十一月一日 晴天 今日来る様にいもじやの砂糖キビ絞りの
家より伝言有り 行きしに休電日気づかさりしとて
出来ず帰りて小豆こなしをなし明日の小豆を根を
切りネコに入れる夕方山の上の畑へ豆取りに行く
夕飯後柿五十個皮をむきつるす
十一月二日 前夜十二時目をさますと雨たれの音かする
のに驚き起き出し庭の二枚のネコに小豆一杯入れ
しものをのきばへ入れる*事にハあんなに星か多
かつたのに早く天気が変り驚く小止なく大雨
朝柿の形づけ目方はかり へたの有無を分ける
へたの有るの十メ匁以上 無いのが七メ匁位つるし
ても有るし人にも上げたから結局二十メ位有りし様なり
いろいろ布を探かし ほどきものもなす 夕方一美
氏方なべ返しに行きカホチヤを上ける 帰りに
麦粉を背負ひ来る目方を見る正味二メ
程有り フスマ八百五十匁位有り上粉カン一杯有り
一升麦に対し粉二百八十匁位 フスマ百匁以上
十一月三日 夜中に天気よくなり居る いもしやへ砂糖キビ
絞りに行き手伝つて絞り いもしやの家に寄りおひる
の御馳走になり モトムさんのおよめさんかかついで
来てくれる 御茶を上げて急き帰つて貰ふ
それより絞り水を煮つめる 庭のさヽげを少し
取る夜迄煮つめる いもしやの内へ柿21上げる
十一月四日 晴天 砂糖キビの絞り汁を煮つめる 去年のの
も火を入れる 去年のの五合位今年一升一本四合一本
煮つめながら小豆こなしをなす
十一月五日 前夜少し雨降り ねこ少しぬれて居る
朝起きて急ぎ入れる 油ビン大一 小三本
ソーダシヤボン等にて湯にて洗ふ 十一時頃迄かヽる
其頃天気よくなり急ぎ 小豆こなしをなす
干して置いて山の上の下 と御社宮寺の
小豆を取り来り 小豆こなしをなす それから
風呂をわかして入る
十一月六日 晴天 朝より小豆の根を切り青イノを取り
取つて有るの全部こなす こほれた小豆をひろい
木をたばね形つける 夜ハ白さヽげをむく
醤油を買ひに行き玄米一斗精米に持つて行く
欄外メモ 来信 摂郎 延世
十一月七日 晴れたり曇つたり 青大豆をひろげ干す
一度たヽき居る処へ雨降り出し止んたり降つたり
ねこをひろけたり形つけたり遂に大降りになる
庭のさヽげをつるからもぎ倉の前の落葉をはき
等す 夜少し小豆をむき等す
夕飯前何とも無く沢山に夕飯を頂き後少しにて
急に腹痛甚しく全部吐 夜通し胃痛に苦し
む あれこれさかし腹痛の薬を飲まんとせしも無し苦し
十一月九日 腹痛吐気有り何も食せず 安静にして居る
〃十日 また腹痛有り衰弱の気味故思ひ切り矢ヶ崎
の養民氏に行き薬を貰ひ来る効なし
〃十一日 新やより電話をかけ貰ひ竹内医師の往診
を受ける持参せられし薬にて始めて腹痛大に
楽になり眠れる 新やの叔母食事一切やつて
くれる医者のお茶も持つて来てくれる
十二日 与平氏薬取りに行つてくれる熱最高三七、八
オモユと汁のみ胃の痛み有り苦し
十三日 熱 最高三八、四 松雄氏便を持つて行つて
くれる 痛みの止まるトン服薬を貰つて来てくれる
欄外メモ 醇郎に速達を出す 醇郎より電報有り 醇郎摂郎美㐂治氏 ハカキを出す
一四〃 三八、一 竹内氏往診を願ふ
十五〃 三八、 壯平氏死去 見舞百円 新やの
おばに頼みやる 痛み苦し
十六日 正勝氏嫁に頼み薬取りに行つて貰ふ
此薬より熱も下り痛みも去り大軽快す
十七日 三六、醇郎より電報 熱有らばペニシリンを
打てと当方よりも電報を出す
速達も来る薬の事病気の注意等細々有り
宮原叔母八十六才にて死去の由小平あい氏来る葬式
にハ行かれぬと云つてやる
十八日 三六、 与平氏薬取りに行つてくれる ハカキ切手
も買つて貰ふ 少し柿の皮をむきつるす
十九日 醇郎よりと摂郎より電報来る 速達も来る
二十日 朝摂郎来る 新やへ足袋菓子折り内へも外に
カンヅメ(パス 本 血止メ 虫菓子ノ入りし小包醇郎より
来る)摂郎もパス持参す ヒルよりパス飲用す
二十一日 此日午後摂郎茅野へ行く用有り其時ワカサギ
其他明日の稲コキに必要の物を買つ来て貰ふ
豆 小豆等煮て明日の用意をなす
二十二日 晴天 サカン氏㐂七氏新やから二人手伝ひ
稲コキをなす よく乾燥して居り工合よし
午前にハ柿を出す ヒルハコモク飯 ツクダニ豆
等々 夜ハ酒 サンマ イカ 等々
欄外メモ ○㐂 午後アンマキ等作る
二十三日 少しうすくもり サカン氏㐂七氏二人来り午前中
にこき上げ 午後後形づけ ワラの仕末迄して三時
頃より雨なり それよりお茶を出しゆつくり話して
夕飯を出し五時頃帰る 之れて大形づき ほつとしたり
十二時四十分頃の汽車で摂郎帰る 東京まハり
欄外メモ ○㐂 此夜柿を六十許むく
二十四日 今日ハ雨ゆつくり休む 午前中休み午後床を
日に干す 漬物樽を出し洗ふ様にする
家の中エン先庭等一寸掃除す部屋も
掃除す夕方柿の皮をむく 助蔵氏方よめさん此日来りアイサツに来る手紙一*持ちて
欄外メモ 来信 証子 昭子 ○㐂
二十五日 天気よし 㐂七氏来り 豆 三色こなし アヲリ終り
夕方ハゼ棒を少しよせる 夜中より雨降り 少し柿の皮をむく
二十六日 小雨 降つたり止んだり雪あられ少し舞ふ
亀蔵氏婆さん助蔵氏方の婚礼法事の 土産を持つて来
てくれる 朝新やの叔母さん豆の木を取りに来り 中に入りて
オ祝のまんじう等にてお茶を上げる それから柿
をつるし さヽげをむき終り午後神戸へ手紙を書く
二十七日 くもり寒くなる 醇郎に手紙書く昭子へも証子へも
午後手紙を出し豊平農業會にてウドンを替えて貰
ひ糀やへ行きワラを取つて貰ふ様に頼むゆつくり
甘酒等の御馳走になり糀を貰つて帰る
ホッケ サンマを買ひ夕飯後政一郎氏方へ行く
欄外メモ 発信 摂郎 醇郎 百枝
二十八日 あれ天気 寒気強し 㐂七氏来り ホツサラを
たヽきこなし田のハゼ棒全部運びつみ込み 大根 ダリヤ
を掘り庭を形づけきれいにする 私ハ寒さに一度も
出られす こだつに米を送る袋等を作る 新やより
豆*返しに来る床に入りてもぞくく 寒く咳出てヽ困る
欄外メモ ○㐂
二十九日 昨日の様に あれ風強い事なくおたやかには
なつたが温度相当低い様なり家の中のものも凍り
居る寒中の如し 咳出る故にブロチンコデインを
飲んで見る 白菜を洗ひ二つの樽とかめを洗ふ
朝鮮漬にする白菜をかめに漬ける 外の白菜
を取る夜咳多く眠れず
欄外メモ 山羊乳四合
三十日 晴天寒気強し 竹内医師に行き診察し貰ひ
薬を貰ひ来る 中央病院に寄りレントケン写真を
取る 武藤歯科医に寄り下入歯を少しけずり
大に工合よくなる 其内に下の義歯を茲に預ようと思ふ
三時半頃帰宅 ヒル飯を食し 雞を飼ひ夕方の事
をなし居りしにくらくなる 雑誌等読み八時夕飯を食す