○六月一日(月) 雨後曇 冷
午後、みかげ。奈良本氏に会う。
『辞典』の疲れがようやく治ったようである。しかし、この機会に、もう少しゆっくりとしていた方がよかろう。あわてる必要はない。
夜、松村氏の本をよむ。
○六月二日(火) 雨 冷
午後、みかげ。永積氏に会う。西野氏來る。「創元新書」の件。
英国の戴冠式で日本の新聞・ラジオが大騒ぎ。バカげている。
ニューヨーク株暴落。
「創元新書」で『弁証法入門』を書く予定。一月か一月半で書けるだろう。コーンフォースより前に書く。約一ヶ月休んだし、疲れも大体、なおったから新しい仕事にかかってもいい。去年も五月は休んで、六月からコーンフォースにかかった。
夜、松村氏の本をよむ。
受信 近藤忠義
○六月三日(水) 晴 暖
午後、大阪。創元社へ行く。『日本武尊』と『日本の政党』を貰う。六時、民科。哲学部会。
○六月四日(木) 曇 暑
午後、みかげ。笠井さんに会う。みかげから神戸へ。後藤へよる。明日本をうることにする。
『弁証法入門』のプランを考える。これに全力をつくす。
○六月五日(金) 雨 暑
午後二時半、新在家。後藤氏と一しょに六甲へ行く。研究室に齋藤氏がいる。書物を二万円也売る。かえりに、三角で長倉氏に会う。
梅雨が早くきたらし。
『理想』六月号着。拙稿を一月早くのせた。
朝鮮の休戦成立近し。株の暴落。
夜、『弁証法入門』を書きはじめる。
○六月六日(土) 曇小雨 暑
風邪。くしゃみが出る。結局疲労。
夜、原稿少し。気分が悪い。『日本武尊』をよむ。
○六月七日(日) 雨 暑
台風第二号來る。四時頃河から水があふれる。床下浸水。
風邪、同じ。相当深刻な疲れがある筈。
夜、原稿少し。
○六月八日(月) 雨後曇 冷
風邪、昨日に同じ。
休戦会議妥結。世界的轉換がはじまる。次第に深刻な影響が現れてくるであろう。平和勢力の大勝利。
神戸大学でも戦犯追放をせねばなるまい。
夜、原稿。
発信 山本晴義
受信 矢内原伊作
○六月九日(火) 晴 暖
風邪、快方に向かう。
夜、原稿。毎日少しずつ書く。
○六月十日(水) 晴 暖
午後、みかげ。みかげから元町へ。海文堂へよる。後藤で残金をうけとる。
夜、原稿。
発信 山本晴義
受信 矢内原伊作
○六月十一日(木) 曇 冷
今日も休養。なんだかひどく疲れている。
午後、風呂。
陽子、三番(学年)。
休戦の影響は徐々に力強く現れてきている。
夜、原稿。
発信 岩崎武雄 京大新聞
○六月十二日(金) 曇 暑
風邪悪化。ひる、八度、午後、八度。夜、八度五分。去年からの疲れの堆積が表面化したものであろう。発汗。
受信 藤野渉
○六月十三日(土) 晴 暖
朝、七度。ひる、七度。夕方、八度。発汗。
昨日よりは概していい。
発信 藤野渉
○六月十四日(日) 小雨 暑
午前、七度五分。午後、六度八分。夜、七度二分。段々下ってくる。
内灘問題激化。辻政信現る。
○六月十五日(月) 小雨 暑
午後まで七度以下。夜、八度。まだ咳が出る。疲労も根強い。
内灘村、試射開始。
受信 永島昌彦
○六月十六日(火) 晴 暑
朝、七度五分。午後、六度九分。夜、七度一分。中々ひつっこいが、今度はいいらしい。
コーンフォース、第二刷着。割合によくなおしてある。
特別国会再開。
発信 永島昌彦
受信 岩崎武雄
○六月十七日(水) 曇 暑
ひる、六度五分。午後、七度。夜、七度五分。どうもひつっこい。咳も出る。
○六月十八日(木) 雨 暑
午前、七度二分。午後から平熱。
午後、平尾さんに來て貰う。風邪。肺は悪くない。
夜、原稿に少し加筆。
どうやら今度は治ったらしい。
李承晩、捕虜を釈放。東独のデモ。
○六月十九日(金) 晴 暑
はじめて平熱。風邪がなおって何だかがっかりする。よくねむる。咳はまだ出る。
創元社がきてもいい頃だが來ない。青木靖三も來ていい。
夜、原稿。
○六月二十日(土) 雨、冷
平熱。
全快祝でビールをのむ。早くからねてしまう。
受信 理想社 藤野渉
○六月二十一日(日) 晴後雨 暑
午後、はじめて外出。三の宮まで行く。ねている間に夏になった。
夜、原稿。
発信 山本晴義 新女性社
受信 和郞 西野顯
○六月二十二日(月) 曇 暑
午後、みかげ。永積氏、笠井氏に会う。
午前、西野氏來る。新書の件。
夜、原稿。
発信 和郞
○六月二十三日(火) 雨 暑
午後、風呂。目方、四四キロ。散髪。
コーンフォース、第二巻、未刊の通知あり。
夜、原稿。
受信 山内十三
○六月二十四日(水) 晴 暑
午後、大阪。創元社で西野氏に会う。阪急で山内氏に会う。
夜、原稿。
発信 山本晴義 醇郎
○六月二十五日(木) 雨 暑
午後、みかげ。みかげから元町へ。海文堂へよる。
とにかく家のせまいのはこまる。二階があれば能率が倍上るのだが。
朝鮮戦乱三周年。
夜、原稿。
○六月二十六日(金) 曇 暑
一日中家にいる。
午後、風呂。
夜、原稿。大体一日五枚というところである。
発信 平和新聞
受信 社会思想研究会
○六月二十七日(土) 曇後雨 暑
午後、大阪。民科。甘粕氏、山本氏にあう。教育部会に出る。
北九州、大水害。
夜、原稿。
○六月二十八日(日) 曇後雨 暑
午後、阪急会館で「赤い風車」をみる。
九州、雨やまず。関門トンネルも不通。
夜、原稿。約三分の一に近づく。自分ではすこぶる面白いと思っている。
受信 母 醇郎 山本晴義
○六月二十九日(月) 雨 暑
午後、みかげ。
『人民中国』日本語版着。
夜、原稿。
発信 母 藤野渉、
○六月三十日(火) 曇 暑
午後、みかげ。笠井さんに会う。
夜、原稿。
田中保太郎ほどの悪人はあまり例がないだろう。
受信 母