○二月一日(月) 晴 寒
午後、みかげ。井上氏、青木氏といっしょに天治へよる。
『政界往來』の原稿、速達で送る。二十五円プラス八円、計三十三円。創元社の原稿用紙、二〇〇字で二十七枚。
夜、雜用。飜訳。ふたたび。
『哲学小辞典』はとにかく相当の大仕事であった。岩波の『哲学辞典』。
発信 日本文化人会議 キネマ旬報社
受信 日本文化人会議
○二月二日(火) 曇 寒
午後、みかげ。永積さんに会う。樺さんへ電話。創元社(西野)へ電話。執筆者へは今朝発送の由。元町へ。海文堂へよる。
明日、創元社の重役に会う。
早くも、出版ニュース社からアンケート來る。
南博の『日本人の心理』、五・六万。『入門』も刷りさへすれば、もっとうれる。書物にも幸、不幸がある。
発信 平和問題懇談会 西野顯
受信 出版ニュース社
○二月三日(水) 曇 寒
午後、みかげ。小川君→三田君。みかげから大阪へ。創元社。田代氏に会う。印税の件。『入門』千部増刷。民科へ。哲学部会。
夜、雜用。
発信 出版ニュース社
○二月四日(木) 曇 寒
午後零時半、阪大北校。毛沢東研究会に出る。三時終了。大阪へ。創元社で西野氏に会う。十冊うけとる。昨日六冊。
夜、飜訳。
アカデミーの中にいて勇ましいことをいっているのは甘いものである。
古林さんは結局逃避ではないか。安全地帯にいるときは気焰をあげる。
発信 鈴木照雄 亀井蔀
受信 鈴木照雄 亀井蔀
○二月五日(金) 曇 寒
午後、みかげ。笠井さんに会う。五時―七時。毛沢東研究。古林さんのところへ『哲学辞典』をもっていく。平凡社のが出たよし。
『辞典』かんけいも一応一段落の形。
夜、雜用。
受信 今泉三良
○二月六日(土) 曇 寒
ひる頃、西野來る。一万円もってくる。その他の件は未定。しんどい相手である。同じことを十遍もいわなければならない。
午後、阪急文化へ行く。「夜毎の美女」、奇想天外のアイディア。「肉体の悪魔」、二度目。元町へ行く。店頭で平凡社の『哲学辞典』を見る。余り出來はよくないようだ。海文堂に『哲学小辞典』が積んである。
粟田賢三氏から禮狀第一号。
夜、芭蕉をよむ。
『弁証法入門』が「岩波新書」であったなら、一冊でくっていける。
受信 粟田賢三
○二月七日(日) 曇 寒
午後、みかげ。日文協の例会。芭蕉について話をする。五時終了。小川君といっしょに元町へ行く。
鈴木氏に十五冊送るよう手配する。
夜、桂の論文をよむ。つまらない。「芭蕉について」を書く。
発信 西野顯
受信 鈴木照雄
○二月八日(月) 曇 寒
午後、みかげ。みかげから元町へ。
夜、風呂。
『世界』に『哲学小辞典』の広告が出ている。
夜、「芭蕉について」終り。十枚。すぐ発送。
平凡社の『哲学辞典』はできが悪い。
発信 榊原美文
受信 林省吾 亀井蔀
○二月九日(火) 晴 暖
午後、一時半、家を出る。三時半、法律文化社へつく。亀井氏、後から來る。東洋亭で打合せをする。河原町を散歩してかえる。
法律文化社は創元社とはだいぶちがう。創元社ほどしんどい相手はない。しかし、こういう相手で訓練されると有能になるともいえる。
夜、雜用。
発信 今泉三良
受信 今泉三良
○二月十日(水) 晴 暖
午後、大阪。創元社。千部増刷決定。『辞典』十部うけとる。『教育科学』出來。
民科。哲学部会。
鈴木照雄氏へ十五部送らせる。
夜、検印、千部。
発信 鈴木照雄 山本晴義
受信 山崎正一 小宮山量平
○二月十一日(木) 曇 暖
四月のようなあたたかさ。
午後、六甲。『世界哲学講座』見当らず。海道さんの所へよる。南天莊へよる。三の宮へ出て、後藤へよる。
『世界哲学講座』家でも見当らず。
創元社の検印を速達で送る。
『西洋哲学研究入門』のプランを考える。たしかに面白い企劃である。
発信 今泉三良 山本晴義 神戸向陵会
○二月十二日(金) 晴 暖
四月のあたたかさ。
午後、みかげ。みかげから元町へ。
亀井氏へ「哲学史」のプランをいってやる。
青木君へ『哲学辞典』八冊をわたす。
夜、「哲学史」のプラン。
『レ・コミュニスト(6)』を買う。
発信 亀井蔀
受信 古林喜楽 榊原美文
○二月十三日(土) 清 寒
午後、大阪の古本屋へ『世界哲学講座』をさがしに行く。なし。
夜、飜訳。この仕事は誰かに手傳ってもらいたい。
『朝日』に『哲学小辞典』の広告が出ている。
発信 大村清純 布川角左衛門 山崎正一
受信 大村晴雄 布川角左衛門
○二月十四日(日) 曇 寒
休養。午後、風呂。
誕生日。夜、お祝いをして酒をのむ。疲れが出る。
亀井氏、何もいってこない。『世界哲学講座』もみつからない。法律文化社の方はいささか行詰りの形である。
夜、飜訳。この仕事は誰かにまかせる。そして、法律文化社の三つの仕事に集中する。
○二月十五日(月) 晴 寒
午後、みかげ。陸井氏にあう。コーンフォースの件。
夜、飜訳。とにかく第一部だけ訳すことにする。今週中に終る。來週から『現代の思潮』の原稿にかかる。「哲学史」は二月中案をねって、三月から交渉をはじめる。
この頃、なんだか不愉快である。身体の具合もよくない。ねていて、このまま死んでしまったらいいと考えることもある。
発信 井上庄七
受信 今泉三良
○二月十六日(火) 曇後雨 寒
午後、六甲。元町の本屋。『世界哲学講座』をさがして歩いたが、なし。
夜、飜訳。
少し咳が出る。
発信 法律文化社
○二月十七日(水) 曇 寒
午後、大阪。創元社。『辞典』十冊うけとる。民科。哲学部会。政禁法のことなど。
『世界哲学講座』、山本晴義氏のところにあり。
『入門』増刷。二十五日にでき。
夜、雜用。
発信 亀井蔀
受信 野島義一 今泉三良
○二月十八日(木) 曇 寒
午後、みかげ。法律文化社の本につき井上庄七氏と相談。
齋藤氏、中央大学へ行くこと、公然化。
夜、『西洋哲学入門』の編集をする。
受信 布川角左衛門 井上庄七
○二月十九日(金) 曇 寒
午後、紘一郎をつれて寶盛館で漢和辞典を買う。みかげへ行く。井上氏、堀氏にあう。法律文化社の本の件。
山本氏から電報。民科の明日の打合せとりやめ。
三一の項目うけとる。
夜、『西洋哲学入門』の参考書を入れ、「あとがき」を書く。
○二月二十日(土) 晴 暖
一日休養。
法律文化社から原稿用紙來る。十五冊。
午前、『西洋哲学入門』の原稿を法律文化社へ書留で送る。
ギゴクと汚職。吉田内閣もつぶれていい頃である。
夜、手紙を書く。
発信 亀井蔀 山元一郎 山本晴義 大阪向陵会 神戸市衛生局
受信 亀井蔀 大阪向陵会
○二月二十一日(日) 曇後小雨 寒
今日も休養。いくらか休まったようである。仕事の切れ目。
吉田内閣、疑獄問題でつぶれそう。
夜、雜用。
○二月二十二日(月) 晴 寒
午後、みかげ。のち、元町へ行く。
二日休んだので、割合に気分がいい。
夜、飜訳。
法律文化社の方も一応道がついた。
○二月二十三日(火) 晴 暖
午後、みかげ。伊藤氏の話によると、『大阪新聞』に『哲学小辞典』の批評が出ていたという由。えらいほめてあった由。
夜、風呂。
民科の原稿は後廻しにして、三一、平凡社の辞典を先にすること。
夜、飜訳。第一部、終り。これで飜訳はやめ。面白くない仕事である。
受信 山本晴義
○二月二十四日(水) 晴 暖
午後、大阪。創元社。再販は三月三日出來の由。民科、『現代の思潮』打合せ。のち、哲学部会。
夜、雜用。
受信 山元一郎
○二月二十五日(木) 晴 暖
午後、元町、第一銀行。みかげへ。みかげからまた元町へ。山本英一氏のところへよる。平凡社の原稿の件。
夜、三一の原稿、書きはじめ。
発信 西野顯 亀井蔀
受信 山元一郎
○二月二十六日(金) 曇小雨 暖
午後、みかげ。五時、毛沢東研究会の打合せ。休み中『実践論』をやることにする。
小宮山氏から手紙、コーンフォースの件。
亀井氏、なんともいってこない。
夜、手紙を書く。三一の原稿。
発信 小川太郎 小宮山量平 矢内原伊作
受信 小宮山量平
○二月二十七日(土) 曇後雨 暖
休養。午後、風呂へ行く。散髪。
『出版ニュース』着。わが著書を語る。
二月としては気象台はじまって以來のあたたかさ。
明日京都へ行く。
夜、三一の原稿。
受信 出版ニュース社
○二月二十八日(日) 晴 羹
午後、京都へ。立命館へ行く。民科哲学部会。のち、法律文化社の本について相談。亀井氏、梯氏、細野氏、山元氏等といっしょに東洋亭へよる。おそくなり、十二時家へつく。
民科哲学部会の会合は七日(亀井氏)。コルニュはパス。経濟部会の件も大体可。金は七日にもってくる。
梅本克己、立命館へ來る。
夜、雜用。
インドシナへの日本人出兵の要請。
受信 亀井蔀