○十月一日 (月) 晴 暖
正午、六甲。教授会えの手紙を届ける。
研究室にいる。赤松、陸井、青木等來る。
教授会七時終了。
○十月二日 (火) 晴 暖
午後、六甲。六甲から大阪え。菅原事務所え。小川君、井上さん、後から來る。菅原さんに報告。
三人で吹田え行く。母、醇郎に話をする。
○十月三日 (水) 晴 冷
午後、六甲。井上氏來る。一緒に古林氏、則武氏に会う。かえりに末永氏を訪う。留守。
死して生きる。
昨日、文科教授会声明を発表。
○十月四日 (木) 晴 暖
午前、学生二人來る。母來る。
午後、陸井君來る。
夕食後、母去る。
○十月五日 (金) 晴 冷
午後、御影。小川氏、井上氏と相談。六甲え行く。泉さんに会う。退職金を受取る。かえりに古林さんと一緒になる。
昨日休んだので却って疲れが出た。
六甲に聴音器をそなえつける。物騒になって來た。
母、午後五時立った筈。
受信 伊原隆.
○十月六日 (土) 晴 冷
午前、日銀え行く。退職金、16万3千44円をうけとる。富士銀行え行って13万円をあずける。御影分校え行く。井上氏、小川氏等に会う。小川氏、今夜上京。
家えかえる。陸井氏、青木氏が來ている。畫食後、3人で大阪え行く。民科の改装記念ティー・パーティ。夜、哲学部会。甘粕氏、相沢氏等参加。
延世え、2万7千円也をわたす。
○十月七日 (日) 晴 暖
午前中ねむる。
午後、岩井氏等來る。風呂え行く。
停電しきりなり。
母も醇郎も奴隷根性が徹底している。
後退わするが、降参わしない。毛沢東の持久戦論に学ぶ。
受信 鈴木平八郎.
○十月八日 (月) 曇 冷
午後、御影分校え行く。井上さんに会う。六甲え行く。靑木君に会う。
かえりに山口氏の所えよる。末永氏の所えよる。
発信 内海義夫、服部英次郎.
○十月九日 (火) 晴 暑
一日中休養。却って疲れが出る。
夜、井上さん來る。
発信 寺沢恒信、野島義一.
○十月十日 (水) 晴 暑
午後、六甲。研究室。声明を書く。
寺沢氏、明日來る由。
夜、井上さんの所え行く。
発信 鈴木平八郎.
受信 母、醇郎、寺沢恒信.
○十月十一日 (木) 晴 暑
午後、六甲。古林、阿部、井上氏等と一緒に外大え行く。公大協の組合總会で報告する。寺沢君と中川旅館え行く。十時去る。
○十月十二日 (金) 曇 暖
午後、六甲。研究室。服部、三田、青木、氏等來る。
崩れ出すと行くところまで行くより外ない。人間もいやらしいものである。
○十月十三日 (土) 曇後雨
正午、六甲。コンダン会わとりやめ。赤松に会う。
夕方、風呂え行く。
ルース颱風近ずく。
誰がこう云ったとか、あヽ云ったとか云うことにわうんざりする。そういうつまらないことに首を突込んでいるので、問題の本質が分らなくなる。
○十月十四日 (日) 雨 冷
一日中休養。
ルース颱風近ずく。
朝、関西学院の学生來る。高坂正顯、関西学院に入る由。
服部さんも逃げる。
夜、声明の続きを書く。
○十月十五日 (月) 曇 冷
昨夜から風が強くなる。ルース台風、山陰沖えそれる。雨わ余り降らない。
午後、六甲。散髪など。
夜、井上さんの所え行く。文科教授会の話など。
齋藤信治が來る由。えらいものを引張って來るものである。
声明書一応終了。11枚。
発信 山脇利昭.
受信 山脇利昭.
○十月十六日 (火) 快晴 暖
午後、御影え行く。井上、青木、小川氏等に会う。小川君から東京の話をきく。
“戦後の西田哲学”を書く。4枚也。
延世、平尾さんえ行く。何処も悪くない由。
○十月十七日 (水) 快晴 暖
午後、六甲。赤松君に会う。
かえりに御影えよる。井上、小川氏に会う。新聞の件。
朝、関西学院から原稿をとりに來る。
延世、血沈、4。急に元気になる。Neuroseであった。
受信 野島義一.
○十月十八日 (木) 快晴 暖
陽子、奈良え、紘一郎、明石え、遠足。延世、阿部さんの家え。
留守番。休養。
エジプト問題重大化。エジプトと日本、いいコントラストである。
今井、武市わくさってる。
発信 北川宗藏.
○十月十九日 (金) 曇 暖
東京え雑誌を送る。
午後、六甲。研究室。赤松、普に会う。かえりに御影えよる。井上、小川氏に会う。
○十月二十日 (土) 曇後雨 冷
午後、大阪。ペキンえ郵便を出す。24円也。阪急えよる。靑木君に会う。
民科。幹事会。
○十月二十一日 (日) 曇後晴 冷
祐二郎、幼稚園の遠足。
午後、三の宮え行く。阪急文化で“羅生門”をみる。
みなとまつり。ミス・コオベ。馬鹿げている。
○十月二十二日 (月) 晴 冷
午後、六甲。赤松に会う。御影え行く。井上、小川氏に会う。
アメリカの戦争準備が崩壊するとき。
関西学院、高坂氏就任めぐり紛糾。
○十月二十三日 (火) 雨 寒
午後、六甲。則武に会う。御影え行く。靑木君、小川氏に会う。
この頃飛行機がやけに沢山飛ぶ。
時代わいよいよ末期的、ヒステリックになって來た。こういう時代わそうわ続かない。アメリカの戦争計畫わ気狂いじみているが、それわ強さでなく、弱さの表現である。はじから崩れつつある。朝鮮の問題。工作機の問題が命とりになりそうである。イラン、エジプトの問題。モロッコも始まるであろう。国内の反戦、厭戦の気分が強くなれば、戦爭遂行わ不可能になる。アメリの戦爭計畫が挫折するとき。日本の変革も行われる。アメリカももう坂を下り始めた。
疲れが中々抜けない。どこかえ行って來たいのだが。
先頃から肝油をのんでいる。
受信 母.
○十月二十四日 (水) 曇 暖
午後、六甲。古林さんに会えず。かえりに御影えよる。
朝、赤松來る。学術会議の話をきく。夜、赤松再び來る。声明を持って行く。
社会党分裂。
休戦会談、英、ソの援助求む。朝鮮でアメリカわよほど困っているとみえる。
今年中わ残務整理と休養。20年間の勤めが終る。生活の変化。
○十月二十五日 (木) 晴 暖
午前、永井氏來る。
午後、永井氏と一緒に御影え行く。靑木氏等に会う。
○十月二十六日 (金) 晴 暖
一日中休養。まだ疲れが抜けない。何処かえ行ってくる必要があろう。
風呂え行く。
英、保守党勝つ。保守党にやらせてみるのもいい。
結局、單独講和になって、ひどい目に会うまでわ分らないだろう。
日本の社会も腐敗が急速度で進んでいる。
○十月二十七日 (土) 晴 冷
午後、延世と一緒に阪急文化え行く。“アンナ・カレーニナ”をみる。大福十ケを買ってかえる。
労仂党、得票数でわ保守党より多い。
受信 山脇利昭.
○十月二十八日 (日) 曇 寒
午前十時半家を出る。十二時千里山着。関大え行く。関西哲学会。近藤氏等の報告あり。
かえりに原、近藤、三田、青木氏等と淡路で下りてうどんをたべる。
夜、井上さんの所え行く。留守中に赤松來る。
○十月二十九日 (月) 晴 暖
午後、六甲。高田保馬が講演をしている。赤松に会う。かえりに御影えよる。
神戸大学の学生わすっかり沈滞して了った。
老舎著、竹中伸訳“駱駝祥子”読了。大変面白い。
○十月三十日 (火) 曇 冷
午後、六甲。海道氏に会う。
飛行機がやけに飛ぶ。制空権をとられそうになってあわてている。
脱落者わみにくい。脱落を合理化するため裏切りをする。自己批判をした人わ美しい。
受信 母.
○十月三十一日 (水) 晴 暖
午後、六甲。古林さんに会う。御影えよる。
京都わ学生運動も盛んである。神戸の沈滞わ又ひどい。
日本でも民族運動が起るべきである。世界中で一番おくれている。
今年中わ残務整理、休養、計畫。來年から仕事にかヽりたい。