○四月一日(火) 曇 暖
午後、三の宮。富士銀行へ行く。みかげへ行く。楠さんからいろいろ事情を聞く。青木君に会う。五月から内地留学で東京へ行く。研究室から岡田さんの名札が消えているのはどういうわけだろうか。別に意味がないのだろうか。どこかへ行くのではなかろうか。
「星雲」に「心の虫」が出ている。
歯が又いたむ。
「人間の研究(三)」終り。三〇枚。発送。送料、速達で四一円。
受信 新讀書社
○四月二日(水) 雨 暖
午前、兒玉医院。みかげへよる。事務長等に会う。
午後、フタニ歯科医へ行く。歯を一本抜く。入浴。
学校が始まらないと子供たちがうるさくて困る。
「民科ニュース」の原稿を書く。湯川君へ送る。
平凡社の原稿「ボグダーノフ」を書く。送る。
ぼくの問題も、楠さんの口ぶりでみると、すっかりお膳立てが出來ているようだ。なるべく早く教授会に出してはっきりさせてほしいものだ。具体的にどうなるのかがまだ分らない。
『日本の方向』をよむ。
発信 米沢役場
受信 山本晴義 湯川和夫
○四月三日(木) 雨 冷
午後、三の宮。新聞会館大劇場で「戦場にかける橋」と「カビリアの夜」を見る。前者は面白くない。後者はいいが、「道」におとる。
『日本の方向』をよむ。案外面白い。
阪急電車で横山さんに会う。
発信 法律文化社
○四月四日(金) 晴 暖
午後、みかげ。
夜、杉島夫妻來る。
大手薬局へカサをかえす。
フタニ歯科。今日で終り。
「星雲」の原稿を書く。送る。
発信 三上陸 国際
受信 三上陸 醇郎
○四月五日(土) 晴 暖
午後、ひるね。つかれているのかも知れない。
靑木へ行く途中、浦谷さんの所へよる。
『日本の方向』をよむ。
受信 西牟田久雄 鈴木亨 米沢支所 国際新聞 醇郎
○四月六日(日) 雨 暖
午前、兒玉医院。
午後、入浴。ひるね。
『日本の方向』をよむ。
受信 山本晴義
○四月七日(月) 晴 暖
午後、みかげ。猪井さんから、メーデー前夜祭の映畫に出てくれという話。承諾する。永積さんに会う。
みかげから大阪へ。ブールボンで鈴木君、山本君に会う。民科の件等。
井上さんの件。
『日本の方向』讀了。批評を書く。三枚。送る。
発信 湯川和夫 横山智子 森川澄枝
受信 湯川和夫 平凡社
○四月八日(火) 晴 暖
ひる頃、井上さん來る。
午後、祐二郞といっしょに本山中学へ行く。入学式。みかげへ行く。今井さんに会う。
『人民』四月号着。
紘一郎の入学式、延世が行く。
南博『社会心理学入門』の書評を書く。『国際』へ送る。
岡田正三というのは悪い奴だ。ここにも悪魔がいる。岡田を教授にしたのは文学部の大失敗。教授の資格なし。
今井さんの今日の話、もっと早く言ってくれればよかったのに。
○四月九日(水) 曇 冷
午前、兒玉医院。みかげへよる。楠さんに会う。映畫の件。
午後、入浴。
『西洋哲学入門』五冊着。
『沖縄島』をよむ。面白い。
延世の件。事務局長の手がのびているかも知れない。こんなに腐った人間だとは思わなかった。
陽子の戸籍抄本着。
神大の件、ぼくの予想よりずっと悪い。しかし、プラスだからとっておくこと。仕方がない。それを足場にして生かすこと。
五月はじめに奈良へ行く計畫。
発信 横山智子
○四月十日(木) 曇 寒
午後、みかげ。流泉へ行く。
『沖縄島』をよむ。
神戸大学のやることは全く奇怪だ。何としみったれているのだろう。要するに学長が悪い。
少し鼻汁が出る。大したことはなさそうだ。
ぼくが神戸にいるので、神大(とくに学長)はなやまされているにちがいない。いつまでほっておくことはできまい。こちらはいつまでも頑張る。東京へでも行ったら、学長は祝杯をあげるだろう。
神戸大学との間には絶えず冷戦が行われている。ガンは岡田正三。
研究室の助手でもいい。一年間にすっかり根をおろしてしまおう。今でも相当根をおろしているが。
発信 米沢支所 亀井蔀 松川事件 醇郎
受信 醇郎
○四月十一日(金) 曇 冷
午後、みかげ。入学式の日。結婚式の録音をきく。
「裕次郎ブーム」を書く。送る。
反動が急にきつくなってきたようだ。気狂いじみてきた。かれらのあせり。今度の選擧は大事だ。
明日の用意。
受信 森川澄枝
○四月十二日(土) ??
午後、大阪。山内に会う。秋田さんの家へ。研究会第一回。
延世、井上さんからいろいろのことをきく。神戸大学というのも全くひどいものだ。事務局長はガン。彼を追い出せなかったのが古林の弱さ。
『現代思潮』(四号)一〇〇部着。
東京の父母來る。
『沖縄島』讀了。
神戸大学に復讐することを一生の仕事にする。
反動がきつくなってきた。しかし、かれらのあせりである。
細谷氏、喀血したよし。
受信 横山智子 岩波書店
○四月十三日(日) 晴 暖
午前、兒玉医院。咽喉が悪い。胸は異狀なし。
午後、日文協。『沖縄島』について。のち、皆で田中屋へ。
夜、雜用。
神戸大学も全くひどいものだ。井上さんも余りに通俗的だ。
発信 表現社 岩波書店 瀧沢克己 西牟田久雄
受信 瀧沢克己 柴田仁
○四月十四日(月) 曇 寒
午後、元町。第一銀行へ。みかげへ。杉島君きたる。
井上、岡田、服部、古林には共通点がある。何としても古い。新島さんはちがっていた。
『新讀書』の原稿を書く。
『社会主義リアリズム』をよむ。
井上さんも余りに通俗的だ。もう少し筋を通さなければいけない。岡田には、フロイド流に言えば、シットがある。岡田ファンはいないから。
○四月十五日(火) 晴 冷
セキが出る。一日中休養。
『新讀書』の原稿を書く。送る。
神戸大学には、実際いやらしい人間がいる。ダキすべきだ。大体はいいのだが、それもファイトがない。だから、反動におされっぱなし。延世の件も、誰かの妨害にちがいない。
発信 醇郎
受信 秋田和美
○四月十六日(水) 晴 暖
まだセキが出る。一日休養。
朝、東京の父母去る。
山下さんから『サンデー毎日』を送ってくれる。
兒玉医院、今日は行かず。吹田行も土曜にする。
井上さん、明日山手短大へ行く。
『社会主義リアリズム』をよむ。
発信 秋田和美
○四月十七日(木) 晴後雨 暖
一日休養。セキはだいぶよくなる。
井上さん、山手短大の報告。
神戸大学を悩ませ續けてきたことは一つの成果だ。
『社会主義リアリズム』讀了。書評を書いて「国際」へ送る。
発信 横山智子 国際新聞
受信 国際新聞
○四月十八日(金) 雨後晴 冷
午後、灘へ。みかげへ行く。楠さん等に会う。楠さんも一言あって然るべき所だ。
午後、入浴。
「微笑ノイローゼ」を書く。「国際」へ送る。
今年の中に世界的に大きな変化が起りそうだ。
文学部教授会で正論をはくもの、大義名分を明かにするものがいないのか。余りにあわれだ。進歩的の看板が泣く。阿部さんあたりが当然やるべきことだ。全く腰抜けがそろっている。しみったれたことばかつっきまわしている。
受信 西牟田久雄
○四月十九日(土) 晴 冷
午後、大阪。秋田さん休み。シルヴァーで山口さん、飯田さんに会う。六時半、吹田へ。スワの件など相談。
法律文化社から『哲学小事典』の検印紙七〇〇着。非常に好評のよし。
日食を見る。
受信 法律文化社
○四月二十日(日) 晴 暖
阪神半日スト。
午後、大阪。浪速莊。森さんの報告。中村氏、神谷君等。十人。いつもの半分。
検印紙を法律文化社へ送る。
「民科ニュース」の原稿を書く。
発信 西牟田久雄 山本晴義 法律文化社 山下正子
○四月二十一日(月) 雨 暖
午後、みかげ。
「民科ニュース」の原稿を書く。湯川君へ送る。
発信 平凡社 湯川和夫
受信 平凡社
○四月二十二日(火) 晴後雨 暑
午後、三の宮。流泉。みかげへ。
六月の暖さ。
「微笑ノイローゼ」が出ている。
『現代思潮』五ブ、流泉書房へおく。
廊下で今井さんに会う。
『人間の條件』を又よみ出す。余り面白くない。
理想社へ『現代思潮』を送る。
発信 伊藤一美 小松松男 理想社
○四月二十三日(水) 雨 暖
午前、兒玉医院。診察をうける。大したことなし。
午後、国際日活で「陽のあたる坂道」を見る。
亀井君から印税がくる。
一度ウソを言うと、それをおおいかくすために何度でもウソを言わなければならなくなる。神戸大学。
発信 亀井蔀 瀧沢克己 山本晴義 横山智子
○四月二十四日(木) 晴 暑
午後、みかげ。小川君に会う。「雨」の試写を見る。
『国際』に『社会主義リアリズム』の書評が出ている。しかし、終りの方が切ってある。
陽子が陽気になったと思ったら、延世がノイローゼ。
『人間の條件』をよむ。どうも面白くない。
発信 鈴木亨 秋田和美
受信 林省吾
○四月二十五日(金) 雨 暖
午後、みかげ。西村氏、湯?氏に会う。
奥村さんといっしょに京屋へ行く。日文協書記局会議。
『民科ニュース』(十八号)着。
『日本文学史』第一回出來。
「東の風西の風」を書く。送る。
発信 淸水正徳
受信 小林延子 片山壽昭
○四月二十六日(土) 晴 暖
午後、メーデー前夜祭。御影中学講堂において。延世、陽子をつれて行く。陽子、先にかえる。映畫「雨」など。
夜、入浴。
受信 平凡社 湯川和夫 佐々木隆彦
○四月二十七日(日) 雨 冷
午前、兒玉医院。東京へ行ってもいいよし。
午後、哲学研究会。コーンフォースと「眼には眼を」。
煉炭。今日で終り。
『人間の條件』第一部讀了。
受信 山本晴義
○四月二十八日(月) 晴 冷
午後、みかげ。横山さん來る。民科の件。
『人間の條件』をよむ。
神戸大学は複雜怪奇なり。しかし、そう思いつめることもないだろう。本気で心配していてくれる人もある。
関西の哲学者の結集ができつつある。
発信 瀧沢克己 鈴木亨 横山智子 政界往來
受信 瀧沢克己 政界往來
○四月二十九日(火) 曇 冷
午後、みかげ。理論部会。小川、小林、小松、岸。『マルクス・エンゲルス文学論』終り。つぎは野間宏『文学の方法と典型』。
井上さんから狀勢をきく。
秋田さんから三枚續きの葉書がくる。
『哲学小事典』(第二版)一冊着。
発信 秋田和美 山本晴義 淸水正徳 法律文化社
受信 秋田和美
○四月三十日(水) 曇後雨 暖
午前、兒玉医院。みかげへよる。
鈴木亨著『実存と労働』着。
『人間の條件』はつまらないからやめる。『迷路』をよみ始める。
発信 鈴木亨
受信 杉島資弘