十九、廿日の日付ニて差上候 封書
御覧下され候や お知らせ下され度
廿一日出御はがき只今有りがたく拝見いたし候
白絹 工合よく参り候たらしく誠に好都合ニ存じ候 之れハも早やだめと存じ候ひしに、
他の着物ハ皆よく出来候事と存じ候
私の病気十九日右鼻のガーゼをぬき候処其後工合よろしかりしまゝ少々日数ハ早けれども昨二十二日夜左の手術いたし候
右と同じく随分沢山のもの出で候ことに昨夜ハ今迠中に無出血にて困り入り候今日も中々に止まず候 昨年も幾度もやり風を引き等して身体の弱り居る處へ又々両度とも多くの血を出し候事とて毎日非常に滋養分を取り居り候へども漸々身体衰弱いたし困り居り候 今度等ハこんなに切らずとも宜しきなれども匂ひのわかる様にいたすため深く深く切り込み候様ニ候 今にもわかるかとそれのみ楽しみにいたし居り候
昨年に比してハ夜具貸代等非常にたかく相成りたると食物の昨年より悪るくなりし故餘分卵牛乳等用ひ候といろいろにて当地へ参りてより一度も車にも電車ニものらず郵便にまで出来る丈倹約いたし居ル候へども中々に金かゝり困り有候 何卒本月未に間に逢ひ候様に御送金ヲ願上候 十九日付手紙に申上候位にてハ終りまで如何と存じられ候
去る廿日三平、秀三、氏来りくれ候 田村徳衛氏葬式ハ十日とか三平ハそれに帰るよし
私も成るべく其頃までに全快帰宅いたし度ものと存じ候
武平様の御話に事によれば七八分迠ハ四月ハ帰宅出来ず三月末一週間許り帰国出来る都合ニならんかとの事に候まゝ萬時其御都合に罷上候
いろいろニて御母上様を患わし恐れ入り候へでも染上り在る夜具二つ別々のものニテハよろしからぬ故青木綿か何かの裏ニては仕立下され度願上候一つは丈長さ並物より五寸許ハ長くして少しうすく、私の一昨年あたりこしらへ候ものよりもうすく衿ハビロードにて、
当地で買へば一組五六円位ニて上等のもの之有り候へども通常着等ハ着めに悪しからんと存じ候まゝ
もしや三月といたせば非常に多忙ニて困り入り候まゝ尚ゝ一日も早く全快帰国致し度心のみせき候へども今の處でハ如何ともいたし方なく四月よりハ之れでも健康の身となり得るやと心配いたし居るほどに候
いつか御■の時■■参りていろいろとよろしく御取はからひのほど願上候
正男ハ本月末ニハ帰宅のよしニ候
夜具ハ借代許りニて始めよりいたせば上等一組出来るほどかゝり候て誠につまらなきものニ候
御地ハ只今は随分御寒き御事と存じ候当地も寒明けてよりめっきり御寒く相成り候 手術中ハ一寸の寒さにも直に障り只今風の気味も少々之有り誠に工合あしく候まづハ用事のみ心地あしきまゝ大礼乱筆いたし候
末ながら時節柄くれくれも御注意のほどいのり上候
かしこ
廿三日
いさの
御両親様
御前ニ