七月一日(日) 雨後曇 暑
午後、三の宮へ行く。流泉堂、海文堂へよる。
陽子のヒステリーにもこまる。延世も同じ。紘一郎が、家にいるのは不愉快だというのは原因はそこにある。ヒステリーには気分にわがままがある。
発信 名越悦 榊原美文
受信 名越悦 図書新聞社
○七月二日(月) 晴 暑
午前、兒玉医院。
午後、入浴。
『生活の求眞』着。
日本でもアイスランドやセイロンのやったことができない筈はない。ただ、日本人の反動勢力が強力なことが妨げになっている。しかし、これを撃退することは可能である。こんどの選擧でその方向が出るだろう。革命までは遠いが、前向きになる程度にはそう長くはかからない。
○七月三日(火) 曇小雨 暑
午後、三の宮。古川君に会う。
『日本の学生運動』をよむ。
発信 理論社
受信 藤野渉 岡好賢
○七月四日(水) 曇 暑
午後、京都。法律文化社で亀井氏に会う。宮内氏が來ている。亀井氏といっしょに東洋亭へ行く。十時家へかへる。
三木武吉死去。
農地問題、今日妥結した筈。
○七月五日(木) 曇 暑
休養。別に昨日の疲れもないが。
名越氏來る。原稿をもって行く。『近代倫理学の展開』を貰う。
三木武吉の死は、自民党崩壊の象徴。桐一葉。日本の保守党もつぶれていい頃だ。
○七月六日(金) 曇 暑
午前、兒玉医院。
午後、みかげ。郵便局と神戸銀行へよる。元町へ行く。分校へかえる。井上幸次さんに会う。
夜、井上さんを訪う。
樋口氏から農地問題妥結の知らせ。一美から十五万円來る。
アイスランドから沖縄まで。ついに日本も立ち上った。狀勢は有利だ。勝利にまで押切れるだろう。
受信 樋口金吾 伊藤一美
○七月七日(土) 晴 暑
むしあつい。三〇度をこす。ひるね。金の件で、一段落ついたので、らっくりしたのかも知れない。
午後、風呂。
明日は参議院の選擧。これは重大だ。革新派が予想外に出るだろう。
これで経濟的にも二年位は樂に持つ見込みがついた。悠々として狀勢の変化をまつことだ。今の一年は大変な変化である。つまらない仕事にとびつく必要もないし、あせる必要もない。自ら運命は開ける。無理な、強引な方法をとる必要もない。地道に足場をかためることだ。歴史の曲り角はいよいよ日本にも迫ってきた。
発信 樋口金吾 伊藤一美 醇郎
○七月八日(日) 晴 暑
午後、選擧の投票をする。
夜、選擧の速報をきく。社会党がだいぶ出てはいるが、自民党も強い。革新派が五分の一をとれるかどうかはまだ分らない。全国区では社会党がだいぶ出るだろう。それにしても、日本人の目覚めのないのにもいやになってしまう。セイロン以下だ。共産党もかなり票がふえてはいる。問題は東京、大阪。
発信 小松与平
受信 小松与平
○七月九日(月) 曇後雨 暑
午前、兒玉医院。かえりに御影分校へよる。
参院選擧。社会党進出。
いつの日にかかれらのレッド・パージにたいする罪が問われるとき、何ら情狀しゃく量の余地はない。
全国区も社会党がのびてきた。革新派が三分の一をとれるだろう。
発信 図書新聞
受信 図書新聞 人文学園
○七月十日(火) 曇 暑
午後、三宮東寶へ行く。「白夫人の妖恋」を見る。色は美しい。
革新派三分の一を確保。これは歴史の必然だ。岩間正男当選。
こんどの選擧は、いろいろ重要な結果を生み出した。
○七月十一日(水) 晴 暑
午前、兒玉医院。医療保護の件。
午後、延世、安定所へ。生活保護も医療保護も七月末で打切り。
もう治療にそう金もかからないから、打切りになっても大したことはない。悪化する場合もないとはいえないが、まあ大丈夫だろう。梅雨もすぎたし。
国道電車の中で『弁証法入門』を讀んでいる人にあう。
『教育科学』の原稿書きはじめ。
発信 人文学園
○七月十二日(木) 晴 暑
午後、散髪。
鳩山政府早くも混乱。日ソ交渉全權の件。もう鳩山も終りだろう。
保護の件。いずれにしてももう終りだ。その方がさっぱりしていい。
原稿。
受信 植口和博
○七月十三日(金) 晴 暑
午前、兒玉医院。
日ソ交渉主席全權に重光外相。自民党内の派閥爭い表面化。自民党も崩壊過程に入ったようだ。鳩山内閣も長くないだろう。社会党内閣も案外早くできるかも知れない。狀勢の変化を楽しみに頑張ることだ。
午後、入浴。
陽子、延世のヒステリーに悩まされる。
原稿。
発信 山口栄子
○七月十四日(土) 晴 暑
午後、流泉堂。古川君とG線へよる。大丸で帽子を買う。
原稿。
発信 教育哲学
○七月十五日(日) 晴 暑
午後、みかげ。日文協の例会。『むらぎも』について。小川君に会う。
原稿。十三枚也。『教育科学』へ発送。
こんどの選擧は自民党へ深刻な打撃を与えた。その影響は大きい。日本もようやく大きな曲り角へさしかかった。鳩山内閣ももう長くはない。そのあと、自民党は空中分解する。日ソ交渉が重要な契機になる。
○七月十六日(月) 晴、少雨 暑
午前、保険(ママ)所。レントゲン写眞をとる。兒玉医院。
午後、入浴。
凊水氏等十二人、勝訴。慰謝料三万円。こんな裁判で勝つなら、僕の問題を提訴したら確実に勝つ。考えていいことだ。二十六年九月から今までの俸給を拂うこと。
松本三益氏負訴。面白い判決が二つ出た。
発信 岡好賢
○七月十七日(火) 晴 暑
午後、御影分校。靑木、三浦、楠さん等に会う。
哲学史の原稿見直し。
受信 山口栄子
○七月十八日(水) 晴 暑
午前、保健所。写眞をうけとる。兒玉医院。医師不在。
山口さんから薬着。
午後、井上さんの所へ。写眞を見て貰う。
陽子、安定所へ行って、「医療券」をもらってくる。安定所行きもこれで終りだろう。結核予防法だけになると、保健所の問題になる。
受信 後藤やゑ 岡好賢
○七月十九日(木) 晴 暑
午後、靑木で「太陽の季節」を見る。
法律文化社から『思想の平和的共存』の原稿がくる。
紘一郎の件。
靑木靖三も、数年前にくらべたら随分後退したものだ。
哲学史。
ロール・バック・ポリシイをはじめるべきときだ。何物も恐れずに。
発信 理論社 山本晴義
受信 理論社
○七月二十日(金) 晴 暑
午前、兒玉医院。写眞と医療券をわたす。御影へよる。長倉君に会う。砂糖を貰う。田口君に会う。
午後、入浴。
どうみても鳩山内閣は長くない。總辞職、解散となる。社会党内閣ができるかも知れない。
神大哲学科は一度つぶして作り直すことだ。そうするより外ない。今のような半身不随の狀態では学生も來ない。
「戦爭責任論」を書いてみる。
発信 亀井蔀
○七月二十一日(土) 晴 暑
午後、岡君來る。
『哲学史』の前半の原稿を法律文化社へ送る。
ハタに「レッド・パージ復職斗爭の問題点」が出ている。今年の秋には活溌になるだろう。
今年の秋にはたしかに大きな変化が起る。鳩山内閣はつぶれる。日ソ交渉がきっかけになる。後はてんやわんや、保守党の没落。總選擧の可能性も多い。社会党内閣も案外早くできるかも知れない。狀勢の変化はテンポは早い。アメリカの大統領選擧も重大事件である。スティーヴンスンが勝ったら、大きな変化が起る。世界への影響も大きい。
受信 醇郎
○七月二十二日(日) 晴 暑
午後、大阪。二時、民科。秋田、岡、深沢、山口。のち「田舎」へよる。
○七月二十三日(月) 曇夕立 暑
午前、兒玉医院。
午後、入浴。
ようやく党中央もレッド・パージの問題にとりくみ始めたらしい。
受信 理論社
○七月二十四日(火) 曇後晴 暑
午後、三の宮。流泉書房。古川君いない。御影分校へ行く。今井、加藤に会う。
三の宮駅の階段ですべってころぶ。
夜、井上さん來る。
哲学史。
受信 秋田和美
○七月二十五日(水) 晴 暑
ひるねですごす。
たしかに今年の秋には国際的にも国内的にも大きな変化が起る。共和党の内紛。大統領選擧。日ソ交渉。鳩山の退陣。期して待つべし。
哲学史。
発信 岡好賢 秋田和美 後藤やゑ 山本晴義 醇郎 ハタ
受信 山本晴義 醇郎
○七月二十六日(木) 晴 暑
午後、三の宮。古川君に会う。G線へ行く。
夜中でも三〇度。暑いことだ。
重光、松本両全權出発。こんどは妥結するより外ないだろう。
発信 図書新聞 亀井蔀
受信 図書新聞
○七月二十七日(金) 晴 暑
午前、兒玉医院。
『哲学史』の原稿後半、法律文化社へ送る。
午後、靑木の銭湯へ行く。
エジプト、スエズ運河国有化。
やはり暑いときは疲れる。
受信 岡好賢
○七月二十八日(土) 晴 暑
午後、みかげ。日文協理論部会。上部構造の問題。
スエズ問題。この問題で、世界の力のバランスが変るだろう。
黑田寛一著『経濟学と弁証法』着。
黑田寛一をよむ。余り感心しない。
たしかに今年の秋は世界的に大きい変化が生じる。そういう段階へ來た。この数年の苦しみのむくいられるときもそう遠くないだろう。第二の終戦。そのとき徹底的な裁判をする。それまではあまりしみったれたことはしない方がいいだろう。早ければ今年中。少くも一年以内。これが僕の推測だ。
受信 橋倉武人
○七月二十九日(日) 晴 暑
午後、吹田へレントゲン写眞をもって行く。塩田氏不在。夕食後辞す。
発信 橋倉武人
○七月三十日(月) 晴 小夕立 暑
午前、兒玉医院。
午後、風呂。
黑田寛一をよむ。季刊理論派。
受信 野島義一
○七月三十一日(火) 晴 暑
休養。この数日全く暑い。
夜、岡君、深沢君來る。
朝、延世出発。東京行。
日ソ交渉、こんどは妥結する。
発信 森信成 野島義一 古川雅章
受信 森信成