夜、飜訳。

イギリスは破産にひんす。

受信 小川利夫

 

○六月十七日(火)  晴 暑

午後、御影。皆と一緒に湊川へ行く。破防法粉砕決起大会へ行く。名和氏等の話あり。六時からデモ。途中まで参加する。

夜、飜訳。

 

○六月十八日(水)  曇 暑

午後、六甲。研究室。海道氏不在。

夜、飜訳。

 

○六月十九日(木)  雨 暑

午後、御影。家へかえってから風呂へ行く。

破防法、昨日の法務委員会で採決せず。

夜、「国民科学について」を書く。五枚也。

 

  • 六月二十日(金)  小雨 暑

午後、大阪。民科へよる。三時半、阪大山口研究室。哲学部会。東京から鳥井氏来る。大阪から御影へ(七時半)。うどんや。民科グループ。十一時終了。

昨日、法務委員会。破防法を否決。

 

○六月二十一日(土)  晴 暑

午後、御影。テニス。『実践論』の研究会。

国会延期問題紛糾。

アメリカ、製鋼スト重大化。

夜、飜訳。

午前、民科御影分会大会。軌道に乘る。

 

○六月二十二日(日)  曇小雨 暑

休養。日曜は子供達が家にいてうるさい。

夜、飜訳。

アメ帝は至る所で破綻に瀕している。最後のあがき。

発信 田村義也

 

○六月二十三日(月)  風雨 冷

午後、御影。『資本論研究会』に出る。

ダイナ颱風來る。

夜、飜訳。第一章終り。

神戸に来て滿三年。いばらの道であった。

発信 母

 

○六月二十四日(火)  曇 暑

午後、六甲。海道氏に会う。

夜、飜訳。

発電所の爆撃。最後のあがき。挑発。

 

○六月二十五日(水)  曇 暑

午後、御影。青木君とテニス。

夜、雜誌をよむ。

朝鮮の狀勢も重大な段階へ来た。岐路に立つ。

 

  • 六月二十六日(木) 曇後雨 暑

休養。午後風呂え行く。

国会、てんやわんや。

夜、飜訳。

盛んに飛行機が飛ぶ。今度の挑発も失敗に終るであろう。アメリカと西欧との溝をふかめた。

 

  • 六月二十七日(金) 曇小雨 暑

午後、御影。ユネスコ。後、青木君と神戸の「健康」へ行く。民科幹事会。九時終了。

朝鮮。アメリカはやけくその觀がある。米英の対立、きびしくなる。沈黙している北朝鮮側がどう出るかが問題である。

破防法立往生。

 

○六月二十八日(土)  晴 暑

午後、御影。日文協の總会。

夜、飜訳。

御影、相沢氏の話あり。

受信 田村義也

 

○六月二十九日(日)  梅雨 暑

午後、大阪。民科。哲学部会。「調査」の打合せ等。

梅雨でむし暑い。

国会、七月末まで延期。

平和の春ちかし。

受信 母

 

○六月三十日(月)  晴 暑

午後、御影。

割合に飛行機が飛ばなくなった。大概おとされたのだろう。

祐二郞、発熱。風邪。

野島さんから櫻桃来る。