○十二月一日(日)  晴 暖
  午前、兒玉医院。ラッセルがきこえる。マイシンを打つ。
  午後から休養。インフルエンザもいいらしい。夜、六度六分。
  『人民』の原稿を少し足す。三一枚也。発送了。
  学士会の名簿がくる。
  兒玉さんの話によると、新島さん、ガンではなかろうかとの話。
  大学は大義名分を明かにせねばならない。神大はあまりにしみったれている。教授会で、大義名分を明かにし、堂々の議論をする人が一人もいないのだろうか。情けない。田畑茂氏ならやれるが。
  発信 巡政民

○十二月二日(月)  晴 寒
  休養。午後、六度六分。
  新島さん、ガンらしい。
  外大の学生、新聞をもってくる。
  岡田正三というのはよくよくヒューマニズムがない。しかも、会ったときは調子がいいのだから、いよいよけしからん。
  理論社へ久しぶりで印税の催促をする。
  インフルエンザ、いいらし。やはり一週間というものだ。
  多㐂二をよむ。
  三田、靑木、井上もだらしがない。三人で統一戦線を作ったら、岡田を押切る位なんでもない。靑木が推進力になるべきだ。一番罪が重い。
  発信 理論社

○十二月三日(火)  曇 寒
  午後、みかげ。小川君、猪野さんに会う。新島さんの件。井上さんに会う。図書の件。
  多㐂二をよむ。余り面白くない。時代の差か。『党生活者』讀了。藏原の解説もよくない。
  夜、室内十二度。最低。

○十二月四日(水)  曇後雨 寒
  午前、兒玉医院。インフルエンザ、一週間前よりだいぶいいよし。みかげへよる。猪野さん等に会う。
  山本さんから歯医者への紹介状を書いてもらう。行ったが、滿員なので又にする。
  『独房』をよむ。この方がいい。

○十二月五日(木)  曇後晴 暖
『弁証法讀本』十冊着。装幀は余りよくない。
  午後、富士銀行灘支店へ。御影分校へ。本の寄贈八冊をもって行く。杉島君、三浦さんといっしょに白ダンへよる。研究室へ、後藤さん、楠さん、杉島君、延世と次々にくる。
  先頃、哲学科で相談していたのは何事だろう。誰か新しい人をとろうというのだろうか。不可解、奇怪だ。三田、靑木のだらしのないのにもあきれる。大義明(ママ)分をといたらいいではないか。それでも大学だろうか。とくに岡田は陰険だ。
  カンパしてくれた人(病中)の名前をしらべる。年始狀を出すため。
  古林、岡田、甚だしくヒューマニズムを欠く。
  発信 山本晴義 保坂冨士夫 
  受信 山本晴義 

○十二月六日(金)  晴 暖
  午後、大阪。創元社で保坂氏に会う。残部は今夜できる由。シルヴァーで秋田さんに会う。民科の件。
  考えてみれば、神戸大学はひどいことをしたものだ。大学の歴史に前例のないことだ。人非人がいるからだ。古林㐂楽をはじめとして。古林は関西人のもっとも悪い典型である。東京にはああいうタイプの人間はいない。
  『東京物語』をよむ。
  発信 保坂冨士夫

○十二月七日(土)  晴 暖
  午後、フタニ歯科へ行く。歯を三本抜く。明後日からかかる。二週間、五千円かかる。
  流泉書房で古川君に会う。『弁証法讀本』が出ている。
  米、人工衛星発射に失敗。米国史上最大の屈辱。たしかに、アメリカ帝国主義は深刻な悩みをしている。來年は崩壊するかもしれない。
  石母田正をよむ。
  『弁証法讀本』の反響はまだ出ていない。これから出るだろう。白石凡さんが『週刊朝日』でとり上げてくれればいいが。
  進歩的文化人のさかしらなお説教にはうんざりした。鼻もちならぬ愚劣さである。
  もう過去のことをくよくよ考えるのはよそう。考えた所で仕方のないことだ。前向きの姿勢?になることだ。たしかに、最悪の狀態から考えれば、だいぶよくなっている。将來に希望をもつことだ。
  受信 山口栄子

○十二月八日(日)  曇小雨 暖
  午前、兒玉医院。インフルエンザが、治っている。気管支炎であった。御影分校へ。日文協例会が終る所へ行く。多㐂二の『党生活者』。午後、国語、国文学会。下村さんの啄木を聞く。
  『弁証法讀本』三〇冊着。
  三上君から何も言ってこないのもおかしい。『人民』がつぶれるのかも知れない。
  法律文化社がダンピングを始めた由。
  三田、靑木の腰ぬけにも、あわれを催す。
  発信 保坂冨士夫 樋口金吾
  受信 ちの税務署

○十二月九日(月)  曇 寒
  午後、みかげ。岡田さん等に『弁証法讀本』を寄贈。靑木君に会う。お母さん、なくなったよし。小川君、猪野さん等から新島さんのことをきく。岡田さんと中村秀?氏とが何事かを相談していた。 
  フタニ歯科で下、右の歯を一本ぬく。

○十二月十日(火)  曇 寒
  午後、みかげ。小川君に会う。新島さんのことを聞く。永積さんの『徒然草』の演習に出る。
  フタニ歯科へよる。明日二本抜く。
  創元社へ電話。郵送分は昨日出したよし。
  晝はだるくて、夜は元気になる。どうもよくない傾向だ。
  『弁証法入門』は十分に利用する必要がある。又、それだけの価値は十分にある。ジャーナリズムで発言権のある人には少し送る必要がある。

○十二月十一日(水)  晴 寒
  午前、兒玉医院。
  午後、新島さんの家へ。今日吐血。面会謝絶。かなりテンポは早い。
  フタニ歯科で、上、左の歯二本をぬく。
  鶴見俊輔、淸水幾太郎へ『弁証法讀本』を送る。〒は二十四円。
  中村寅一氏の母堂、十二月一日死去。
  祐二郞、そごうへ行って、ぼくの靴下を買ってくる。
  夜、室内十三度。平年よりは暖いだろう。
  新島さんへ『弁証法讀本』今日ついた由。
  発信 甘粕石介
  受信 醇郎

○十二月十二日(木)  晴 暖
午後、みかげ。新島さんのことを永積さん等に話す。小川君へ電話で話す。
フタニ歯科へよる。
荒正人へ『弁証法讀本』を送る。
『人民』(十二月号)着。
発信 亀井蔀 淳郎

○十二月十三日(金) 曇 暖
  午後、フタニ歯科。みかげ分校。小島君に会う。阪急で武庫之莊の山本晴義君を訪う。夕食の御馳走になる。
  『哲学小事典』の検印紙(千)着。
  小田切秀雄へ『弁証法讀本』を送る。
  『美徳のよろめき』をよむ。『挽歌』とはすっかりちがう。この二つをいっしょにして批評する批評の粗雜さ。
  今日は祐二郞の誕生日。コンコンと雪が降っていた。
  『哲学小事典』、やはりしっかりしたものは、少しづつでも確実に売れる。
  まだ『弁証法讀本』の批評はどこにも出ていない。当然問題になるべきだが。『岩波新書』ならさっそく問題になるのに、書物にも運、不運がある。
  受信 三田博雄

○十二月十四日(土)  曇 寒
  午後、久しぶりで入浴。十三貫三〇〇匁。歯の治療中だが、減っていない。
  フタニ歯科。右、下、の歯型をとる。
  検印紙を法律文化社へ送る。
  『美徳のよろめき』をよむ。
  受信 甘粕石介

○十二月十五日(日)  曇 寒
  午前、兒玉医院。
  午後、大阪。浪速莊へ。哲学部会例会。ルフェーヴルの論文について。甘粕さんから新島さんについての報告あり。
  今年はアメリカ下落の年である。来年はもっとテンポが早くなるだろう。坂をころがり出したアメリカを支えることはできないだろう。
  『美徳のよろめき』をよむ。
  こんど本の禮状は余りこない。どういう訳だろうか。
  発信 山本晴義 大野敏英

○十二月十六日(月)  晴 暖
  午後、みかげ。靑木君に会う。
  兒玉、志水、樋口氏へサケを送る。
  フタニ歯科、休み。
  中央公論編集部へ『弁証法讀本』を送る。
  岡田正三は京都大学におさえられているにちがいない。
  『美徳のよろめき』をよむ。『挽歌』とは全然ちがう。この区別をせずに、不道徳という点で、いっしょくたに批評するのは、恐るべき無神経である。
  『『弁証法讀本』は十分利用せねばならない。たしかにそれだけの価値はある。西牟田君の批評はいい。よく讀んでいる。
  発信 三上陸 西牟田久雄
  受信 三上陸 西牟田久雄 林省吾

○十二月十七日(火)  曇小雨 寒
  午後、みかげ。小川君に会う。新島さん、コンスイ状態におち入る。
  延世、風邪らし。
  フタニ歯科へよる。
  古林氏へ『弁証法讀本』を送る。
  『挽歌』『美徳のよろめき』『楢山節考』を書く。四枚。日文協ニュース。
  『弁証法讀本』の書評は出ない。これから出るかも知れないが。
  発信 保坂冨士夫

○十二月十八日(水)  曇、強風 寒
  午前、兒玉医院。みかげへよる。野中さんに会う。
  午後、新島さんの所へ行く。同じような狀態。永積、矢川、篠田氏等と会う。
  フタニ歯科。
  延世、風邪で休み。
  『美徳のよろめき』讀了。『挽歌』よりつまらない。
  ようやく冬の気圧配置になった。風が寒い。年の暮の気分がする。
  Going my way! 哲学でユニークな境地をひらく。『讀本』の書評の出るのは一月というものだろう。
  受信 淸水幾太郎 日文協 広津和郞

○十二月十九日(木)  曇 寒
  午後、富士銀行灘支店へ。御影分校へ。野上氏、午後一時四十五分死去。年始狀印刷を杉島君にたのみ、伊丹へ行く。新島さんにお別れする。静かな顔であった。小川、甘粕、小島、西村、阿部、矢川、篠田氏等。
  フタニ歯科。右、下、入れ歯。
  主事も部長もレイタンだ。ヒューマニズムがない。
  受信 榊原美文

○十二月二十日(金)  晴 暖
  午後、みかげ。山口さん等へ新島さんのことを電話連絡。元町へ行く。フタニ歯科へ。右、上、の型をとる。
  『弁証法讀本』はやがて手固く売れるにちがいない。まだ、ほとんど広告も出していないから、人びとは知らない。
  受信 小田切秀雄 三上陸 秋田和美  

○十二月二十一日(土)  晴 暖
  午後一時半、野上家へ。一時半から葬儀。三時終了。古林、今井、野中等。
  フタニ歯科へよる。
  山口さんから薬着。
  『社会科』一月号着。
  保坂氏から葉書。『讀本』、取次店の評判よろしく、大半配本ずみ。印税は三分の一ほど年内に送る。
  『弁証法讀本』は売れるにちがいない。自信はある。こんな面白い、しかも内容のある本はめったにあるものではない。配本してから十日ほどしか立たないのに、もう反響が出ている。
  『のれん』をよむ。余り面白くなさそうだ。
  発信 三上陸 世界編集部 向陵駒場同窓会
  受信 山口栄子 保坂冨士夫 伊藤一美 中村寅一

○十二月二十二日(日)  晴 寒
  午前、兒玉医院。
  午後、御影分校。哲学研究会。約十人。のち、天治で忘年会。
  一美から味噌、松男から餅、金吾からリンゴ着。
  日文協ニュースの原稿書き直し。
  『朝日』に『弁証法讀本』の広告が出ている。小さいが。
  発信 秋田和美
  受信 伊藤昭

○十二月二十三日(月)  晴 寒
  午後、みかげ。社研の打合せ。男の子は気がきかない。
  フタニ歯科。右、上、へ入れ歯をする。
  発信 渡辺史子 保坂冨士夫 松川事件

○十二月二十四日(火)  晴 寒
  午後、みかげ。猪野さん、來ている。
  そごうへ。年始狀の印刷、一字誤植。精神が精心となっている。刷り直しか値引きかにする。古川君に会う。元町を歩く。クリスマス。イーヴ。
  フタニ歯科。右、上下の入れ歯、終り。明日から左にかかる。
  日文協ニュースの原稿、陽子の小説、三浦さんから猪井さんへ。
  『学生百科事典』は大人にも便利だ。
  『弁証法讀本』は大阪から出たというハンディキャップがある。誰か発言権のある人がとり上げてくれればいいのだが。そうすれば、連鎖反応をおこす。内容はたしかに充実している。
  ソ連のロケット、すでに月世界に到着か。
  発信 山本晴義 樋口金吾 志水靖博 小松松男 伊藤一美
  受信 樋口金吾 志水靖博

○十二月二十五日(水)  晴 寒
  午前、兒玉医院。そごうへ行く。年始狀をうけとる。一字のミス・プリントで二五〇円をまける。
  三の宮から新島さんの所へ。小川、甘粕、阿部、小島、猪野、篠田等。そのごの相談。
  フタニ歯科。左端上は入れ歯のできないことを発見。
  ハタに「レッド・パージ反対闘爭について」という書記局の発表が出ている。今頃いい出したのはどういう訳だろうか。本気でやる気だろうか。
  年始狀を書く。
  とにかく、神戸大学のやったことはひどいものだ。天人とも許さずという所だ。大学がこんないいやらしい所だろうか。
  受信 百枝

○十二月二十六日(木)  雨 暖
  午後、大阪。創元社へ。社長、保坂さんに会う。原稿料をうけとる。シルバーで秋田さん、山口さんに会う。民科の件について相談する。
  『社会タイムス』『弁証法讀本』の批評が出ている。
  年始狀を書く。
  発信 理論社 亀井蔀
  受信 醇郎

○十二月二十七日(金)  晴 暖
  午後、みかげ。三浦さんが掃除をしている。
  三の宮へ。ユーハイムで菓子を買う。流泉書房へよる。
  フタニ歯科。
  船山氏から抜刷來る。
  『研究』第十五号を貰う。
  來年は国内政治でも大きな変動がありそうな気がする。自民党もいよいよ末期的症狀を呈してきた。社会党内閣の出來る可能性もないことはない。
  仙台からカキがくる。
  発信 原書房 小川政恭
  受信 成田日出雄

○十二月二十八日(土)  小雨 暖
  午後、入浴。年始狀を書く。
  夕方、年始狀を出しに御影まで行く。フタニ歯科。今日で終り。三週間かかった。
  『朝日』に『人民』(一月号)の広告が出ている。
  年始狀を書く。投函。これで三〇〇枚終り。
  今年は前半は可、後半は不可であった。それでも去年よりはプラスがあった。來年はどうだろうか。もう、來年位で夜があけてほしいものだ。そうそうは續かない。神戸大学もひどいものだ。いやしくも大学が、こんなに卑劣なものとは思わなかった。
  『弁証法讀本』は正月の良い讀物になるだろう。これが一つのきっかけになればいいが。
  発信 渡辺史子 政界往來 中村吉治
  受信 渡辺史子 政界往來

○十二月二十九日(日)  晴 寒
  午前、兒玉医院。これで今年は終り。
  午後、阪急会館へ行く。「リラの門」ルネ・クレールらしい作品。「わが愛は終りなし」、つまらない。
  夜、門田陽一來る。
  神吉晴夫へ『弁証法讀本』を送る。
  『人民』一月号店頭に出ている。
  ハタへ時々原稿を書くことにする。
  発信 船山信一 三浦すみ子
  受信 野島義一 松川事件

○十二月三十日(月)  晴 寒
  午後、散髪。
  近所の人たちへ、病気中のお見舞いのお返しをする。年始狀は三〇〇枚。これで、病気の件も一応くぎりがついた。まだ、問題は多分に残っているが。
  四疊半のフスマ二枚張りかえ。
  『人民』(一月号)着。ぼくの文章はピカ一。
  冬型の気圧配置。寒風吹く。
  松田道雄氏に『弁証法讀本』を送る。
  夜、室内八度。厳寒だ。
  カレンダーを來年のととりかえる。
  來年は少し文章で活躍したい。この芽はもう出てきた。
  受信 山本晴義 関西哲学会

○十二月三十一日(火)  晴 寒
  午後、部屋の片づけ。
  今朝、零下一・五度。今冬の最低。
  山口さんから薬着。
  野島さんから干柿着。
  四疊半のフスマ二枚張りかえ。
  数年間たまっていた手紙や新聞を整理する。庭で焼く。
  除夜の鐘を聞く。毎年、來年はいい年が來るだろうと期待するが、余りいいこともない。少しづつはよくなっているが。
  十一時、年こしそばをたべる。
  発信 陸井四郎(二) 渡辺史子 野島義一 
  受信 竹内好 山口栄子 小川政恭