○三月一日(土) 曇 暖
午前十一時すぎ、歯医者へ行く。かえりに御影へよる。
四時、大阪。民科へよる。成田氏と一緒に中央公会堂へ行く。山田五十鈴の挨拶。「箱根風雲録」。面白い。八時終了。ステーション・パーラーへよる。
発信 和郞
受信 和郞
○三月二日(日) 曇 暖
午後、一人でるす番。延世、祐二郞、元町え行き、帽子、ランドセルを買う。ひるね、飜訳。
夜、飜訳。後、十二頁。少しピッチを上げよう。
フランス、エジプト、インドシナで首相交代、ビルマで大統領交代。時代は急湍の如く動く。
○三月三日(月) 晴 暖
延世、幼稚園へ行く。
午後、御影。歯医者。
夜、飜訳。
○三月四日(火) 曇 寒
延世、幼稚園。
午後、御影。六甲の歯医者。
夜、飜訳。
田中保太郎は学問の歴史に拭うベからざる汚点を残した。この責任はやがて追求されねばならない。
○三月五日(水) 曇 寒
午後、六甲。泉さんに会う。かえりに歯医者。一本むしば。
夜、飜訳。明後日終了。
○三月六日(木) 晴 暖
午後、雜用。風呂に行く。
夜、赤松がくる。飜訳。明日で終り。
○三月七日(金) 雨 冷
午後、御影。歯医者。
夜、停電。一晩むだにする。飜訳終る所を予定狂い、しゃくにさはる。
北京へ「印刷物」を送る。
- 三月八日(土) 晴 暖
午後、大阪。民科。哲学部会。森信成氏の報告。科学助成金の請求書を作る。夜、幹事会。九時三十分終了。伏見さんと一緒にかえる。
家えかえってから飜訳。九日午前二時二十分に終了。二〇〇字で四三七枚。五五日を要した。一日平均一・七頁。原文一頁、訳文二〇〇字で四・八枚。
○三月九日(日) 晴 暖
午後、家にいる。
六時、海員会館。平和同好会で話。九時終了。
○三月十日(月) 晴 暖
午後、御影。齋藤信治來る。青木君から四章までの原稿を受取る。五章をわたす。
歯医者。明日つめる由。
夜、『世界』をよむ。
○三月十一日(火) あられ 寒
午後、御影。歯医者。
夜、飜訳を見直す。第一章終り。粟田氏は中々こまかい。
ひる頃、笹川氏来る。
○三月十二日(水) 晴 暖
午後、六甲。小川君来る。歯医者へよる。
夜、飜訳。第二章。
受信 豊川德郎、
○三月十三日(木) 晴後雨 暖
午後、御影。伊藤君に、民科えの判をたくす。歯医者。虫歯の修繕出来。
夜、飜訳。第三章をみる。
昨夜ねむれず。
「訳者のはしがき」を書く。
○三月十四日(金) 晴 暖
午後、歯医者。小さい虫歯一つ発見。
六甲から大阪へ。中央公会堂。榊原氏、小河氏に会う。中国の夕。岩村氏、前芝氏の話。「三つの邂逅」、非常にいい。小川君と一緒にステーション・パーラーへよる。
かえってから、飜訳をみる。四章の前半。
○三月十五日(土) 晴 暖
午後、御影。青木君から本をかりる。
五時半、大阪。山内に会う。民科。研究費の申請について。
十時、家にかえる。飜訳をみる。
受信 母
○三月十六日(日) 晴 暖
延世、子供二人、「箱根風雲録」を見に行く。祐二郞と二人で留守番。
疲れが出た感あり。一日中よくねむる。
夜、原稿見直し。終り。
山崎謙氏より『現代哲学の解明』の、寄贈あり。
○三月十七日(月) 晴 暖
朝、柴田さん來る。
午後、六甲。「訳者註」を調べる。大変暖い。
夜、「訳者註」等。よみ直してみても、この訳が悪い訳であるとは思わない。
○三月十八日(火) 雨 暖
午後、御影。歯医者。前歯の神経をぬく。
夜、「訳者註」を書く。二〇箇。二〇〇字で八枚。
幼稚園の卒業式。
昨日の教授会。たちばな問題に及ぶ。
世界中でプロレタリアートが帝国主義に攻撃を加えている。下からの力がもくもくと盛上がり、押え切れたものではない。もう一息という感じが強い。日本でも平和勢力の方が強くなっている。京大、東大の例。英、濠ではこの次の選擧では労働党が勝つ。イタリアも今年中に選擧があり、デ・ガスペリは退くであろう。日本でも自由党は没落する。アジア・アラブの動きも重大である。
○三月十九日(水) 雨後晴 暖
午後、風呂。後、歯医者へ行く。
夜、「解説」のプラン。オイゲン・ディーツゲンの書いた傳記をよむ。
細菌戦。戦争屋の最後のあがき。
来週火曜上京の予定。
学長を初め六甲の奴等は実にいやらしい。まだ封建制まで至らず、奴隷制である。少
くも学長、坂本はギロチンものである。
○三月二十日(木) 曇 寒
午後、御影。六甲え行く。海道氏、いつもいない。研究室で調べものをする。かえりに歯医者へよる。
夜、「解説」を書く。傳記を書く。二〇〇字で、一―一五。
紘一郎、発熱九度。風邪らしい。
○三月二十一日(金) 晴 暖
午後、新開地を歩く。
夜、「解説」の続きを書く。二〇〇字で三四枚までで終り。目次等全部で、二〇〇字で四八六枚。
紘一郎、まだ発熱三八度以上。
発信 林省吾 松村一人
○三月二十二日(土) 曇後雨 暖
午後、大阪。民科。哲学部会。人間論。
夜、幹事会。山本、森氏とステーション・パーラーによる。
紘一郎、快方にむかう。
○三月二十三日(日) 晴 寒
午後、紘一郎、多量に鼻血を出す(三時頃)。医者をよびに行く。中々いない。七時、漸く平尾さん来る。大して心配する程のことはないらし。
夜、紘一郎、血が出なくなり、よくねむる。祐二郞も発熱九度四分。
おそくまで、紘一郎の様子をみて起きている。
東京行、少し延期。
発信 松村一人 林省吾
○三月二十四日(月) 曇 寒
陽子の卒業式。陽子、總代。熱があったが出席。延世、父兄として行く。
子供二人と家にいる。二人とも経過よろし。
午後、御影。小川君に会う。歯医者へ行く。歯をつめる。
あられ、小雪、大いに寒い。
上京、明日の予定であったが、少し延期。
夜、陽子、発熱九度。他の二人はよろし。
夜、飜訳の見直し。二章まで。
○三月二十五日(火) 小雨 寒
午後、岡本郵便局。栄町の富士銀行へ行く。御影分校。井上さんに会う。歯医者。もう一日。
夜、飜訳の見直し。三、四章。
紘一郎、祐二郞、よろし。陽子、八度。
六甲で散髪。
発信 母
○三月二十六日(水) 晴 暖
漸くいい天気になった。
午後、岡本郵便局。一万円也は税金。神戸銀行御影支店。御影分校。六甲へ行く。泉さん、海道さんに会う。歯医者。後は東京からかえってから。
陽子、八度。
六甲、卒業の式。
夜、飜訳の見直し。終り。
発信 山崎謙
○三月二十七日(木) 雨 冷
午後、御影。青木君に会う。雜用。
陽子、夜、八度。発汗、熱下る。
夜、又飜訳をみる。三章まで。
○三月二十八日(金) 晴 暖
午後、御影。井上さんに会う。元町え行く。買物をする。
風呂へ行く。
陽子、よろし。
夜、原稿を見終る。今度は早い。
発信 林省吾、松村一人、粟田賢三、大井正 近藤忠義 陸井四郎 鈴木平八郎 須田宗興
○三月二十九日(土) 晴 暖
午後、上京の用意。
七時、神戸駅。八時五分神戸駅発。東京行急行「銀河」。いわゆる特別三等にのる。
○三月三十日(日) 晴 暖
午前八時 東京駅着。九時阿佐ヶ谷の家へつく。朝食後、ねむる。
午後、新宿へ行く。人出多し。
東京の町は、埃っぽく、美しくない。東京の人は顔色が悪いような気がする。電車もうす汚い。
発信 竹内良知 近藤政世 延世、
受信 清水正徳、
○三月三十一日(月) 雨 寒
午後、岩波。粟田氏に原稿を渡す。布川氏に会う。日本協(ママ)へ行く。柏水堂へ行く。近藤氏等に会う。クロンボへ行く。
トルーマン、選擧に出ず。ウィルソン辞任。アメリカ帝国主義も急激にガタピシして來た。