○八月一日(土)  晴、夕立 涼

四時半、塩尻着。そばをたべる。六時四十分塩尻発。八時十分茅野着。バスで家へ。母、だいぶ咳をしている。

ひるね。夕方、新家へ挨拶に行く。

寒い位涼しい。

 

○八月二日(日)  曇 涼

休養。夕方、子供をつれて鬼場まで買物に行く。

 

○八月三日(月)  曇 涼

午後、吉治氏等來る。

 

○八月四日(火)  曇 寒

吉治氏等と墓参りに行く。

夕方、子供をつれて矢ヶ崎まで行く。

 

○八月五日(水)  曇 冷

朝、吉治氏等去る。

午後、ひるね。

指のきず、治らない。耳はよろし。

夜、『東京えちけっと』をよむ。中々面白い。

『弁証法入門』、この位面白い本はめったにないと自負している。ユーモアあり、するどいふうしあり、しかも理論はよく通っている。この書の売行でぼくの生活はきまる。創元社が印税を拂うことが條件であるが。これがうまく行けば、運命は開ける。文筆でやって行ける。この見込みが立てば、田中保太郎等に筆誅を加える。

この書物は売れない筈がないと思う。これが売れるということは、それだけではない。ジャーナリズムに乘り出すということである。

 

○八月六日(木)  晴後雨 冷

午後、茅野へ行く。買物。蓼科行の人で賑っている。

 

○八月七日(金)  晴後曇 暖

院長、來る筈であったが來らず。

午後、野天風呂に入る。夕方、鬼場まで買物に行く。

創元社から校正來る。八〇頁まで。夜、みてしまう。二〇〇頁位になりそうである。

『クライネス経営学辞典』も着。

『弁証法』は自分でよんでみても面白い。

発信 醇郎

受信 林省吾

 

○八月八日(土)  晴、夕立 書

校正見直し。夕方、子供をつれて粟沢橋まで行く。校正を送る。

創元社から金がくる。

夜、『婦人公論』『平和』をよむ。

発信 西野顯

受信 西野顯

 

○八月九日(日)  晴 書

校正の後半着。一五七頁まで。後半は割合にのびなかった。

午後と夜で校正をみる。この本はあと十日位でできるだろう。日本の唯物論に新しい分野を開拓したものと自負している。

 

○八月十日(月)  晴 暑

午後、ちのへ行く。ちの郵便局で校正を速達で送る。四十一円也。買物をする。中元大売り出し。蓼科行の人多し。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。

受信 西野顯

 

○八月十一日(火)  曇 暑

午後、ひるね。晝はよくねむれるが、夜はねむれない。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。

発信 醇郎

 

○八月十二日(水)  曇小雨 暖

延世と子供三人をつれて上スワへ行く。十一時家を出る。茅野までバス、茅野から上スワまで又バス。十二時上スワへ着く。湯之脇の前に住んでいた家によってみる。片倉館へ行く。あいにく今日は休み。庭で晝食。スワコの遊覧船にのる。上スワの町で買物をする。四時十五分上スワ発の汽車でかえる。

上スワへ行ってきたら、気分が変ってよろしい。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。

『弁証法雜話』という本を書こうと思っている。五―十枚位の話を集める。『入門』の補いの意味のもの。約二〇〇枚。『入門』が売れたらの話である。

 

○八月十三日(木)  雨 冷

『校正』きたる。小見出しをつけること。

理論社から金がくる。

今日から盆。子供らと迎え火に行く。

夜、校正をみる。『レ・コミュニスト』をよむ。

発信 理論社

受信 理論社

 

○八月十四日(金)  雨 冷

午後、ちのへ行く。原稿、校正を小包速達で出す。一〇五円也。ちので醇郎に会う。四時四十分のバスで一緒にかえる。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。(1)、讀了。

郵便物、神戸から廻送されてくる。

受信 佐藤代治外

 

○八月十五日(土)  雨 冷

昼、餅をつく。

夕食、ビールをのむ。

夕方、子供たちをつれて鬼場まで買物に行く。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。

 

○八月十六日(日)  曇後雨 冷

午前、美喜治氏來る。皆でお墓参りに行く。

ペキンからパンフレット四冊着。

夕方、送り火に行く。

発信 西野顯、理想社 井上増次郎

受信 西野顯

 

○八月十七日(月)  晴 暑

午後、ちのへ行く。郵便局で金をうけとる。買物をする。天気になって人出多し。

明日醇郎らが立つ。夕食、ビール。

午後十一時和郞來る。

風呂に入る。「靑い空白い雲を見て野天風呂」

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。

発信 金井康悦 橋倉武人

 

○八月十八日(火)  晴 暑

醇郎、十二時のバスで去る。

夕方、鬼場まで行く。

いささか退屈である。しかし、それが身体のためにはいいのであろう。少し肥えたような気がする。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。

 

○八月十九日(水)  晴 暑

午後、子供三人をつれてちのへ行く。人出も減ったようである。

国連總会開会。アメリカの孤立。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。(2)讀了。

発信 西野顯 鈴木平八郎 佐藤代治

 

○八月二十日(木)  晴 暑

一日中のんびりとすごす。今日は一番暑いらしい。夕方、鬼場まで行く。

夜、『レ・コミュニスト』をよむ。『世界』をよむ。

 

○八月二十一日(金)  晴 暑

今日も一日ゴロゴロ。

 

夜、雜誌をよむ。

発信 鈴木照雄

受信 鈴木照雄

 

○八月二十六日(水)  曇小雨 冷

明日の出発の用意。

野天風呂に入る。

夜、雜用。

『弁証法入門』はぼくにとって一つの轉機をなすものでありたい。ジャーナリズムへの進出。文筆による生活。それだけの自信はあるのだが。この書物が一日も早く出ることをのぞむ。「続き」を書きたい。材料は集めている。神戸大学の連中を見返してやりたい。向うから頭を下げてたのみに來るように。

発信 西野顯

 

○八月二十七日(木)  雨 寒

午前十時おきる。紘一郎、祐二郞をつれて、十一時のバスで町へ。十二時四十六分茅野発。午後五時半、立川着。電車にのりかえ、六時、荻窪着。阿佐ヶ谷の家へ。にぎやかである。和幸氏もきたる。

 

○八月二十八日(金)  曇 寒

午後、神田へ行く。岩波で粟田氏、布川氏に会う。日文協へよる。六時、荻窪へ。延世、陽子を迎える。

夜、今泉來る。

創元社の『弁証法入門』の広告文。「劃期的な快著」、良い紹介である。数万売れるといいが。それで悠々やって行ける。出ない中に威張るのは気が引けるが、たしかにそれだけの價値はあると自信している。西野から返事は來ないが、どうかしているらし。病気? そうなれば、ペンでやって行ける自信がつく。

受信 今泉三良 鈴木平八郎

 

○八月二十九日(土)  雨後曇 寒

午後、理想社。佐々木氏に会う。神田へ行く。理論社で小宮山氏に会う。日文協で近藤氏に会う。新宿の風月へよる。近藤氏と別れる。

 

○八月三十日(日)  雨 冷

午後、延世、紘一郎と一緒に新宿へ行き、買物をする。

八時、家を出る。九時、東京駅、十時発大阪行彗星にのる。割合すいている。

受信 西野顯

 

○八月三十一日(月)  晴後曇 暑

名古屋から少しねむる。京都から乘った内海氏に会う。九時十六分大阪着。省線で本山まで。十時過ぎ家へ着く。

午後、ひるね。風呂、散髪。

虫がないて秋らしくなった。

夜、手紙を書く。

発信 母 林省吾 藤野渉 野崎順久

受信 藤野渉 野崎順久