○六月一日(火) 曇後雨 冷
午後、久しぶりで六甲へ行く。
「讀書新聞」に「思想」「理想」「理論」の批評がでている。ピンボケだが。
教育タイムス社から金がくる。この月はさいさきがよろしい。迷信めくが。
夜、飜訳。
受信 教育タイムス社
○六月二日(水) 小雨 冷
午後、大阪。創元社。西野不在。加藤氏とプラナへよる。民科。哲学部会。二〇人。盛んである。
夜、雜用。
受信 山崎正一
○六月三日(木) 晴 暖
午後、みかげ。笠井氏、三田氏等に会う。
国会大混乱。
コーンフォース、白井氏の方終ったよし。
夜、飜訳。一五九ページ以後約四〇ページを白井氏にかぶせる。ぼくの方はあと九ページ。これを最後に、今後飜訳はしない。性に合わない。
発信 小宮山量平
受信 小宮山量平 亀井蔀
○六月四日(金) 晴 暖
午後、海文堂。みかげ。毛沢東研究会。
理論社から金がくる。
『教育タイムス』着。
夜、飜訳。
昨夜のラジオは近來なく面白かった。リクツからいえば、社会党にもよくない所もあったが、感情的には痛快であった。
発信 理論社
受信 理論社 西野顯
○六月五日(土) 晴 暖
休養、風呂。
一万円以上まとまった収入は、三月はじめ以來三ヶ月ぶりである。よくもったものである。
夜、飜訳。ぼくの分は一九九ページのうち七二ページ。三割六分。
発信 名越悦 信濃毎日
受信 信濃毎日
○六月六日(日) 雨 冷
延世の友だち加藤さんきたる。
午後、高教組会館へ。日本文学協会の例会。元町で大江氏にあう。
夜、飜訳。
○六月七日(月) 晴 暖
午後、みかげ。
理想社から一年半前の原稿料を送ってくる。
夜、飜訳。Ⅸ Socialism and Communism 終り。これでぼくの受けもちは終り。二〇〇字で一〇五枚。
秋出る書物、コーンフォース、コルニュ、哲学史入門、哲学史概況、現代の思潮。
家庭の中で、つまらないことをブスブス、ネチネチいわれるのが一番不愉快である。
発信 理想社 理論社
受信 理想社 理論社
○六月八日(火) 晴 暖
午後、神戸。阪神でニュースをみる。国会の乱闘。定期を買う。
四月、五月にくらべたら、六月はいささか気分も楽である。
夜、コーンフォースの「訳者のあとがき」を書く。
昨日、ねむって夢を見た。
○六月九日(水) 曇 冷
午後、大阪。民科。哲学部会。
夜、手紙。原稿を荷造り。
発信 山本晴義 亀井蔀 白井泰太郎
受信 山本晴義
○六月十日(木) 雨 寒
午後、みかげで原稿を理論社へ送る。送料、六四プラス三五で九九円。元町へ行く。海文堂へよる。大丸で雨靴を買う。
コーンフォース、一段落。もう飜訳はしない。
ニューヨーク株、四年ぶりの大暴落。
吉田政権、破局にいたるだろう。
夜、雜用。「女性に関する十二章」をよむ。一仕事おえたので、しばらくのんびりすごす。つぎの仕事は『哲学史概況』の原稿二つ。
理論社が正確に印税を拂えば、八月までいける。収入予定五万円。再版が出たら、初版の分を清算してもいい筈である。
○六月十一日(金) 晴 暖
午後、みかげ。毛沢東研究会。
夜、雜用。『思想』をよむ。
矢内原氏、原稿を法律文化社へとどける。
発信 図書新聞社 矢内原伊作 西野顯
受信 図書新聞社 矢内原伊作 創元社
○六月十二日(土) 曇 暖
午後、大阪。民科。哲学部会の専門部会。約十人。上林氏に会う。
旭屋にコーンフォース再版がでている。
『日本文学』に『弁証法入門』紹介がでている。
『哲学入門』の初校、ようやく來る。二四〇ページ。
ラニエル内閣不信任。
夜、『女性に関する十二章』讀了。ふざけているようで、真面目である。精神分析を使っている。
発信 亀井蔀
○六月十三日(日) 晴 暖
休養。延世、陽子、映畫を見に行く。
風呂へ行く。
「ユーモア劇場」最終回。
コーンフォース、第二巻、もう印刷にかかっている。案外早くできるかも知れない。
夜、『世界』をよむ。
四、五月の苦しさにくらべ、六月は少し楽になった。そのためか、少しのんびりした。また、ペンでかなりやっていけるという見当もついた。
発信 理論社
受信 理論社 西野顯
○六月十四日(月) 雨 冷
午後、みかげ。齋藤氏に会う。岡田氏の件。堀、青木、杉之原氏と会う。立命の件。
『レ・コミュニスト(7)』の寄贈あり。
夜、校正をする。
受信 名越悦
○六月十五日(火) 晴 暖
午後、神戸。朝日会館で「ボルジア家の毒薬」をみる。
缺陥は神大Sにある。Sにたいしては、はなはだしい不滿をもっている。
夜、校正をみる。
受信 醇郎
○六月十六日(水) 晴 暖
午後、大阪。民科。哲学部会。
山本氏のいうように、神大Sはけしからん。社会民主主義に外ならない。
夜、雜用。
発信 濵田康佑 岩崎武雄 亀井蔀
受信 星野元豊 濵田康佑 今泉三良
○六月十七日(木) 晴 暑
午後、大阪。創元社。西野氏不在。田代氏に会う。
たしかに神大Sがけしからん。社会党右派ぐらい。
理論社、だまっている。
夜、校正をみる。
自分の仕事にたいする自信をもたねばならない。哲学ではぼくが一番活溌に仕事をしている。自信と自慢とはちがう。
発信 星野元豊
受信 西野顯
○六月十八日(金) 曇 暖
午後、海文堂。みかげ。毛沢東研究会。
理論社の速達を出す。
マンデス・フランス氏信任。
夜、校正。
神大Sのだらしなさ。どういう問題をとり上げるべきかを知らない。高い視点がない。たたかいをさける。社会党以下。
発信 理論社
受信 母
○六月十九日(土) 雨 冷
午後、風呂。
理論社から校正がくる。こちらからいってやったことは知らん顔をしている。
夜、『西洋哲学入門』の校正を見終る。
○六月二十日(日) 雨後晴 暖
午後、笹川君のところへ行く。いっしょに山本君のところへ行く。上林氏の件、立命館の件。
理論社、無言。
夜、校正の見直し。
○六月二十一日(月) 晴 暖
午後京都。四時半、法律文化社。こんどは立派な部屋である。亀井氏と東洋亭へ行く。樺さんにあう。八時去る。十時家へつく。
理論社はけしからん。本も送ってこない。もちろん金も。Sのだらしなさ。このことも念頭を去らず。
夜、雜用。
発信 林直道
○六月二十二日(火) 雨 冷
午後、みかげ。みかげから吹田へ。醇郎のところへ行く。
夜、コーンフォースの校正を一気にみてしまう。内容も訳もよくできている。すぐ発送。
コーンフォース、第一巻の印税は、七、八、九、それぞれ初旬に分割拂い。
受信 小宮山量平
○六月二十三日(水) 曇 冷
午後、大阪。創元社。六時、天五のベビーへ行く。哲学部会のコンシン会。九時すぎ散会。十九人。
コーンフォース、校正きたる。書物三冊着。
總評の講座の件。
家へかえると、グズグズいわれるので不愉快である。
夜、校正をみる。
○六月二十四日(木) 晴 暖
午後、みかげ。小川君に会う。例の件。
Sにたいする不滿の爆発。
夜、校正(第三部の終りまで)をみる。すぐ理論社へ送る。
周恩來とマンデス・フランスの会談、周恩來とネールの会談。歴史の舞台はかわった。遠からず大きな変化がくるであろう。アメリカはそっちのけ。日本だけがおくれていて、バカげて話しにならない。
発信 小宮山量平
○六月二十五日(金) 曇小雨 冷
午後、海文堂。コーンフォース、売切れ。元町で切れたので、急に売れ出した由。御影へ。青木君にあう。コルニュから返事がくる。毛沢東研究会。
神戸大学は悪いことを、しかも非常に悪いことを、人道にもとることをした。この点をとばしたら、すべてがナンセンスである。
発信 亀井蔀 名越悦
受信 鈴木亨
○六月二十六日(土) 雨 冷
午後、大阪。民科。哲学部会専門部会。流会。山本君のところへ行く。不在。笹川君のところへ行く。不在。海道さんのところへよる。
夜、雜用。
発信 岩崎武雄
受信 岩崎武雄
○六月二十七日(日) 曇 暑
午後、風呂。井上さんきたる。
緊張から弛緩へうつってきたような気がする。夕食後ねると、長くねてしまう。
一般教官は別として、Sにたいしてはきびしく批判せねばならない。
夜、『教育タイムス』の原稿「伝記(電気)洗濯器」を書く。四枚。すぐ送る。
神戸へ來てから五年になる。苦難の五年であった。しかし、人の苦しみというものが理解できるようになった。とにかく、神戸大学の罪悪は徹底的に追及しなければならない。
○六月二十八日(月) 曇小雨 暑
午後、みかげ。みかげから武庫之莊。山本君のところへ。雜件。
神戸大学の考え。復歸が不可能であるから、どこかよそへ行ったらどうかということ。しょってるというものである。ぼくの地盤は大阪にある。大阪の教師は知性がない。八百屋や魚屋に劣る。
高木氏から原稿着。
夜、ルカーチをよむ。面白くない。
四、五月にくらべれば、六月は気分も楽になり、割合よくねむれて顔付もよくなった。四月五月は全く苦しかった。コーンフォースで救われたようなものである。
発信 高木正孝
受信 鈴木三郎
○六月二十九日(火) 雨 暑
午後、元町。海文堂へよる。『史的唯物論』十五日出來の通知あり。
コーンフォース、校正、終りまでの分着。
神戸大学も、悪いことをしておきながら、頬かむりですごそうというのは虫がよすぎる。吉田に同じ。
夜、校正をみてしまう。発送。
三十日午前三時半―四時、床下浸水。大雨、つづいて雷。
受信 成田日出雄
○六月三十日(水) 曇小雨 暑
午後、大阪。創元社。西野氏に会う。民科、哲学部会。
西日本、大水害。
社会党にたいするもどかしさと同じものをSにたいして感じる。Sは社会党なみというところ。
夜、雜用。