○二月一日(火)  晴 暖

休養。風呂。

夜、雜用。

甘粕さんの文章(『理論』)はつまらない。これでは科学者を納得をさせることは到底できない。

パージ以後三年半。よくも頑張ったものである。心理的に、生理的に疲れるのもむりはない。だが、狀勢は変ってきた。選擧で党が相当進出すれば、又変るだろう。

発信 近藤勝彦 小宮山量平

 

○二月二日(水)  晴 暖

午後、大阪。四時、民科。哲学講座の編集会議の報告。甘粕さんの論文の批評。哲学部会。

夜、雜用。

 

○二月三日(木)  晴 暖

みかげ。靑木、小川、笠井氏に会う。神戸大学は山元一郎に決定。

出さんから「ソフィスト・ソクラテス」來る。

夜、『現代哲学讀本』の原稿を書きはじめる。

発信 出隆

受信 出隆

 

○二月四日(金)  晴 暖

午後、みかげ。山元氏と会う。五時から哲学研究会。八時終了。

夜、原稿少し。

山元氏が神戸へくることは、立命館にとっては相当大きな問題である。あとをどうするかが問題である。

 

○二月五日(土)  晴 暖

午後、のぶよといっしょに大丸へ行く。香奠返しを依頼する。海文堂へよる。

今泉からアウグスチヌスの訳の寄贈あり。

マンデス・フランス内閣總辞職。

夜、原稿少し。

立命館で簡單に山元氏を手離すかどうか。

高尾、長倉も一本ぬけている。

山元氏の問題。簡單にいかないかも知れない。こじれるかも知れない。とすれば、そこにつけこむすきもある。

 

○二月六日(日)  曇 寒

午後、新開地へ行く。花月で「明治一代女」を見る。

この頃割合にねむれる。どういうわけだろうか。そう安心できる狀態ではないのだが。

夜、『世界』をよむ。急テンポで狀勢は変っている。

受信 米沢村役場

 

○二月七日(月)  雨 冷

午後、みかげ。阿部、長倉もダメ。たしかにみかげのSはたよりない。

夜、ハヴロフ(ママ)をよむ。

みかげのSはダメ、ダメ。ひどい無原則。いいのは陸井。九日には大いにしゃべってやろう。

この頃割合に肥えたような気がする。なまけて、ねてばかりいるから。それもよかろう。

発信 醇郎 今泉三良

 

○二月八日(火)  晴 暖

休養。風呂。体重四四キロ。

マレンコフ辞任。ブルガーニン後任。

大丸から香奠返しがくる。荷造りして発送。

夜、原稿。

全体として狀勢は明るくなってきた。もう一息という気がする。それまで経濟的にもたせることが大事である。

国際狀勢も国内狀勢も物すごい勢で変っている。この狀勢の変化に適応できなければならない。

マッカーサー追放はもう無効である。大学は一番鈍感なところだから、いつまでも古いことにこだわる。

発信 米沢村役場

 

○二月九日(水)  雨 暖

午後、みかげ。コーンフォース第三巻着。五時、長倉氏のところへ。九時終了。二週間前とはだいぶちがう。

夜、雜用。

 

○二月十日(木)  晴 暖

午後、大阪。明治校舎。林氏の報告をきく。

『弁証法入門』改訂版を出す由。

風邪気味。

小宮山量平が返事をよこさないのはけしからん。

夜、原稿。

発信 保坂富士夫

受信 保坂富士夫

 

○二月十一日(金)  曇小雪 寒

午後、みかげ。堀、陸井等に会う。山元氏の件。面白くなってきた。

五時―七時、コーンフォース。來週は休み、その次から再開。

又急に寒くなってきた。

風邪は昨日よりいい。

復歸問題が公然と出てきた。安藤孝行のいうことは筋が通っている。

小宮山のいうこともよく分らない。

発信 高島徳三 靑木靖三

受信 小宮山量平 小松与平

 

○二月十二日(土)  晴 寒

午後、創元社へ行く。保坂氏に会う。『弁証法入門』の改訂の件。ジャスミンへよる。

夜、『弁証法入門』の「改版へのあとがき」を書く。原稿、少し。

小宮山量平のいうことは少しおかしい。ヒステリーのようだ。あの訳は、缼陥はあるにしても、悪訳ではない。

受信 矢本貞幹

 

○二月十三日(日)  晴 暖

「改版へのあとがき」を送る。

午後、風呂、散髪。

藤野氏に明日会う。人事か、私用か。明日は誕生日。

夜、原稿少し。

文風委員会も、アカハタの文章をよくすることにでも努力したらよかろう。

大阪の方は段々足をぬこうと思っている。上林、甘粕に押えられるのはかなわん。

受信 藤野洋 太田光子

 

○二月十四日(月)  晴 寒

午後、みかげ。靑木君はコーンフォース放棄。五時、大阪。エー・ワン。藤野氏と会う。

誕生日のお祝い。

夜、原稿少し。

たしかに展望は開けてきた。

小宮山量平に肩すかしの返事を出す。

中村九一郎氏、名古屋へ行くことになるだろうとのこと。

発信 小宮山量平

受信 中谷あきえ 武内義雄

 

○二月十五日(火)  晴 暖

午後、みかげ。笠井さんとバンビへよる。六時、長倉氏といっしょに新野氏のところへ。

藤野氏のところへコーンフォースを送る。

靑木靖三は弱い環である。

平井潔の本をよむ。

客体的條件は一〇〇パーセントそろっている。主体條件の、Sの立ちおくれ。

発信 平山高次

受信 平山高次 創元社 佐古田宝之助 友繁健之助

○二月十六日(水)  晴 寒

午後、大阪。民科哲学部会。人数が少い。笹川氏に神戸の情報をはなす。

夜、雜用。

一応体制がととのって軌道に乘ったといえるだろう。あとは推進力の問題。

受信 三沢かつゑ 馬場てつ 溝口壽美子

 

○二月十七日(木)  晴 暖

午後、阪神劇場で「ここに泉あり」を見る。二本立で五時間もかかる。

夜、雜用。

発信 山元一郎

受信 山元一郎

 

○二月十八日(金)  雨後曇 暖

午後、京都。山元一郎氏から、人文学園の件、民科哲学講座の件、山元氏神戸大学辞退の件をきく。亀井氏不在。八時半家へつく。梯氏、細野氏にも会う。

夜、雜用。

民科哲学部会は神戸大学ボイコット。

たしかに狀勢は面白くなってきた。段々追いつめていくこと。

受信 小宮山量平 黒崎文子 樋口和博 河西てう

 

○二月十九日(土)  曇 暖

午後、みかげ。元町へ行き、海文堂へよる。

山元氏の件は、人事委員にとってもかなりの打撃にちがいない。

長倉君も鈍感なところがある。狀勢の急変にたいして少しも応ぜられない。

夜、『むらぎも』をよむ。

悠然とかまえていた方がよさそうだ。情勢は有利。もう神戸大学へは來てがない。

 

○二月二十日(日)  曇小雪 寒

昨夜から強風。雪が舞う。

風呂へ行く。井上さんへ行く。神戸大学は土台から考え直さなくてはならないということ。

夜、『むらぎも』をよむ。

受信 松本龍夫 木下佳壽

 

○二月二十一日(月)  晴 寒

非常に寒い。屋根の雪がとけない。

午後、みかげ。清水氏の話をきく。

夜、『むらぎも』をよむ。

室内五度。この間は十五度だった。

 

○二月二十二日(火)  晴 暖

午後、みかげ。小川君に山元氏の件をはなす。

夜、『むらぎも』をよむ。

神戸大学の狀勢は面白くなってきた。あけておくならとにかく、誰かをとろうとしても來てはない。山元氏の件は、今井氏等は余り明かしたくないだろう。恥ずかしいことだから。こっちからバクロしてやる。少し愉快である。

発信 図書新聞社 服部英次郎

受信 図書新聞社

 

○二月二十三日(水)  晴 暖

午後、大阪。民科。

夜、『むらぎも』讀了。

武市を追い出す。ぼくが主任教授になる。

鍵本でもを助手にする。これは今のところは夢。だが單なる夢ではない。実現可能であり、目標でもある。そこまで行ってはじめて神戸大学哲学科は安定する。そのためにも今は大事なときである。山元氏の場合のように急轉直下ということもある。

○二月二十四日(木)  晴 暖

午後、みかげ。五時半、天谷氏のところへ行く。山元氏の件。九時終了。

狀勢は面白くなってきた。時間講師の線まで出てきた。

夜、雜用。

発信 中村九一郎

 

○二月二十五日(金)  晴 暖

午後、元町。海文堂へよる。みかげへかえる。哲学研究会。八時終了。

『唯物論と弁証法』二月十五日発行一部着。印税はこない。

夜、『新しい性』をよむ。

教官のSは一本抜けている。学生、事務職員の方がずっといい。

解決の方法。武市を追い出す。ぼくが中心になって哲学科を再建する。そうすればいい哲学科ができる。そこまで行けば、小さい革命である。

 

○二月二十六日(土)  晴 暖

非常に暖い。

午後、子供二人をつれて阪急会館へ行く。「オズの魔法使」、子供向き。

哲学科の問題も、そうあわてることもあるまい。少し困らせた方がいい。それにしてもSのたよりなさよ。去年にくらべたらましだが。それも下からつき上げられたからに外ならない。Cが陸井になったらいくらかいいだろう。

おそく風呂へ行く。

理論社から五千円來る。のこりは、四二、五六〇円。

夜、雜用。

 

○二月二十七日(日)  雨 冷

午後、選擧に行く。みかげへ行く。日文協の例会。『むらぎも』について。

夜、選擧速報をきく。民主党優勢。

 

○二月二十八日(月)  晴 暖

午後、みかげ。

選擧の結果。

民185 自112 右社67 左社89(156) 労4 共2 諸2 無6=467

憲法改正は阻止しえた。

教官Sは全くたよりない。前衛の役割をしていない。学生、事務職員よりはるかに劣る。

志賀義雄いわく、「職場から追放された人たちの復歸に努力する。」党として当然やるべきことであったが、今迄は盲点のように忘れられていた。これはいいことである。国会で問題にされたら反動どもには相当こたえる。