○六月一日(土)  曇 暑
  午後、散髪。オウギでテレビを見る。
  『人民』の原稿を書く。
受信 三上陸 植村幸生 日本文化人会議

○六月二日(日)  曇 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、オウギでテレビを見る。安念山、優勝。
  原稿を書く。
  とにかく家にいるのはユウウツである。
  亀井も消極的で駄目だ。
  発信 三上陸
  受信 亀井蔀

○六月三日(月)  晴 暑
  午後、みかげ。毛沢東。哲学研究室へよる。岡田さん等と会う。
  『人民』の原稿終り。二十三枚。
  たしかに、四月以後ぼくの身辺は活溌になってきた。
  発信 宮村光重
  受信 寺島文夫 宮村光重

○六月四日(火)  晴 暑
  午後、みかげ。
  三上君へ原稿を送る。
  小島君から『サルトル文学論』の寄贈あり。
  のぶよ、東京へ行く予定。
  『浮雲』をよむ。
  発信 寺島文夫 岡田啓子

○六月五日(水)  曇後雨 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、入浴。
  明日の用意。カントをしらべる。
  過去二ヵ月。不十分ながら、相当充実したものであった。非常勤講師をも十分利用した。まづ滿足していいであろう。

○六月六日(木)  曇 冷
  午後、みかげ。哲学史、カントの生涯と著書。国文研究室で古典部会。
  『浮雲』讀了。
  のぶよも東京へ行ってくれば、ノイローゼも治るだろう。
  今後、日本文学を道楽としてでなく、正式にやりたい。
  発信 日本放送協会、日本讀書新聞
  受信 日本讀書新聞 常井直正 日本放送協会

○六月七日(金)  曇 暑
  休養。
  のぶよ、東京へ出発。
  「知識について」を書く。
  受信 三上陸

○六月八日(土)  曇 暑
  午後、みかげ。永積さん、猪井さんに会う。
  三の宮へ行く。流泉書房へ行く。古川君に会う。
  「知識について」を書く。十枚。送る。
  『仏教』(靑木書店)の寄贈あり。
  発信 植村幸生
  受信 岩波書店 岡田啓子

○六月九日(日)  晴 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、みかげ。日文協例会。『浮雲』について。のち、猪井さん等と三の宮へ行く。
  三一もけしからん本屋だ。『用語辞典』の件など。
  発信 三上陸

○六月十日(月)  晴 暑
  午後、みかげ。毛沢東。白だんで猪井さん、杉島君、三浦さん等に会う。『浮雲』の件。
  延世から電報。風邪でおくれる。
  本山小学校、本山中学校、風邪で休校。

○六月十一日(火)  小雨 暑
  午後、みかげ。古典部会。
  カントをしらべる。
  延世、昨日発熱八度五分。かなり高い。この機会によく休むがいいだろう。
  三一も頭でっかちのピンボケだ。何かどきついものがいいというような錯覚がある。自然な感覚や感情がマヒしている。だから売れない本ばかり出している。近所のかみさんたちの意見でも聞いてみるがいい。民主的出版屋の缼点はそこにある。頭の切りかえをしなければ、つぶれるより外ない。ぼくの「日記」を出さないのも全くピンボケだ。出せば売れるのだが。
  受信 林ふき さ?

○六月十二日(水)  曇 暑
  休養。ひるね。『徒然草』疲れか。
  コトブキ湯へ行く。
  『人民』(6)着。
  森さんから抜刷着。
  午前、兒玉医院。
  身長、一七一センチ。
カントをしらべる。
  貯金、四月二十四日、三七三・七三〇
     六月十二日、三四三・七三〇
     一ヵ月半で減少三万円也、

○六月十三日(木)  曇 暑
  午後、みかげ。哲学史、カント、感性論まで。はじめて神戸大学から金を貰う。少額だが、意義は大きい。家でビールをのむ。
  『人民』をよむ。面白い。
  発信 小島輝正、植村幸生、田辺賢、平岡久、森信成、小松延世
  受信 植村幸生

○六月十四日(金)  晴 暑
  午後、六甲映畫へ行く。「山鳩」と「浮雲」を見る。
  のぶよ、大体よろし。おじいちゃんの方が熱が下らない。
  神戸二九度。今迄の最高。
  受信 三上陸 のぶよ、

○六月十五日(土)  晴 暑
  むしあつい。ひるね。
  『山形大学紀要』着。 
  明日の武庫川教室の用意。
  受信 のぶよ、

○六月十六日(日)  晴 暑
午前、兒玉医院。
午後、みかげ。武庫川の哲学研究会。ルネッサンスと『挽歌』について。
三〇度。一番高い。

○六月十七日(月)  小雨 冷
  午後、みかげ。山口さんへ電話をかける。
  楠さんから図書課の件をきく。
  武市が『図書新聞』でつまらないことを書いている。
  延世、明日歸る。
  延世が神大図書館へつとめることになるとたしかにいい。待遇は少くても安定する。保険もあるようになる。組合もある。レクリレイションもある。楠さんや三浦さんの仲間に入ると、気が若くなり、ドライになる。つまらないことにネチネチしなくなる。分館は事務の中でも最もいい。最もプログレッシブである。鍵本、柴田、西村氏等もいい。ボーナスも将来は出るし、夏休みはかなり休める。
  発信 近江栄

○六月十八日(火)  曇 暑
  ひる頃、延世かえってくる。
  午後、みかげ。永積さん、猪野さんに会う。猪井さん、流感で発熱。小川君に久しぶりで会う。

○六月十九日(水)  晴 暑
  午前、兒玉医院。
  山口さんから薬着。
  午後、入浴。
  明日の用意。
  三一も抜けている。ぼくの随筆を出版すれば売れるのに。そういう感覚がマヒしていることが、かれらの度しがたい缼陷である。
  今日から開襟シャツになる。
  発信 白石凡
  受信 山口栄子 民科 鷺の宮書房

○六月二十日(木)  晴 暑
  午後、みかげ。哲学史、カント、分析論。堀さん等に会う。
  山本健吉をよむ。余り面白くなさそうだ。
  発信 「思想」編集部
  受信 「世界」編集部、

○六月二十一日(金)  曇 暑
  午後、みかげ。井上幸次さんに会う。
  三の宮へ行く。古川君に会う。
  『弁証法入門』を書きなおす計畫。この夏の仕事として丁度いいだろう。
  コーンフォース「社会主義革命理論の再検討」をよむ。
  発信 理論社

○六月二十二日(土)  小雨 冷
  今日もよくねむる。薬のせいか。
  入浴。
  湯川君へ手紙を書く。『政界往來』を送る。それにしても三一はカンが悪い。何かどきついものばかり出したがる。素直なものにたいするセンスがない。
  『政界往來』五月号「ある哲学者の生活と意見」
  発信 湯川和夫

○六月二十三日(日)  晴 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、大阪。イタリアンへ。民科哲学部会。
  『現代哲学の一般知識』着。
  森さんでは皆が協力しない。上林貞治郎に近づいてきた。しかも、上林だけの政治力はない。
  今日、小島君の出版記念会があった筈。不参加。
  発信 鷺ノ宮書房

○六月二十四日(月)  曇、暑
  午後、みかげ。猪井さんに会う。毛沢東。

○六月二十五日(火)  曇 暑
  午後、大阪。創元社で保坂氏に会う。『弁証法入門』書きかえの件。南へ行く。ユマニテで新見君に会う。
  『弁証法』書き直しの資料を集める。
  しばらく續いたユウウツもどうやら抜けてきたようだ。
  森さんがフエをふいても、人はおどらない。
  七月、八月は『弁証法』の改訂に全力を盡そう。單なる入門でなく、單なる輸入でなく、弁証法を日本人のものにするという、野心的な企劃である。
  受信 白石凡

○六月二十六日(水)  曇後雨 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、入浴。
  台風、台湾へ來る。九州へ近づく。
  明日の用意。
  夜、大雨になる。
  森さんもあんなことをいっていたのでは仕方がない。自分で垣根を作っている。
  受信 岩波書店 植村幸生

○六月二十七日(木)  大雨 暑
  近畿地方豪雨。うちも雨がもり、床下浸水。
  午後、みかげ。哲学史、アンチノミーまで。猪井さんが「心」という小説をみてくれという。
  日哲委員、武市落選。
  猪井さんの小説をよむ。
  発信 山本晴義 日本哲学会、
  受信 日本哲学会、

○六月二十八日(金)  曇後晴 暑
  午後、三の宮。富士銀行で用を足す。御影分校へよる。
  明日の理論部会の用意。
  この学期も大体終わる。その間のぼくの活動は不十分の所もあるが、まずこの位なら滿足していいであろう。文学部の中へ相当根をおろした。もう無視できないだろう。近世哲学史がなければ、哲学科は成り立たない。
  夏休みの仕事。『弁証法』の書き直し。これには相当力こぶを入れている。

○六月二十九日(土)  曇小雨 暑
  午後、みかげ。理論部会。山本健吉『古典と現代文学』について。
  巡さんから抜刷來る。
  猪井さんの小説讀了。面白い。
  この夏休みに『弁証法』の書き直しの仕事のあるのは丁度いい。そのごの新しい動向をとり入れる。七月十日頃からかかろう。

○六月三十日(日)  曇 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、入浴。
  上林貞治郎、森信成、武市健人には共通点が多い。
  今日で今年も半分終る。早いものだ。
  『田舎教師』をよむ。割合面白い。
  この学期も終る。たしかに文学部の中に相当根をおろした。これはたしかに相当な成果である。部長も岡田さんも無視できまい。一週二時間でも。正式の講義をすることはたしかに大きい。学生にとって(教官にとっても)の感じもちがう。あとは学長がもう一歩ふみ切るだけだ。腰抜けの古林㐂樂にそれができるかどうかが問題だ。
  発信 巡政民 植村幸生
  受信 世界編集部