三月一日 朝より大雨雨戸一度開けたのを閉める程なり
上の二人に手紙を書き出す 午後上つ張り一枚夜迄
かヽりて仕上げる
欄外メモ 来信 春日みき氏 のぶよ氏
三月二日 午後から晴天暖かなり
午前 ほどきもの 午後洗濯をなし
明後四日炭やきをなすにつき㐂七氏を頼みに
行く魚を買ひ来り夕飯後今朝雄氏方へ行き
寺のシロを頼む 娘の事を聞く 十一時帰る
三月三日 天気よし 朝ハソーキンの凍る位の寒さ
午前陽子のおひなさまを出し虫干しをする
午後 洗濯 張りもの 夕方ムロに水がた
まり居り驚き中の物全部出す
明日㐂七氏炭やきに来るので煮物をなす
夕飯後寺へ映画見に行く帰り十時
三月四日 晴天 五時起床 朝一つ煮物をなす
㐂七氏六時に来り七時前に出かける
午前縫物午後芋人参牛房長芋等ムロから出し
たのを畑に埋めるそこへ政一郎氏夫人おせつくの餅
を持つて来らるし 上つてお茶を飲んで帰る
それからオニバへ行き魚等買ひ来る ウドン
を作るつもりなりしも餅を上げる
三月五日 天気よく寒気強し 㐂七氏炭やきに来る
モヽ引きを直し肌じゆはんにす 午後煮物うどん作り
欄外メモ 㐂七氏 炭やき二日
三月六日 一日中雨降り二日の炭やきにハ実に
晴天にて恵まれた事を有り難く思ふ
足袋カバーを作り夕方から亀雄氏方へ呼
はれて行く非常に御馳走有り十時帰る
三月七日 朝下のいつ氏子供をつれて寄つてお茶を
飲み帰る 十一時頃より暖かになりし故矢ヶ崎へ
メカネ時計直し薬買ひに行く種卵も二つ買ふ
五日の夜よりノド痛みセキ出て風邪の様なりしも六日ハ
雨にて薬買ひにも行かれず 今夜いろく飲んて休み
風を直さなくてハいけない 熱ハ無くセキ多し
寒気有り やつぱり熱か出るのかも分らない
三月八日 天気よく暖かなり 小物縫ひじゆばん おこし等 洗濯 ナベ洗ひ
風少し軽快す 此夜痛さはげしく遂にこすつて
しまひ痛く苦しむ
欄外メモ 来信 受験の両角氏母 ヒヨコ一つ卵産む 東京の林ふさ子氏より皮フ炎
三月九日 うすくもり暖かなり 前晩こすつてしまひ
皮フ炎痛くて立居も苦しい程なり長じゆばんにかヽる
午前肌しゆばんを仕上げる夕飯後迄やつて表裏 スリ合せ
ゑりをつけて仕舞ふ
皮フ炎餘り苦しき故又リハノール湿布をやつて見る
咳大に軽快す少し熱気の様な気分なり
三月十日 天気 暖かなり
朝リハノールを取り チンク油 テラポールを塗
りしに一日中痛み苦しむ 餘り痛く苦し
き故少し早いとハ思ひしも風呂をわかし
入る出てリハノールの湿布をなす
長しゆはん綿つくり とぢもなし ゑりをくけ
る丈にす
三月十一日 とんよりとした暖かの日なり
午前中に長しゆばんを仕上げ午後オニバの糀や
へ糀取りに行く又御馳走になつてトブロクを
出してくれ顔がほてるほどになり夕方帰る
政一郎氏方赤ちやんのタン生日の祝ひとてマンナを持
て来てくれる 此晩少し発熱セキも多し前晩
風呂に入りしか悪るかりしならん 風呂から出てリバ
ノールの湿布をなし朝頃痛み有り 朝マスイの薬
を塗り上に志水さんの黒い薬を塗り前後共綿
を当てヽ置き一日大に具合よし
三月十二日 うすくもり あれ天気
前晩ハ志水さんの薬とマスイ薬を用ふ餘り
痛からず日中も同じ手当
ゑり色物 甘酒造り 午後ほどきもの
朝三七、七 正午三七、二 午後三時三七、二
夕飯後三七、六 朝ヒルアスピリン一つヅヽ夜も
三月十三日 朝氷る程度 天気よし
熱 朝三六 ヒル三六、一 三時三七、四
夕飯後三七、一 ねて居ればよいですが気分はそう
悪るくも無くおこたでほろとじをなす
薬を入れた風呂の水を見しに真黒にてよくも
こんな処へ入りしよと驚けり湯に入れる薬ハ
効有りし様にも思ハず
前晩皮フ炎リハノール湿布朝からマスイの
薬と志水さんの黒い薬を上に塗り置く
割合凌ぎよし
欄外メモ 綾子より手紙 引つ越し先より
三月十四日 天気よし 暖かなり
熱 朝 三六、四 正午三七、八 夕飯後三七、三
ヒル前障子の切張り 午後床をとりて臥す胸に
温湿布をなす 晩もなす
欄外注記 ハカキ 摂郎より東京ニて
三月十五日 非常に天気よく暖かなり
風思ハしからず暖かなりし故竹内医師に行く竹内
医師はかりしに三七、五有り よく診察しくれる薬四日
分貰ひ来る午後服薬せし許なるも寒気無く
大に快し早く医師にかヽるべきなり素人療法ハ
効なし 夕飯後熱三七、
欄外メモ 一つのヒヨコ始めて産卵ス 皮ノ柔カナモノ 外二羽産む
三月十六日 天気よし暖かなり
熱 朝 三六一 ヒル三七、 夕方三七、
竹内さんの薬を飲み始めてから寒気が無くなり気
持よし
肌じゆはんをついでやつと形にする
亡き母がつきしじゆはんに泣きたりし
誰か泣くらん我もつぎ居り
欄外メモ 我も又つぎ誰か泣くらん
三月十七日 うすくもり 天気変りそうなり
念佛講を休むについて当番故煮メ二重作
り㐂一氏夫人に頼み持つて行つて貰ふ老人も
都合悪るく此日休む都合のよし それでも
私の為めに持つて行つて当番の仕事をやつてくれ
ると云ふ親切実に有り難し
午前中に肌じゆはんを仕上げる午後床に入る
熱 朝三六、三 ヒル三六、九 午後四時三六、八
午後七時前三七、二
三月十八日 晴天 暖かなり
枕かけ ゑり等洗ふ 弱つた処をつぐ敷布も
熱 朝三六 ヒル三六七 午後三七、
少し床に入る
欄外メモ 雪とけの庭に若草生ひしげり 放されし雞うれしけについばむ
三月十九日 晴天 風強く寒し
熱 朝三六、 夕飯後三六、七
家の用事を形つけて竹内医師へ行く 帰りに
伊藤千房氏へ寄り嫁さんの事を話す其
帰途新やへ寄りオ茶を飲み帰り夕飯を
炊き休む
三月二十日 天気よけれども寒し
熱 朝三六二 ヒル三六九 夕三六九 夕飯後三六、八
昨日寒いのに医者へ行き帰りに人を訪問等せし故か今日
はセキ多く少し寒気か有る様なり
朝から床に入りて休む
二十一日 天気よく前日より暖かなり夕方曇る
熱 朝三六、九 夕飯後三六、八
朝より醇郎と和郎に手紙ハガキ書く
午後一時頃出て念佛講に行く沢山の人出なり
二十二日 熱三六 夕方三六四
朝飯前に㐂七氏妻ハカギを書いてほしいと云つて
来る 此日念佛講の当番なり故大忙しにて
タンゴ 煮物等作り一時頃出かける
二十三日 天気よし 前晩雪降り非常に寒し
熱ヒル過ぎ 三六、五 夕方 時 三六、五
朝より寺へ行く 前に頼まれし耕作の人を頼
む事について 午後念佛講に行く
欄外メモ ます氏より二十四日一番で上京のハガキ来る
二十四日 天気よし朝ハ凍る程なりしも日中ハ暖かの様なり
熱 朝三五、九 ヒル過ぎ一時三六、三
朝彼岸明けの墓参りに行く午後寺へ行く
いもじやよりも七人来り村世話人迄併せて十六人盛會なりし
二十五日 熱 朝三六、 午後十時三六、七 午後六時三六、五
暖かなり自分の綿入のつき当てをなす 和郎より手紙来
直ちに山寺へはかきを出す平林氏にも夏目さん方として
出す 東京林さんより日本評論⒓⒈二冊来る
三月二十六日 夜より大雨雪まじり 日中ハ降つたり止
んだり 此日一日綿入のつき当てをなす夜迄かけて
つぎ丈終る 午後九時五十七分で名古やら電車と云ふ
田村㐂一氏方娘と男の子二人今晩大阪へ出発すとて
あき氏寄り醇郎の住所を書いて渡す
三月二十七日 天気よく暖かなり 雞 三つ産む 三つ二
三日つヽけてハ後二つ よく産み食べきれず
おヒナ様のほこり拂ひ家の中の掃除ゾーキン
掛け等す 醇郎摂郎へ手紙書く
欄外メモ 来信 醇郎 摂郎
三月二十八日 一日雨 午前 ソーキンサシ等す 午後寺へ敬老
會に呼ばれて行く 中々いろいろよくやつたり
帰りにみな氏寄つて家庭の事等聞く
三月二十九日 天気 暖かなり
洗物 いろいろ 摂郎醇郎へ手紙 松雄氏に
頼み出す さつま芋等出し洗ひす
欄外メモ 発信 林さんへ 来信 夏目さん 平林さん 中谷さん
三月三十日 種籾交換に朝行きしか午後なりとの
事に十時頃矢ヶ崎へ買物に行く 帰りて
キントン キンピラ ワカサギ イカ等を作る
三月三十一日 天気よく暖かなり
朝よりこぶ巻 煮豆等をなす 午後三時頃より
亀雄氏夫妻来る 土産ニケツリブシ二包 茶小半斤 ゆつくり御馳走し九時頃帰る
茶 菓子 煮豆 コブ巻 キントン
酒 ワカサギ イカ ツクダニ ナマス 茶ワンムシ
白イ飯 味噌汁 ワカサギ イカ ツクダニ キントン コブマキ パンを土産ニヤル