【一九五五年】

○一月一日(土)  晴 暖

午前一時、母死去。

林氏、朝立つ。

笹岡一氏、長田明(畔)夫氏等來る。葬式五日の予定。

 

○一月二日(日)  晴 寒

朝、隣家を廻る。集ってもらう。葬儀の日取り決定。五日正午。

としさん、みきじさん、益郎氏等きたる。

和郞、○(火)葬の交渉。

のぶよ午後一時來る。

 

○一月三日(月)  晴 寒

午後、納棺。百枝、和郞、畔夫氏、美㐂治氏といっしょに上諏訪の火葬場へ行って、火葬に附す。

証子さん、純子ちゃん來る。

南信に死亡広告を出す。

零下十度。室内で零下五度。

 

○一月四日(火)  晴 寒

隣組がきて明日の用意。

朝、平林正二郎氏來る。

細谷昂來る。

朝、零下十一度七分。今冬の最低。

 

○一月五日(水)  雪後曇 寒

母の葬儀の日。早くから隣組、弔問客きたる。午後一時から葬儀。平林ますさんの弔辞等。のち、埋骨。家へかえってから法事。与平、和郞、酒乱に及ぶ。

昨日にくらべればだいぶ温度が高い。とにかく葬式がおえてよかった。

 

○一月六日(木)  曇小雪 寒

お寺へお禮に行く。

百ヶ日の法事をくり上げて営む。

昂午後九時のバスで去る。

としさん泊る。手傳って貰う。

家中で写眞をとる。これだけ集ることはめったにないので。

 

○一月七日(金)  晴 寒

今日から後始末、整理。

午後、ちのへ行く。陽子へ金を送る。

一美が家をかしてくれという話。

夜、禮狀葉書の表紙を書く。

発信 井上増次郎 小松陽子

 

○一月八日(土)  晴 寒

今朝零下十三度三分。ただし、スワ測候所だから、ここはもっと寒い。

平林正二郎、墓参りにくる。

午後、隣家を廻る。

夜、新家へ行く。田畠の件等。

証子さん、純子ちゃん去る。

ウォール街暴落。大兇慌のはじまりであろう。

六日にとった写眞出来。

これからの者は元気でいなければならない。老人の方へひっぱられてはならない。若い人といっしょにならなければならない。

発信 亀井蔀 靑木靖三

 

○一月九日(日)  雪 暖

美㐂治氏來る。

朝、和郞去る。午後、百枝去る。

午後、笹岡一、伊藤勝之氏のところへ行ってカタミをとどける。一美氏のところへよって家の話。

夜、葉書の表紙を書く。雪がふって暖い。

 

○一月十日(月)  晴 暖

片づけの一日。

一美來る。家の件。

ワチ公去る。

 

○一月十一日(火)  晴 寒

朝、醇郎去る。

片づけ。荷物の発送等。

午後五時のバスでちのへ。竹内さんのところへよる。延世といっしょに竹村さんのところへ。夕食のごちそうになる。午後九時四十二分ちの発で立つ。松本まで行く(十一時半)。

 

○一月十二日(水) 晴 暖

松本で土産物を買う。零時四十二分松本発準急にのる。五時四十分名古屋着。六時十分名古屋発。十一時半大阪着。正午本山着。久しぶりで家へかえる。子供たちも元気。

午後、風呂へ行く。

雜用をする。雜用多し。

郵便物沢山きている。年始狀約七〇枚。

発信 笹川儀三郎 理想社

 

○一月十三日(木)  晴 暖

午後、みかげ。笠井、永積氏等にあう。小川君とユーハイムへ行く。

井上さんのところへ行く。立命の件。

隣家への禮狀を出す。

定期三ヶ月分を買う。

夜、雜用のつづき。

今年のはじめからいやなことがあった。しかしがっかりしないこと。勇気をもって。狀勢は有利なのだ。

発信 林省吾 竹内良知 醇郎 政界往來社 橋倉武人

受信 清水正德 政界往來社

 

○一月十四日(金)  晴 暖

午後、みかげ。山元一郎氏に会う。今井さんに挨拶。

延世、風邪。

林省吾氏への御禮五、〇〇〇円を送る。

『レ・コミュニス(ママ)(10)』の寄贈。

夜、またも雜用。

発信 山本晴義 三一書房 平凡社 ちの郵便局

 

○一月十五日(土)  曇 寒

午後、元町へ。海文堂へよる。新開地を歩く。

夜、雜誌をよむ。

発信 甘粕石介 亀井蔀

 

○一月十六日(日)  晴 寒

寒波襲來。夜、室内五度。

風呂、散髪。

のぶよ、風邪。やはり、スワの葬式という無理の結果。

立命の問題。梅本克己との関係か。

夜、コーンフォースの改訳。仕事はじめ。

梯・梅本ラインによる妨害か。

神大Sもたしかに良い方へ変ってきた。

 

○一月十七日(月)  曇 寒

午後、大阪。大阪から山元君のところへ。七時半辞す。

夜、コーンフォース訂正。なおすところは余りない。第一部をおわる。

武市の問題。山本氏の問題。少しゆすぶってやれ。アクティヴに。Sの変化。批判の出たことと輿論の動きの結果であろう。

発信 服部英次郎

受信 服部英次郎

 

○一月十八日(火)  晴 寒

午後、みかげ。みかげから三の宮へ行く。東亜劇場で「鉄路のたたかい」を見る。余り面白くはない。

夜、コーンフォース。

発信 夏目しづ 醇郎 亀井蔀 理論社

受信 夏目しづ 醇郎 甘粕石介 花田謹一郎 伊藤純夫 林省吾

 

○一月十九日(水)  晴 寒

午後、大阪。四時、民科。講座の件。六時半から哲学部会。立命の件。

三十日、名古屋へ行くことになる。講座の件。

七轉び八起き。引きさがったらそれで終り。

受信 小松与平 矢島吉 黒崎文子 関西哲学会 出隆 茅野郵便局

 

○一月二十日(木)  雨後曇 寒

午後みかげ。堀さんに会う。丸善へ行ってインクを買う。

夜、手紙を書く。

森さんの話。急所をつく。

立命。少くも時間講師ではいける。

この一週間雜用が多かった。まだ残ってはいるが、だいぶ片づいた。

久しぶりで今日は若干のどかな気分になった。四月からはどうにかなるだろう。

発信 伊藤義夫 茅野郵便局 出隆 竹内良知 小松与平 矢島羊吉 黒崎文子

受信 キネマ旬報社

 

○一月二十一日(金)  曇 寒

午後、みかげ。山元氏、靑木君といっしょに三宮へ行く。ユーハイムによる。みかげにかえる。「哲学研究会」。今日から『史的唯物論』をはじめる。約十五人。歴史の学生が多い。

志賀義雄、大阪に現る。そういう條件ができたことは重要である。

夜、コーンフォース。

どうやら全体として運が向いてきたという感じである。僅かではあるが。時間講師でもいいし、自分の本を教科書として使うという方法もある。幸いに書物はいくつもできている。立命館法学部がどうであるか、一つの期待である。

人文学園の話。Sがしっかりさえしていたら、神大でも少くも時間講師は可能な筈である。

発信 保坂○夫 亀井蔀 太田光子

受信 長?慧子 亀井蔀 太田光子

 

○一月二十二日(土)  曇 寒

午後、大阪。創元社へ行く。保坂氏に会う。ジャスミンによる。

夜、「私のすいせん本」を書いて送る。コーンフォース。

発信 図書新聞社

受信 理論社 図書新聞社

 

○一月二十三日(日)  晴 暖

休養。風呂へ行く。

千代の山優勝。

『唯物論と弁証法』一月十五日発行一部着。

『唯物論と弁証法』改訳、一応終り。

受信 服部英次郎

 

○一月二十四日(月)  晴 寒

午後、みかげ。クガイのところへ行く。クガイが一番ファイトがある。

衆議院解散。

夜、葉書をかく。コーンフォース見直し。理論社へ送る。

発信 清水正德、服部英次郎、理論社、野島義一 米沢村役場 野田文夫

受信 野島義一 ちの郵便局

 

○一月二十五日(火)  曇 寒

午後、京都へ行こうと出かけたところへ橋(後)から祐二郞がかけてくる。亀井から、キユウヨウデアエヌとの電報。一旦家へかえる。小路郵便局へ行く。恩給まだきていない。みかげへ行く。元町へ行く。海文堂へよる。

理論社から金がくる。

発信 亀井蔀 理論社

受信 理論社 平林ます、

 

○一月二十六日(水)  晴 寒

午後、小路郵便局へ行く。恩給をうけとる。御影の神戸銀行へよる。元町まで行き、特急で大阪へ行く。民科、哲学部会。中村氏の報告をきく。

三寒四温。夜、雪がふる。

木の葉がおちて肥料となる。そんな気がする。母のこと。

これだけ大勢の人が盡力してくれているので何とかなるだろう。一年前には見られない現象である。少しでもかき集めるより外ない。

発信 讀賣新聞、池上謙三 溝口壽美子 甘粕石介 竹内良知 近藤勝彦

受信 平和新聞 讀賣新聞

 

○一月二十七日(木)  曇 寒

午後、京都。屋根の上に雪がつもっている。四時すぎ法律文化社へつく。もろもろの用件。「大名」で夕食。九時半家へつく。

夜、雜用。

発信 甘粕石介、中村九一郎、中村友枝、

 

○一月二十八日(金)  晴 寒

午後、みかげ。山元氏に会う。コーンフォース第三巻、靑木氏のところへ着。

五時から哲研。

夜、雜用。

二月から『現代哲学讀本』にかかろう。二、三、四月。

発信 平林ます

 

○一月二十九日(土)  曇 暖

午後三時、家を出る。五時半大阪発、名古屋行準急。九時五分名古屋着。近藤さんのところへ泊る。

 

○一月三十日(日)  晴 暖

午後、覚王山の天山莊へ行く。大井、平林、靑木書店の加藤がいる。あとから藤野、山元がくる。『哲学講座』の打合せ。一回ではすまない。十時終了。近藤さんのところへかえる。

 

○一月三十一日(月)  晴 寒

午前十一時半近藤さんの家を出る。午後一時名古屋発関西線準急。すいている。四時十分天王寺着。五時半家へつく。

大井正へ『神戸大学新聞』を送る。

『図書新聞』に「私の推せん本」が出ている。『哲学小辞典』を削ったのはけしからん。

受信 平林康之 伊藤義夫 服部英次郎 岩波書店