○四月一日（水） 晴 寒
午後、大阪市大。民科Ｇ。創元社へ行く。田代氏に原稿をわたす。民科、哲学部会。
山本氏、「実在論」「実用主義」を送ったというが、つかない。
世界商品市場急落。ウォール街、又暴落。こんどは本物であろう。
紅松氏から原稿きたる。
理論社の『西田哲学との対決』出来。
中村九一郎氏、書けない由。だらしがない。
夜、原稿をみる。
○四月二日（木） 曇 暖
午後、みかげ。テニス。小川君にあう。
夜、原稿。「世界主義」「絶対主義」を書いて田代氏へ送る。サ行はあと「実在論」「実用主義」の二つ。その他数項目を書く。
創元社もいいかげんである。余り信用できない。
ソ連、中共の戦術は柔軟性がある。日共のようにつっぱてばかいるのとはちがう。
発信 山本晴義 理想社 紅松保雄
○四月三日（金） 曇 冷
山本氏から「実在論」「実用主義」到着。ただちに創元社へ送る。これで「サ行」まで終り。
午後、紘一郎、祐二郞をつれて甲子園の「科学博」を見へ行く。
大井氏から葉書。日本哲学会は五月二、三日。
夜、原稿。創元社は『哲学辞典』を推進する気があるかどうか。
『哲学者の手帖』のプランを考える。この方が面白い。『辞典』は早く片ずけたい。
発信 山本晴義
受信 大井正
○四月四日（土） 晴 寒
強い寒風が吹く。午後、みかげ。サ行まで終り。タ行以下、まだ來ない項目が一一〇。來ているのが約三〇〇であろう。元町へ行く。
祐二郞、風邪。
平和への大きな動き。一直線には行かないが、この大勢はとどめえないだろう。
コーンフォース、今日までに出たかどうか。この頃めぼしい本が出ないし、新学期になるし、うれるだろう。
母、病気だった由。
夜、原稿。「ドイツ哲学」「ドイツ古典哲学」の二つを書く。
原稿の催促狀を一齋に出す。ラスト・コース。
発信 大井正、三田博雄、甘粕石介、竹内良知、笹川儀三郎、矢内原伊作、高島徳三、服部英次郎
○四月五日（日） 晴 暖
コーンフォースの訳書一冊到着。美しい装幀。きれいな本に出来上った。誤植はだいぶ残っており、印刷も悪い。
午後、風呂。本の出来たお祝いに少し酒をのむ。
夜、雜用・
○四月六日（月） 小雨 冷
午後、みかげ。元町へ行く。
コーンフォース、装幀はいいが、印刷は悪い。それに校正でなおした所を全く入れてない。
夜、原稿。「哲学」を書く。
『レ・コミュニスト２』を小島君から貰う。
イギリスのカタログによると、コーンフォース『史的唯物論』四月刊行の予定。
発信 理論社 小宮山量平
○四月七日（火） 晴 暖
矢内原氏から原稿來る。
午後、みかげ。大黒來る。
和郞、奈良へ家をたてた由。
ウォール街二年半來の暴落。ウォール街大あわて。こんどは本物。
夜、原稿。「哲学史」「哲学者」を書く。「哲学」とこの二つとは三位一体をなし、すこぶる面白い（とくに「哲学者」）。これが『哲学辞典』の中心である。三項目で二十四枚（二〇〇字で）。これでやっかいな項目は終った。
発信 矢内原伊作
受信 和郞
○四月八日（水） 晴 暖
午後、大阪。新世界。民科。哲学部会。
コーンフォース、店頭に出ている。
夜、雜用。
○四月九日（木） 晴 暑
午後、みかげ。テニス。後藤書店へ行く。金をうけとる。
創元社はけしからん。
夜、甘粕さんからかえってきた四項目を書く。
発信 理論社 三田博雄
受信 三田博雄 林省吾
○四月十日（金） 雨 冷
コーンフォース、訳書十九冊、および原著到着。
午後、みかげ。三時半のバスで六甲へ。後藤書店來る。『ディルタイ全集』七冊を一万円でうる。海道さんの所へよる。
『哲学辞典』、印刷は日写。原稿、全部揃ってからわたすよし。この仕事も、まず一段落、いそがしいときはすぎた。編集が全部終るのは四月末であろうが。
夜、井上さんの所へ行く。
夜、雜誌などよむ。
受信 理論社
○四月十一日（土） 曇 暖
午後、ニッサンへ行く。「縮図」「蛇と鳩」をみる。
森信成氏へ本を送る。
原稿の催促狀を三通出す。これが最後になればいいが、そうはいくまい。
夜、雜用。
『哲学者の手帖』のプランは考え、資料は集めるが、書を出すのは五月であろう。『哲学辞典』も一応楽にはなったが、まだ用事はかなりあるし、四月中にかかるであろう。しめくくりはよくしなければならない。今迄だいぶつめて仕事をしたので、これからしばらく少しゆっくりした日をすごしたい。
発信 山本晴義 樺俊雄 西村勝比古
受信 大村晴雄
○四月十二日（日） 曇 寒
山本氏から原稿（四項目）來る。
午後、延世と元町へ行く。コシバで合服を買う。八、八〇〇円也。
夜、中村九一郎氏からかえってきた項目を書く。七項目。
受信 平野会、岩橋久夫、山本晴義
○四月十三日（月） 晴 寒
午後、みかげ。青木、中村と一しょに深田池へ行く。
夜、平野さんの葉書を書く（三〇枚）。
受信 野島義一
○四月十四日（火） 晴 暖
一日休養。相当疲れた感じ。
午後、宮原さん來る。
風呂、床屋へ行く。
ダレス失脚の噂。アイク内閣もはじめからガタピシしている。
夜、毛沢東をよむ。
○四月十五日（水） 雨 冷
午後、大阪。本屋を一巡する。六時、民科哲学部会。藤本さん出席。
東京へ『婦人公論』を送る。
夜、讀書。
発信 山本晴義
受信 母 海道進 佐藤代治、
○四月十六日（木） 晴 寒
竹内氏から原稿五項目來る。あとは「戸坂潤」だけ。
午後、みかげ。青木君と一しょに創元社へ行く。
巻返し政策は逆になった。アイゼンハワー、不眠症。
夜、『スターリン』をよむ。
辞典、四月中で完全終了とする。少し休んで、五月から別の仕事にかかる。民科委員会は全部落第。全くだらしがない。
五月二、三日の哲学会で上京しようかと考えたが、汽車がこむので止めようかと思っている。
発信 竹内良知
○四月十七日（金） 晴 寒
午後、みかげ。大江氏に会う。のち、元町へ行く。海文堂でコーンフォース、十二冊。売行きはよろし。後藤へよる。
夜、『スターリン』をよむ。
受信 竹内良知
○四月十八日（土） 晴 寒
朝、郵便物沢山來る。『西田哲学との対決』やうやく到着。
午後、みかげ。少しテニス。小川君と一しょに神戸へ行く。
一齋に催促狀を出す。実に手がかかる。実際無責任な人間が多い。
夜、『平和』をよむ。『辞典』の原稿をみる。
まだ來ない項目。etc。
ウォール街、大暴落。
発信 紅松保雄、服部英次郎、西村勝彦、高島徳三、樺俊雄（二）、山本晴義 竹内良知 理論社
受信 高桑純夫
○四月十九日（日） 晴 暖
午後、投票に行く。それから元町へ行って買物をする。人出多し。
新調の合服を着る。
夜、原稿をみる。ラジオをきく。選擧の結果、大した変りはないらし。
発信 佐藤代治 新橋書房 山本晴義
○四月二十日（月） 晴 暖
午後、みかげ。樺さんに会う。永積氏來る。テニス。
留守中に山本氏來る。樺さんはぎりぎりになると書くが、民科会員は底ぬけにだらしがない。
保守党不振。社会党躍進。
家中風邪をひている。
夜、原稿をみる。マ行以下。
竹内良知氏から「戸坂潤」がくる。
発信 山口一夫
受信 竹内良知 日本哲学会
○四月二十一日（火） 曇 冷
紅松君から原稿來る。
午後、みかげ。平野義太郎氏来られた由。山本夫人來る。文部省への報告へ判をおす。みかげから六甲へ。海道さんに会う。
夜、樺さんの原稿をみる。
発信 紅松保雄、竹内良知、
受信 紅松保雄、西村勝彦、
○四月二十二日（水） 晴 冷
午後、みかげ。日文協。柳原氏来る。
みかげから大阪へ。民科哲学部会。
『死者はいつまでも若い』（下）の寄贈あり。
山本氏から「項目」をかえしてもらう。これで今週中に大体終る見込みがついた。
発信 理論社 道家忠道
○四月二十三日（木） 晴 冷
午後、みかげ。高島氏が原稿をもってくる。齋藤氏来る。
夜、十五項目（全部Ｂ）を書く。人に頼んで長らく待っていたのは馬鹿らしかった。いよいよあさってで服部氏を除いて全部終了。
○四月二十四日（金） 晴 暖
午後、みかげ。原光雄氏きたる。
理論社から金がくる。二千部なり。ただし、じき重版するだろう。
参議院の選擧。
夜、「まえがき」その他を書く。
発信 竹内良知 理論社
受信 竹内良知 理論社 阿部敬吾
○四月二十五日（土） 晴 暑
午後、みかげ。テニス。
参議院、左社躍進。日共は徹底的にまけて、行くところまで行かねばならない。そうして出直すこと。今のままでは大衆の支持はえられない。
どこからも原稿來ず。しかし、残り四十三項目。山本、陸井、井上、西村、田口、服部。月曜には大部分そろうだろう。
ようやく炬燵をやめる。
夜、「批判・自己批判」「二重人格」を書く。
○四月二十六日（日） 晴 暑
一日休養。午後、風呂へ行く。
山本氏から原稿來らず。実に手がかかる。
家中インフルエンザ。みな咳をしている。
朝鮮の休戦会議開始。休戦が成立したらその影響は深刻である。
今度の選擧では、国民の意志はよく現れている。
コーンフォース、全部配給のルートに出ている。
夜、創元社の『スターリン』讀了。
発信 山本晴義
受信 理論社 佐藤代治
○四月二十七日（月） 晴 暑
午後、みかげ。井上氏の原稿來る。
山本氏へ電報をうつ（六十円）。全く手がかかる。夜、九項目來る。
夜、山本氏の原稿を見る。「フロイド」「デューイ」「ハルナック」を書く。
現在のあり金約七万円。補給も少しはあるから夏まではもつ。
発信 林省吾、日本哲学会、関西哲学会、阿部敬吾、山本晴義、
受信 牧野周吉
○四月二十八日（火） 晴 暑
朝、山本夫人、原稿をもってくる。
午後、みかげ。服部さん來る。陸井、田口、両氏から原稿來る。編集、これで一応終了とする。服部氏の数項目、青木氏の「フランス哲学」が残っているが、これは別扱いで、あとから補うことにする。六甲の南天莊、元町へ。
夜、雜用。
近藤さんへコーンフォースを送る。
発信 今泉三良 小宮山量平 山本晴義 牧野周吉 森信成
受信 甘粕石介、森信成
○四月二十九日（水） 曇小雨 暑
午後、元町。お土産を買う。
夕方、風呂へ行く。疲れが出た感じ。
夜、明日の用意。
ルフォーブルの『弁証法的唯物論』（本田訳）が出ている。
理論社から追加十冊がこない。これはむしろ良い傾向である。明日にもくるかも知れないが。
○四月三十日（木） 雨後曇 冷
午後、出発の用意。
五時半家を出る。神戸駅へ。七時八分神戸発「瀬戸」へのる。楽にかけられる。