○四月一日（日） 雨 寒
又寒い。
夜、山口栄子さん來る。塾の件。山口さんが何故あんなに強情なのか分らない。民科内の対立か。しかし、そう心配した問題でもない。
雜誌をよむ。
○四月二日（月） 晴 暖
午前、兒玉医院。
人文学園の件。堀さんがうしろめたいところがあるのでやったことだろう。
今は病気を治すことを基本として考えるべきだ。その中狀勢も変る。將來の活躍に具えて身体をよく治すこと。今あせっていろいろのことに手を出す必要はない。又、動きすぎてつまづくことも禁物。
○四月三日（火） 晴 暖
午後、風呂。散髪。
○四月四日（水） 晴 暖
延世、陽子、大丸へ買物に行く。
とにかく当分気ままにすごすこと。
発信 甘粕石介
受信 甘粕石介
○四月五日（木） 晴 冷
午後、神戸。大丸で写眞をとる。海文堂へ行く。古川君に会う。今月中に流泉書房へ移る由。
『哲学史』編集。
人文学園の件。ことわったのは愉快である。堀さんもせめてもの罪ほろぼしのつもりだったろう。
○四月六日（金） 晴 暖
午前、兒玉医院。
『哲学史』の編集。
受信 服部英次郎
○四月七日（土） 雨 暖
岡君からはがき。明日委員会。速達で、解散したらどうかといってやる。そういう段階へ來た。本來の目的からそれてきた。川西が悪いことは分っている。山口さんも川西の口まねをしていてはいけない。
日本でも今年の中位にはなだれのような変動が起りそうだ。
山本君にも、人に信用されないだけの理由はある。
哲学史。
発信 岡好賢
受信 岡好賢
○四月八日（日） 雨 冷
一日中雨が降ってうっとうしい日。
委員会は解散すべし。そういう段階へきた。本來の目的をよそに、むだな議論をしている。
日本もセイロン島位には行ってもいい。
『世界』をよむ。
政界往來は流動狀態にある。日本だけが例外ということはない。やがて「なだれ」のような変化が起るであろう。
○四月九日（月） 晴 暖
午前、兒玉医院。
委員会をかき廻したのは川西である。川西がいなかったら今のような狀態にはならなかった。分派行動。
山本君も全くでたらめだ。山口さんのいうことにも一理はある。川西を信用している点はおかしいが。
花が一時に咲いた。
哲学史。
発信 山口栄子
○四月十日（火） 曇後雨 冷
午後、入浴。体重、十三貫四〇〇匁。
岡君もおそい。解散の申入れはどうなったか。非生産的な議論はよした方がいい。
ソヴェトの外交はあざやかだ。漁業問題。
哲学史。
とにかく今年中位はのんびりくらすこと。
日本は幕末のような狀態にある。世界の大勢にさからうことはできない。少くも、自民党の崩壊は期待できる。小選擧区法の審議未了。参議院選の敗北はそのきっかけになりうる。
受信 市河英彦
○四月十一日（水） 曇 暖
どうも退屈である。身体をもてあます。
セイロン島、人民戦線勝つ。地すべり的現象。日本でも十分起りうる。
帝国主義的支配の崩壊は嵐のような早さで進んでいる。日本でも、自民党の崩壊が始まったら、それは明治維新以上の変革の始まりとなるだろう。途中ではとまらないだろう。
哲学史。玉井茂の原稿をよむ。
発信 道家忠道 市河英彦 山本晴義
○四月十二日（木） 晴 暖
山口さんから薬がくる。山口さんは少しノイローゼになっているようだ。
夜、井上さんを訪う。
山崎氏、岡君はたしかにおかしい。山口さんのいうことにも一理はある。
『政界往來』着。
哲学史。服部氏の中世哲学。
発信 山口栄子
受信 山口栄子
○四月十三日（金） 晴 暖
午前、兒玉医院。
陽子の件。
醇郎から手紙。療養のはじめから、いろいろの人がいろいろのことを云ってきて全くうるさいことだ。聞く方は一人だからかなわん。
自明（ママ）党の空中分解も近そうだ。この一、二ヵ月が大事だ。
セイロン新内閣成立。日本でもこの位には行っていい。
僕が何を考えているかは誰も知らない。誰にも分らない。ヒステリーを起せる人間は幸福である。
発信 神戸大丸
受信 醇郎
○四月十四日（土） 晴 暖
午後、井上さんの所へ行く。醇郎の云ってきた件。庫本さんへよる。
山本君の底ぬけにも困る。
服部氏の原稿をよむ。面白くない。
去年の十一月にくらべたら、病気も経濟も随分好轉した。はるかに明るくなった。このことはしっかり認識しなければならない。
バンドン会議後一年間の世界の変化は全くめざましい。今後一年間では又どのように変るだろうか。
イールズ・レッドパージの問題は、正面からとり上げられる時が必ずくる。全国的に。
発信 山本晴義 醇郎 井上庄七
○四月十五日（日） 晴 暖
午後、室内二五度。六月のあたたかさ。
山本君も岡君も、速達を出したのに何ともいってこない。とにかく、だらしないのには困る。科学研究費の件も、もう〆切をすぎたろう。
『図書新聞』着。ぷらすまいなす。
山本君のやることは悉く失敗といっていい。あいそがつきる。山口さんのいうことも尤もだ。
身体の改造に近い変り方である。十年位若返ったようだ。ともすれば、一年や二年療養に使っても何でもない。しかも、その間がゼロというわけではない。
哲学史。
○四月十六日（月） 晴 暑
午前、東灘保健所。レントゲン写眞をとる。兒玉医院。
いま気にしているのは科学研究費の問題。多分〆切がすぎたろう。それにしても山本君はけしからん。余りにもだらしがなさすぎる。病気だったからやむをえないと諦めるより外あるまい。
あわてる必要はない。エネルギーを養っておくこと。
哲学史。
受信 神戸大丸
○四月十七日（火） 晴 暖
大丸から写眞がくる。一枚を野島さんへ送る。
山本君から手紙。黒木氏へ一万円わたした由。あきれて物がいえない。とり戻すよう早速云ってやる。
午後、入浴。又、少し体重がふえた。三一キロ（ママ）。十三貫六〇〇匁。
山本君より山口さんの方がはるかにしっかりしている。
救援委員会も一体何をしているのかわけが分らない。ノータリンばかり。
哲学史。
発信 山本晴義 野島義一 岡好賢、
受信 山本晴義 大丸・神戸
○四月十八日（水） 晴 暖
午後、保健所へ行って写眞をうけとる。兒玉医院へ行く。写眞によれば、結果はよろし。
夜、井上さんの所へ写眞を持って行く。
岡君きたる。
○四月十九日（木） 曇後雨 暖
山本君からカンパの金來る。あの位きつく云わないと黑木氏はかえさない。客觀的に見れば、黑木氏、山本氏がぐるになってやったと見られても仕方がない。今金をわたす必要は何もないものだから。黑木氏はたしかにこちらをなめていた。
哲学史。野田氏の原稿。
紘一郎、杉原さんにみて貰う。レントゲン写眞をみて貰う。年の割には治り方が早い由。
塩田さんでさえ化学療法で治る程度だと云ったのだから大丈夫だ。塩田さんの予定よりは少しおくれているかも知れない。
発信 山本晴義（二） 山口栄子
受信 山本晴義
○四月二十日（金） 晴 暖
午前、兒玉医院。
午後、井上さんへ。甲陽病院でレントゲン写眞をみて貰った結果をきく。大体、杉原さんに同じ。成績良好。
哲学史。山崎正。
大井正の手紙。やはり東京の方がすっきりしている。
ややこしい問題からは解放されたい。病臥以來ややこしい問題になやまされ續きである。
黑木氏が素直に金をかえすかどうか。
発信 大井正 理論社
受信 大井正 湯川和夫
○四月二十一日（土） 晴 暖
山本君から一万円送ってくる。これでこの件は終り。黑木氏の陰謀を阻止したというところ。
午後、靑木の濵まで行く。
「委員会」の混乱も結局いい指導者がいないからだ。甘粕さんも指導者としては失格だ。
哲学史。山崎正一。
発信 山本晴義 湯川和夫 関西哲学会 醇郎
受信 山本晴義
○四月二十二日（日） 晴 暑
ややこしい問題からきれいさっぱり解放されたい。しかし、いつまでもついて廻る。
哲学史。竹内良知。
受信 野島義一 常井直道
○四月二十三日（月） 雨 暖
午前、兒玉医院。
「日本の現実は暗くきびしいが、一度外を眺めれば明るい展望がひらけている。」全く日本は幕末だ。しかし「維新」は案外早いだろう。自民党の崩壊がその契機になる。小選擧区の問題が重要だ。
民科を建て直す必要あり。僕が出て行けば可能である。再出発。
発信 林省吾 常井直道
○四月二十四日（火） 晴 暑
午後、風呂。
どうも頭を使うことが多い。とくに過去一週間は多かった。
哲学史。竹内。
暖くなってきたら、食慾がいくらか減退したようである。気候のせいであろう。
発信 甘粕石介 藤本進治
受信 甘粕石介
○四月二十五日（水） 雨 暑
哲学史。今泉。
とにかく人は筆無精なものだ。岡君も何も云ってこない。醇郎も。
○四月二十六日（木） 晴 暖
岡君から葉書。ややこしい問題はすべてタナ上げしよう。いろいろ複雜な事情があつようだ。しかし、今聞いても仕方がないから聞かない方がいい。「委員会」もはじめの中はよかったが、近頃ではややこしくなった。
哲学史。山崎正一。
発信 岡好賢（二） 山本晴義 理論社 甘粕石介
受信 岡好賢 理論社
○四月二十七日（金） 雨 暖
午前、兒玉医院。大先生現る。かえりに寶盛館へよる。
夜、井上さんを訪う。
岡君きたらず。葉書がついたのだろう。これで当分民科と縁切り。人も來ず、手紙も來ないだろう。
「委員会」もはじめからすっきりしていなかった。混乱を生ぜしめた根源は川西であろう。とにかく、民科が妙な形になったのは残念である。いい指導者がいない。民科もなごやかなお祝いでもしてくれるならいいのだが。
哲学史。井上庄七。
○四月二十八日（土） 晴 寒
山口さんから葉書。明日大阪で会う。
甘粕さんも抹消的なことをつつくだけで、広く見ることができない。民科にもしっかりした人間がいない。
哲学史。大村君。余り面白くない。清水君。これも面白くない。
段々身体をならして行く必要がある。そういう段階へ來た。大阪へ行く。ついで京都へ行く。
山口さんは、思想的にはおくれているが、人間としてはしっかりしている。山本晴義の比にあらず。岡君もよくやってくれたが、どうも頼りない。
受信 山口栄子
○四月二十九日（日） 晴 暖
午後、大阪。半年ぶり。洋服も亦半年ぶりで着る。中央病院へ山口さんを訪う。川西がきている。かえりに阪神の喫茶店へよる。
大阪へ行ってきたら、気分がよくなる。
哲学史。浜田泰佑。これは面白い。
○四月三十日（月） 晴 暖
午前、兒玉医院。レントゲン写眞をもって行く。
午後、靑木。今日は海が美しい。
醇郎から手紙。井上さんへ行って相談。
山口さんの盲点。川西。
病臥以來半年。やはり半年位で一応くぎりがつく。これからは身体を段々ならして行く段階。
甘粕、山本、岡とは当分縁切りか。それもよかろう。だが、それは直ちに川西の方へ行くことを意味しはしない。
民科（学習部会）を軌道へ載せることが今の課題である。一月一回でもいい。
発信 醇郎 山口栄子 日文協
受信 醇郎
【五月要記】
病臥以來半年。たしかに、区切りがつく段階にきた。病狀についても、まず一段落というところ。段々身体をならせる段階。
経濟的。カンパ、見舞等は一段落。ただし、残りが若干神大にある。これからは収入はへる。創元社、法律文化社の印税も終り。理論社はまだ当分續く。ゆっくりかまえること。その中に狀勢は変る。夜は明ける。
理論社、３千、神大、五千、東京、五千、生活保護と洋裁、五千、計二万。少し足せばどうやらやっていける。貯金が十二万あるから、不動産の収入がなくても、一年はもつ。