○二月一日(木)  晴 暖
初めて寝過す。六時十五分起床。
午前、雑用。
午後、富山へ行く。富山劇場で“宮本武蔵”(溝口健二)を見る。買物などして四時の電車でかへる。
六時―八時、座談会。弁証法の話。
八時―九時、夜勤。

○二月二日(金)  曇 寒
午前、雑用。エンタツ來る。
午後、塚本、笹津より來る。
夜、理工数名話に來る。
八時半―九時半、夜勤。
大畑氏未だ來らず。

○二月三日(土)  吹雪 寒
午前、雑用。
午後、同じく。
午後六時大畑氏着寮。
夜勤。八日連続は新記録。

○二月四日(日)  雪 寒
午前、出発用意など。
ひる、工場で挨拶。
午後二時二十分岩瀬発。三時十二分富山発。四時笹津着。歩いてマグネへ。深町さん、花岡さんも到着した所。教官室へ來る。夕食後寮へ行く。
八時半村岡さんと共にクラブへ行く。泊る。

○二月五日(月)  曇 寒
六時起床。七時すぎクラブを出る。笹津駅で乗車券を買う。計算に30分を要す。八時半笹津発。村岡氏と同行。美濃太田、多治見、塩尻で乗りかへる。車中寒し。汽車はこむ程に非ず。塩尻から夜行となる。

○二月六日(火)  晴 寒
午前五時新宿着。七時半上野発の小牛田行きに乗る。相当こむ。村岡氏は上野から常磐線で仙台へ。三時半福島着。三時半発の奥羽線は運休。六時福島発。おくれて十時山形着。十時半家へ着く。笹津から富山迄約37時間也。

○二月七日(水) 曇 暖
十時起床。雑用。
午後、学校へ行く。学校は開店休業の有様也。大畑さん、花岡さんの所へ寄る。
夜、久し振りに入浴。

○二月八日(木)  曇小雪 寒
気分晴れず一日中臥床。寒気がする。咳が出る。
発信 米沢村役場、林省吾。
受信 林省吾、遠藤博義。

○二月九日(金)  曇小雪 暖
今日も亦一日中臥床。食欲無し。要するに疲勞であらう。
午後五時半頃醇郎來る。一泊。

○二月十日(土)  雪 寒
昨夜少し発汗。朝少し気分よし。午後から又悪く、夕方八度七分。余の風邪家族全部に傳染。山下さんの來診を乞ふ。
醇郎十二時半の汽車で立つ。母も行く予定の所風邪のため中止。

○二月十一日(日)  紀元節 曇 寒
昨夜発汗数次、今日は気分よし。朝、七度一分、後六度七、八分。併し咳は未だ治らない。

○二月十二日(月) 晴 暖
昨夜も相当発汗。今日は平熱。かなり長く炬燵に起きてゐる。
一年生今日慰勞休み。明日から授業。
陽子快方に向ふ。
和郎から菓子、タバコ來る。
十三日宿直缼勤の届けを出す。
発信 大畑末吉、魚井梅次郎。

○二月十三日(火)  曇 寒
午前、雑用。顔を剃る。
午後、しばらく振りで学校へ行く。監督教官は歸って來て大部分病臥。田中さんは胃潰瘍で東京下谷病院に入院。三時から教官談話室で校長の話。留学生の件。四時半終了。
余の病気大体よろし。他の四人は今盛ん也。今の所余が一番よろし。咳も段々よろし。併し未だ出る。相当頑固な咳である。
今日の夕飯久し振りで割合甘し。

○二月十四日(水)  曇 寒
午前、雑用。
午後二時半-五時外出。済生館、山下医院へ行って薬取り。遠藤、深町さんへ寄る。街へ出ること初めて也。雪も相当多く、寒さもきびしい。
余の風邪は大体よろし。咳もだいぶよろし。煙草を少し吸ふ。
母、九度以上、具合悪し。子供二人、咳多し。延世、同じ様也。
発信 竹村美㐂治、和郎。
受信 蜷川一男。

○二月十五日(木)  晴 寒
午前、雑用。
午後、学校。村岡氏に会う。学校から山下さんと大映に寄り、板倉さんに会う。陽子の薬取。
母、昨夜困窮の状態なりし由。発汗。今日も熱高し。子供二人昨夜來咳甚し。今日陽子臥床。紘一郎は気分よいらし。延世、大した変化なし。余、咳が少し出る。
発信 百?。
受信 林政世、デュルクハイム。
下小林全焼。

○二月十六日(金)  晴 寒
発信 遠藤博義、赤沼貢、田中金一、蜷川一男。
朝、相当きびしい寒さ也。
午前、雑用。
午後、学校。魚井氏と田中勤勞課長と來る。三時、教授会。生徒の処分の件。五時すぎ終了。
夜、発熱七度三分。
山崎來訪。母と延世と衝突。
敵機動部隊本土に接近。山形にも空襲警報発令。
魚井氏、陽子の下駄を持って來てくれる。

○二月十七日(土)  曇 寒
午前、学校。
午後、家にゐて、ひるね、読書、子守など。
子供二人、漸次よろし。母も若干よろし。
中村氏から“戦国時代史論”の寄贈あり。

○二月十八日(日)  晴後曇 寒
午前、雑用。
午後、外出。校長の所へ塩からを持って行く。不在也。大映へ寄る。遠藤書店、大畑さんの所へ寄る。
餅(二升全部)をつく。
発信 中村吉治、布川角左衛門。
受信 中野家直。

○二月十九日(月)  曇 寒
午前、学校。教官は荒田さんがゐるだけ。
午後、家にゐて雑用。“武道初心集”をよむ。
今日は厳寒の寒さなり。
今日から五日間生徒は軍事講習。

○二月二十日(火)  曇 寒
午前、学校。閑散也。
午後、家にゐる。
昨日より一層寒し。学校でひる零下二度。
硫黄島に米軍上陸(19日)。
母、神経衰弱の傾向あり。

○二月二十一日(水)  曇 寒
午前、学校。閑散也。
午後、家にゐる。“復活”をよむ。単調な生活なり。

○二月二十二日(木)  曇後雪 寒
午前、学校。ほうよく十一ヶ配給あり。
学校の寒暖計零下五度也。
午後、家にゐる。“復活”をよむ。弁記法的也。

○二月二十三日(金)  吹雪 寒
午前、学校。田中さんのお嬢さん死去の由。
午後、外出。遠藤支拂い二ヶ月分で7円0銭也。今年になって本らしい本は一冊も來ない。本屋を一巡。よくよく本がなくなった。散髪。ポルツェルさんの所へ寄る。
夜上原楓が來る。
硫黄島の皇軍奮戦。
発信 帝大新聞。
受信 帝大新聞。

○二月二十四日(土)  吹雪 寒
午前、学校。
午後、田中さんの告別式。かへりに学校に寄る。
昨夜相当の積雪あり。
伊藤さん、九月退官。

○二月二十五日(日)  曇 寒
午前、家にゐる。昇曙夢訳“復活”読了。“罪と罰”の方が深みがあり、“復活”の方が分り易い。併し“復活”も重要な作品である。
午後、外出。大映で日本ニュースと文化映晝を見る。
発信 中野宗直。

○二月二十六日(月)  晴 寒
久し振りの好天気。未だ寒いが、日中はそれでも雪がとける。
午前、学校。久し振りに授業。理一乙。独逸の国権思想迄。
午後、ひるねなど。延世少し不快。
四時学校(図書課)へ。五時寮へ。白石さんに代って宿直。福永、多田、平井が來る。寮の盗難甚だしい由。相当寒し。

○二月二十七日(火)  雪 寒
七時起床。朝禮等異常なし。一旦家へかへる。
十時、学校。寮で晝食。済世館へ薬取りに行く。高波さんに会う。
四時から教授会。田中さんの見舞金の件等。五時終了。日野月校長案外よろし。
今日は割合温度は高く、雪がとける。
岡部さん肺炎カタルの由。

○二月二十八日(水)  快晴 暖
初めての一日中の快晴である。暖く、しきりに雪がとける。午前、学校。
午後、“最近の独逸哲学”等をよむ。
発信 深町弘三。
母も延世も漸く具合良いらし。
“欧羅巴文化の神髄”をよむ。
学寮盗難事件、生活課のうといこと。