○五月一日(土)  晴 暖

メーデー。

午後、新開地へ行き、「ママの日記」をみる。盛り場を歩き、少し気分が轉換した。

夜、原稿。字典の原稿はしんどい。

発信 出隆

受信 矢内原伊作 遠藤愼一

 

○五月二日(日)  晴 暖

午後、風呂。散髪。床屋値下げ、一〇〇円也。

コーンフォースの広告が『図書新聞』に出ている。「愈々発売」、だがまだ來ない。

『思想』は「哲学の新しい任務」、『理想』は「新しい哲学の潮流」。

私鉄スト第三波。

夜、原稿。

ジュネーヴではアメリカ敗れたり。

発信 井上庄七

受信 井上庄七 日文協

 

○五月三日(月)  雨 冷

一日中家にいる。

ダレス、孤影悄然とジュネーヴを去る。

『理想』の広告が『読書新聞』にでている。

三、四、五、日哲大会。

夜、原稿。カントとフィヒテを書く。

桃李ものいわず下自ら径をなす。

受信 平凡社

 

○五月四日(火)  晴 冷

午後、みかげ。

夜、原稿。フィヒテ、ユンガーを書く。ヒルティ、サマヴィルをのぞいて全部終了。七五枚(二〇〇字)。

発信 堀喜望 井上庄七

受信 山崎正一 関西哲学会

 

○五月五日(水)  曇 冷

午後、大阪。定期の延期三日間。山本君のところへ行く。留守。笹川君のところへより、いっしょに海道さんを訪う。こどもの日で人出多し。

人びとは連休ボケのようである。仕事は一週間停止。連休はよくない。

夜、平凡社の原稿見直し。

日文協(本部)にはもう協力しない。

「イリヤ・エレンブルグ」を書く。二枚也。

発信 永積安明

 

○五月六日(木)  小雨 冷

『思想』着。割合に面白い。

午後、みかげ。雜用をはたす。丸善へ行き、インクを買う。

平凡社へ原稿を送る。

身体の具合は一時よりはよくなった。

青木君からコルニュの原稿をうけとる。

「サマーヴィル」を書き、平凡社へ送る。

夜、三一の原稿。

受信 キネマ旬報社

 

○五月七日(金)  曇 冷

午後、みかげ。五時―八時、毛沢東研究会。

仕事は九九パーセントまでは予定よりおくれるものである。予定通りいくのは例外である。

『教育タイムス』着。

夜、三一の原稿。

発信 林直道

 

○五月八日(土)  晴 暖

午後、阪神会館でニュースをみる。メーデーとスポーツ。

ディエンビエンフー陥落。

五月もピンチではあるが、四月よりは気分もらくである。

『理想』もでない。コーンフォースもこない。連休のたたり。

夜、三一の原稿。

他に神戸大学哲学科をまとめうる人ありや。

受信 出隆

 

○五月九日(日)  雨 暖

午後、三の宮へ行き、定期を買う。みかげへ行く。日文協の支部總会。のち、天治で懇談会。八時終了。永積、榊原、南波氏等。

夜、三一の原稿。

発信 亀井蔀

 

○五月十日(月)  晴 暖

午後、大阪。教育タイムス社、創元社へよる。山本君のところへよる。また夕食のごちそうになる。

古林さんのいやらしさ。見えすいている。しかしもう「またか」と思うだけである。

夜、三一の原稿。

受信 母

 

○五月十一日(火)  晴 暖

休養。疲れも一時より去り、いくらかさっぱりとした気持になる。風呂。

夜、三一の原稿。

国際狀勢、国内狀勢、今年は大きく変る。もう変りはじめている。ラニエル内閣、吉田内閣がつぶれたら、その影響は深刻である。

発信 鈴木照雄

 

○五月十二日(水)  晴 暖

午後、みかげ。青木君に会う。明日の打合せ。齋藤信治來ている。みかげから大阪へ。榊原さんに会う。民科、哲学部会。

『理想』五月号出來。コーンフォース、普及版、店に出ている。

中村九一郎氏の話。名古屋の件。

夜、青木君の原稿を見る。

発信 竹内良知

受信 平凡社

 

○五月十三日(木)  晴 暖

午後、みかげ。青木君といっしょに京都へ行く。法律文化社。亀井氏、不在。旭丘中学問題のため。河原町を歩く。

「芭蕉について」、かえってくる。すぐ理想社へ送る。

コーンフォース、発送した由。

夜、三一の原稿。計三六枚(四〇〇字)。

『理想』二部着。

発信 理想社

受信 理論社

 

○五月十四日(金)  雨 暖

午後、みかげ。毛沢東研究会。

普及版、三部着。

夜、強風。またも停電。

陸井君に原稿をわたす。

田口氏から『論理学』の寄贈あり。

 

○五月十五日(土)  晴 冷

午前、西野氏きたる。創元社のストライキ。

午後、神戸へ行く。元町書房、海文堂へよる。コーンフォースはよく売れる由。

夜、雜用。「モーリス・コーンフォース」(二枚)を書く。

発信 芦屋税務署 関西哲学会

 

○五月十六日(日)  曇 冷

普及版、一〇〇部着。

午後、大阪。東高校。日文協大阪支部總会。近藤氏來る。

夜、雜用。

受信 鈴木照雄 木本幸造 亀井蔀

 

○五月十七日(月)  曇 暖

午後、笹川氏のところへ「普及版」十冊もっていく。山本氏の所へ行く。八冊。夕食のごちそうになる。八時去る。

『新女性』に『弁証法入門』の書評が出ている。簡單だが、要をえている。

夜、雜用。

発信 鈴木照雄 今泉三良 理論社

受信 理想社 堀喜望 今泉三良

 

○五月十八日(火)  晴 暖

午後、元町。みかげ。小川君に会う。

夕食後、西野きたる。

夜、風呂へ行く。コーンフォースをはじめる。

経濟的なピンチ。しかし、ここを突破したら、大体やって行けそうに思う。

発信 永積安明

受信 永積安明 成田日出雄

 

○五月十九日(水)  曇 暖

午後、大阪。創元社へより、西野氏に会う。民科へ行く。哲学部会。盛んである。山本氏缺席。

夜、雜用。

受信 竹内良知

○五月二十日(木)  曇 暖

休養。疲れあり。

夜、飜訳。

名古屋の方を積極的にやってもらうこと。この方がよさそうである。神戸より名古屋の方がいい。

発信 竹内良知 成田日出雄 山本晴義

受信 理想社 濵田康佑

 

○五月二十一日(金)  曇小雨 暖

午後、元町。海文堂へよる。原稿をわたす。コーンフォースの件。みかげへ行く。五時―七時、毛沢東研究会。

山本晴義。しごく善意ではあるが、たよりない。

名古屋の件。積極的に考える必要あり。

夜、飜訳。

発信 横田三郎

受信 成田日出雄

 

○五月二十二日(土)  曇 寒

午後、京都。関西哲学会へ行く。野田又夫氏の講演を聞く。野田氏に会い、原稿の件をたのむ。梯、武内、三宅氏等に会う。九時、家へつく。

山本氏もたよりない。

名古屋の件。明日中村氏にたのむこと。

関西哲学会、兵庫縣委員、片山、高坂。武市落つ。神戸大学のまとまりの悪いことを示している。

夜、雜用。疲れ。

 

○五月二十三日(日) 曇 冷

午後、大阪。森の宮の労働会館へ。民科支部大会へ。八時終了。約四十人。

名古屋の件、中村氏から聞く。愛知大学の件。

神戸大学の件。他の人をとろうとすると、きわめて困難である。

夜、飜訳。

 

○五月二十四日(月)  曇後雨 暖

午後、元町。海文堂へ、コーンフォース二十冊もって行く。再版ができる由。創元社のストは解決した由。

夜、「アルプスの山の娘」を書く。四枚。すぐ送る。

いうぜんたる構え。

神戸大学の件。他の人をもってこようとすれば、きわめて困難である。人事委員には当然三田さんは入る。結局ぼくのところへ來るという見通しをもっている。それまでもたして行くこと。コーンフォース一冊で相当いける。

発信 理論社 母

 

○五月二十五日(火)  晴 暖

午後、みかげ。元町へ行く。井上幸治さんに会う。

夜、飜訳。

 

○五月二十六日(水)  晴 冷

午後、大阪。創元社へよる。民科。哲学部会。

山本晴義も至って善意であるが、隙が多すぎる。坂本君の方がずっといい。

理論社へ印紙のさいそくをする。

夜、雜用。

発信 小宮山量平

受信 亀井蔀

 

○五月二十七日(木)  晴 冷

午後、陽子をつれて新開地へ行く。途中富士銀行三宮支店へよる。聚楽館で「戦火のかなた」と「紅薔薇は山に散る。」を見る。

夕食後、珍しくよくねむる。

夜、雜用。

受信 林直道 日独文化の会、

 

○五月二十八日(金)  晴 暖

午後、みかげ。毛沢東研究会。

山本晴義は、ビジネスライクのようにみえて、ビジネスは全然ダメ。

どうもこの頃は面白くない。

名越氏から原稿をうけとる。

夜、飜訳。

発信 林直道

 

○五月二十九日(土)  曇 暖

午後、入浴、散髪。

小宮山氏から手紙。印税は六月はじめ。再版二千は六月上旬出來。

四月五月はまったく苦しかった。六月からはだいぶ楽になるだろう。

印税(コーンフォース)の計算。初版から引くもの、一万四千円。三万六千円から引くと二万二千円。再版、二万四千円。計四万六千円。

夜、飜訳。

発信 山崎正一

受信 小宮山量平

 

○五月三十日(日)  曇 暖

午後、神戸。元町書房、海文堂へよる。コーンフォースはよく売れている由。

夜、飜訳。

発信 小宮山量平

受信 名越悦

 

○五月三十一日(月)  曇 冷

朝、春雷。

午後、神戸。富士銀行。みかげ。青木君にあう。写眞。谷口恒男にあう。

ようやく五月が終る。

夜、飜訳。どうも飜訳は面白くない。しかし、コーンフォースをすませるまでは他の仕事にかかれない。当分これに専心する。

発信 常井直正 亀井蔀 日独文化の会、

受信 常井直正