○十一月一日(火)  晴 寒

午後、みかげ。五時から哲研。集り悪し。

小川君に会う。コンダン会あった由。工藤氏、頑張った由。

明日の森永、中止。

堀、教授になる。予想通り、部長との取引き。

小川君の話によれば、春よりは有利の由。四月には部長の改選がある。これがからんでくる。ジュニアーとにらみ合せ。

 

○十一月二日(水)  曇 寒

午後、ビ研。レントゲン写眞をうけとる。かなり悪い由。醇郎のところへ行く。いっしょに塩田さんの所へ行く。マイシンの注射をして貰う。

発信 勤労協 山本晴義 志水靖博、

 

○十一月三日(木)  晴 暖

昨日は家へかえってから専ら静養。パスをのむ。気分はいいようだ。

午後九時、七度五分。病気が発現してきた感じ。今迄は気力でおさえていた。いろいろの仕事とのつながりをたち切り、病気専一になる。問題は経濟。元來神戸大学が責任をもつべきである。遠くからよびよせたのだから、復歸が不可能としても、生活が困らない程度にはすべきである。人道問題である。

昨日からすでに治療期間に入っている。

ここにいること。兄弟もいるし、心配してくれる知り合いも多い。大勢の人の助けで生きていけるだろう。

発信 三浦すみ子 政界往來社

受信 大井正

 

○十一月四日(金)  晴 暖

朝も夜も七度五分。変らないのはおかしい。

重大事態だ。入院の件。

神戸大学の無責任。問題の根本はそこにある。古林学長の甚だしい無責任。少くも大学として、生活に困らないだけのことはすべきである。田中保太郎に至っては悪魔である。人間としての良心など求められない。

ぼくの病気を知って、学長、部長は㐂んだろう。

発信 大井正 小川政恭 靑木晴三

受信 小宮山量平 醇郎

 

○十一月五日(土)  晴 暖

朝、六度七分、夕方六度九分。

午後、杉原さんへ行ってマイシンの注射をして貰う。

和郞來る。

『唯物論と弁証法』再校全部きたる。

のぶよ、ビ研でレントゲンとる。

長い間の無理な生活、疲労、心労、睡眠不足がこういう結果になった。ここらで十分静養し、身体をたて直さねばなるまい。

発信 山本晴義

受信 山本晴義

 

○十一月六日(日)  曇 寒

熱は平熱。脈は八〇以下になった。治療開始後の経過は順調である。治るスピードも案外早いかも知れない。

午後、醇郎、薬をもってくる。

古林喜楽にヒューマニズムがあるかどうかのラスト・ケース。一かけらもあるまい。

山本晴義君も今日あたり來てくれればいいのに。用件は山積している。どうも大事なところがぬける。カンパの話も、八月に出ているのに、まだ手をつけてない。

 

○十一月七日(月)  晴 暖

早大優勝。

ぼくがねてから、小春日和がつづく。

夕方、小川君、青木君きたる。

『弁証法入門』の検印紙二、〇〇〇きたる。はじめからでは九千。

抗ヒスタミン剤の注射終り。

山本君もとんでくるべきである。カンの悪さ。事の軽重のつかない頭の悪さ。ビジネスのだらしなさ。山本君だけでなく、民科一般の特性である。

二年先を予想する。文学部長はかわる。六甲のボス教授数人が一齋に定年退職する。国際狀勢では、平和が戦争に勝つ。戦争政策のマヒ。日本も夜明け。

受信 創元社

 

○十一月八日(火)  晴 寒

延世、井上さんに会う。医療保護の件。

醇郎から速達。延世のレントゲン写眞、健康。

『哲学小事典』今日見本出来。印税外検印一五〇。

『唯物論と弁証法』の校正を見る。粗雑な訳になった。文学的センスがない。

延世、保健所へ行く。お役所式。冷淡。

病気そのものについては心配していない。正規の治療をしていれば治る。問題は経濟である。

発信 法律文化社

受信 法律文化社 醇郎

 

○十一月九日(水)  曇 寒

午前、井上さん來る。医療保護の件等。

午後、勤労協の加藤君來る。

マイシンの注射。

創元社へ検印紙を送る。

コーンフォースを見る。いい訳ではない。

治療開始後一週間。すべり出しは好調。熱も平熱。いくらか肉もついてきたようだ。

発信 創元社

 

○十一月十日(木)  晴 暖

延世、井上さんといっしょに安定所へ。生活保護の申請を出す。

山本君のこないのはおかしい。ザルで水をくむようなものである。

コーンフォースの校正を理論社へ送る。

たしかに肉がついてきた。

『哲学小事典』『弁証法入門』『コーンフォース』の三つが具合よくかさなってきた。コーンフォース第三巻も、今年中には出るだろう。

受信 醇郎

 

○十一月十一日(金)  晴 暖

『哲学小事典』來らず。

山本君來らず。

安定所の人來る。井上さん來る。

山本君はたしかに無責任である。いそがしいとはいっても何とか方法はある筈である。

井上さんから古林さんに連絡。古林さんはなんとかすべきである。頬被りでは甚だしい無責任である。責任をはたすべきである。学長のテスト・ケース。生活にこまらない状態(少くも二年間)はすべきである。少くもヒューマニズムがあったらすべきである。

発信 岡好賢

受信 岡好賢

 

○十一月十二日(土)  晴 暖

午前、延世といっしょに兒玉医院へ行く。マイシンの注射等。一週二回、火、金に行くことにする。医療保護でやってくれる。

延世、疲れが出たらし。七度。一段落つくと疲れが出る。

シッシン、少し悪い。

山本君の底ぬけの間抜けにはあきれて物がいえない。当然眞先にとんで來べきだ。そうでなければ方針が立たない。重原、関君等の方がはるかにいい。

古林㐂楽もくるべきだ。責任はある。

 

○十一月十三日(日)  晴 暖

小春日和。

山口さんの葉書によって、コンパの項の事情分る。またも山本君の失敗。甘粕氏のサボタージュ。

今日民科専門部会あり。今日の専門部会で相当の方針がたっただろう。もう甘粕、山本、笹川、山本にまかせておいたのではだめだ。連動しはしない。重原、川畑、岡、川瀬、山口へ中心をうつさなければならない。

神大Sも当然來るべきだ。同志愛がない。そこに根(本)の?問題がある。少くてもカンパでもするべきだ。可能なら、文化教室、日文協。

発信 山口栄子

受信 山口栄子 醇郎

 

○十一月十四日(月)  晴 暖

コーンフォース、第三巻、校正、一三〇ページまでくる。印税はこない。

朝、六度二分、夕方、六度五分か六分。平熱が續いている。食慾も出てきた。けだし、経過は順調である。

夜、校正を見る。余りいい文章ではない。

今週中に『哲学小事典』と『弁証法入門』ができるだろう。コーンフォース三冊は今年中に出るだろう。

 

○十一月十五日(火)  晴 暖

午前、兒玉医院へ行く。注射。先日の血沈、二六、六八。だいぶいい。

コーンフォース、第三巻、原書、藤野氏へ送る。

『哲学小事典』來らず。どうもおそい。山本君きたらず。当然來るべきだ。

熱は平熱。いくらか肉もついてきた。食慾も相当出てきた。経過は順調と見るべきであろう。二週間たった。全体として悪い兆候はない。

夜、校正を見る。

古林喜楽は悪人に達した。一度裏切ると救いようもない。堀㐂望はそこまではいけない。動揺している。

 

○十一月十六日(水)  雨 暖

久しぶりの雨。

午前、井上さん來る。

夕方、文化教室來る。午後四時、体温三六度五分、脈搏七十二。

夜、校正をみる。

シッシンへペニシリン軟膏をつけてみる。

今迄のところ、悪い兆候は何もない。いい兆候はいくつもある。熱が平熱になったこと、脈が平常になったこと。七十二は今日はじめて出た。パスをのんでいても、食慾が良いこと。太ってきたこと。御影へ通っても大したことはあるまい。

今日民科学習部会。相談があったろう。先日は専門部会は流会だったらし。甘粕、山本、も無責任である。

 

○十一月十七日(木)  晴 寒

午後、中島氏來る。

神大カンパの件。いつまでもなやませてやる。問題が解決するまで。神大は悪いことをしたのだから。それは当然うけるべき宿命である。それを免れるためには、復歸をさせるより外ない。

山本晴義も無責任だ。ノータリン。甘粕もおかしい。

午後四時、体温三六度三分、脈搏六十八。

北海道の炭鉱でレッド・パージの復職斗争をしている。

夜、校正をみる。

発信 亀井蔀

 

○十一月十八日(金)  晴 暖

午前、兒玉医院へ行く。

コーンフォース、校正、一三〇ページ、着。印税はこない。

食慾が盛んになってきた。マイシンが利いてきたのだろう。

夜、校正をみる。

受信 醇郎

 

○十一月十九日(土)  晴 暖

セルサム『哲学とは何か』の寄贈あり。

コーンフォース、第三巻は二分冊になる。二二七ページまでが上巻であろう。

午後、哲研の川島來る。

生活保護通る由、内々知らせあり。

夜、校正をみる。

国際狀勢には、地すべりともいえるほどの大変動がおきている。日本にもその影響はこない筈はない。

大阪の民科から誰も來ないのは全くおかしい。山本君も、こういう危機に動かないようではナンセンスというより外ない。

 

○十一月二十日(日)  曇 寒

ひる頃、省吾氏來る。

生活保護の許可來る。

夜、井上氏來る。

醇郎も和郞も変におしつけがましい。ヒステッリクである。陽子の気持をもみくじゃにするような発言は心なきわざである。

今日、大阪民科哲学部会専門部会あった筈。

『哲学小事典』昨日発送。

夜、校正をみる。

受信 法律文化社

 

○十一月二十一日(月)  曇 寒

省吾氏、風邪。

省吾氏に診察して貰う。打診では何も分らないよし。

午後、川西きたる。民科代表として。

延世、生活保護費をうけとりに行く。

『哲学小事典』未着。

コーンフォースの広告が『讀書新聞』に出ている。理論社はこの本に力こぶを入れている。恐らく売れるだろう。今年の中に四冊出す。

夜、校正をみる。

この機会に体質を改造することができる。

コーンフォースがうんと売れるといいが。その印税でやっていける位に。

シッシンも、アクゼンをつけたらどうやらいいようである。

 

○十一月二十二日(火)  晴 暖

午前、兒玉医院へ行く。

ひる、省吾氏去る。

『哲学小事典』十冊、ようやく到着。きれいにできている。

『弁証法入門』もたぶんできているだろう。

コーンフォース、校正、一三一―二二七ページ、理論社へ送る。

民科のカンパは神戸大学への痛烈な批判である。だが、神戸大学でそれを感じるかどうかは別問題である。

夜、セルサムをよむ。余り面白くない。

アクゼンがきいて、シッシンはいいらし。

 

○十一月二十三日(水)  晴 暖

暖い小春日和。しかし、休みの日はうるさくてかなわん。

病人が冷静で、周りの者がヒステリックである。病人がヒステリックになった方がいいかも知れない。

山本君も一度位は來てもいい。

人びとは押しつけがすきである。

セルサムをよむ。

発信 亀井蔀 保坂富士夫

 

○十一月二十四日(木)  晴 暖

『弁証法入門』二冊(第二版)着。はじめからでは九千。本は二冊出たが、金はいっこうにこない。

祐二郞、杉原医院で診察をうける。

夜、セルサムをよむ。

民科の救援活動は、單に経濟問題だけではない。それ以上の意味をもっている。神戸大学にとっては「耳がいたい」だろう。それが神戸大学にとっては薬だ。実際、神戸大学も歴史上前例のないひどいことをしたものだ。復歸運動がかなりシントウしているから、救援活動もうまくいくだろう。とにかく、何か問題が續いているのがいい。たえず押すことだ。

発信 古川雅章 靑木書店 山口栄子 小宮山量平

受信 靑木書店

 

○十一月二十五日(金)  晴 暖

うまく行った場合、生活保護、十万円。印税、十万円。カンパ、十万円。計三十万円。これで來年一年はもつ。そううまくはいかないかも知れないが。來年一年もてば、その間に工夫のしようもある。狀勢の変化もあろう。

午前、兒玉医院。天気のいいときは散歩してもいい由。

祐二郞、レントゲン、悪くない。一安心。血沈は少し多い。

セルサムをよむ。

来年は大変動が起るだろう。戦争政策のマヒ。恐慌。平和的共存。日本の夜明け。

今年は最悪の年であった。來年はいい年でありますように。どん底まで行けば、又上ってくる。

受信 三田博雄 林省吾

 

○十一月二十六日(土)  晴 暖

午後、井上さん來る。

ハタにコーンフォースの広告あり。かなり力こぶを入れている。

今日民科の救援委員会あった筈。

抗ヒスタミン剤の注射を又はじめる。

本屋は揃いも揃ってだまっている。

結核は苦痛はないが、シッシンの方が苦痛がある。

親類よりお他人の方がすっきりしている。

受信 岡好賢 醇郎

 

○十一月二十七日(日)  曇 寒

午後、岡君、山口さん來る。

『最新療養手帖』着。

シッシンよくない。

『療養手帖』をよむ。

創元社の保坂氏もなんとか発言すべきだ。理論社もよくない。やはり亀井君が一番良心的だ。

受信 亀井蔀

 

○十一月二十八日(月)  曇 暖

シッシン、よくない。パスの影響かも知れない。

『療養手帖』をよむ。

結核の方はつづいて良好。結核では苦痛はないが、シッシンの方が苦痛がある。足の方が悪い。パス―肝臓―シッシン、という関係があるかも知れない。

 

○十一月二十九日(火)  晴 暖

午前、兒玉医院へ行く。

『療養手帖』をよむ。

シッシン、左の足だけ特に悪い。どういうわけだろう。他はそう大したことはないのに。

受信 野島義一 岡好賢

 

○十一月三十日(水)  小雨 寒

フォール内閣崩壊。

大山郁夫氏死去。

たしかに太ってきた。シッシンはよくないが。

小宮山量平、何も云ってこない。

シッシン、とくに足が悪い。パスの影響があるかも知れない。結核より始末が悪い。もっともシッシンで死ぬことはないが。明日、延世、志水さんの所へ行く。

『療養手帖』讀了。だいぶ参考になった。