○十一月一日(木)  晴 寒

午後、綾子さん來る。

鳩山首相等歸国。

英仏、エジプト攻撃。この問題がどのように発展するだろうか。とにかく世界は戦後最大の轉換期へ來た。日本でも相当の混乱が起りそうだ。戦後十一年の古い体制はこわれていい頃だ。

 

○十一月二日(金)  晴 暖

午前、兒玉医院。兒玉さんはガンだったよし。みかげへよる。コーンフォース研究会の件。

午後、銀映で「午後八時十三分」をみる。

スエズ、重大化。

神大新聞出来。

夜、井上さんの所へ行く。

昨年の今日、塩田さんへ行って悪いといわれた日。あのときはあきらめに近いおちつきになった。しかし絶望に近い不安があった。それにくらべれば今は明るくなった。

受信 植口金吾 醇郎

 

○十一月三日(土)  曇後雨 暖

休養。

スエズ問題。結局英仏の植民国家は崩壊するだろう。戰爭することによって崩壊を早める。

発信 醇郎 植口金吾 亀井蔀

 

○十一月四日(日)  晴 暖

午前、兒玉医院。

午後、のぶよといっしょに神戸へ行く。そごうで洋服を注文する。エビヤンへよる。センイ会館で「くらぶ・でく展」をみる。

スエズ、ハンガリー、重大化。しかし大戰爭にはならないだろう。大きく見れば、戰後十一年續いた体制の崩壊。戰後最大の変革期。日本もこれからはじまる。

発信 湯川和夫

 

○十一月五日(月)  曇 暖

午後、風呂。

ポーランドのゴムルカの場合。歴史は、変るときは急激に変る。

 

○十一月六日(火)  曇 冷

午後、みかげ。研究会の件。永積氏、小川氏に会う。

「累積した無理の爆発。」日本でも爆発していい頃だ。

靑木君からコルニュの訳を貰う。

永積さんから貰ったパス終了。

療養生活のケンタイ期。

 

○十一月七日(水)  曇 寒

午前、兒玉医院。今月から又パス、ヒドラジッドをのみ始める。保健所へよってレントゲン写眞をとる。

アイク当選。国会は民主党。

新聞部の学生來る。

立冬。この秋は秋晴れのいい日はほとんどなかった。

コーンフォース研究会。今週の土曜からはじめることにする。

発信 亀井蔀

受信 重原?? 亀井蔀

 

○十一月八日(木)  晴 暖

午後、三の宮。流泉書房で買物。古川君に会う。

ゴムルカのようなケースもある。一擧に復歸する場合。

砂川問題。維新のはじまり。

受信 亀井蔀

 

○十一月九日(金)  晴 暖

午前、保健所。写眞をうけとる。兒玉さんへ行く。写眞、前よりはよろし。

午後、京都へ。法律文化社で亀井氏に会う。『日本の知識人』の件。甚兵衛で夕食。九時すぎ家へつく。

世界中、轉換期に入った。これから一、二年は面白い。戰後十年の体制の崩壊。

受信 醇郎

 

○十一月十日(土)  雨 冷

午後、入浴。十三貫六〇〇匁。

「日本の知識人」の項目決定。

発信 亀井蔀

受信 植口金吾

 

○十一月十一日(日)  曇 暖

午前、兒玉医院。

午後、民科哲学部会。十数人。山本君の報告。のち、重原君等と田舎へよる。

 

○十一月十二日(月)  晴 寒

午後、区役所へ行く。印鑑証明十通作成。みかげ分校へ行く。五時から研究会の打合せ。

夜、井上さんを訪う。写眞をもって行く。

「解説」を書きはじめる。

発信 植口金吾

 

○十一月十三日(火)  晴 寒

休養。

夕方、山本英一氏の所へよる。

『知識人』の編集。

発信 亀井蔀

受信 亀井蔀 新島繁

 

○十一月十四日(水)  晴 暖

午前、兒玉医院。みかどへよる。今井さんに会う。

午後、のぶよといっしょにそごうへ行く。洋服出来ている。少し派手だ。国際会館のティー・ルームへよる。

『知識人』の編集

発信 新島繁 醇郎

 

○十一月十五日(木)  晴 寒

午後、入浴。散髪。

本文原稿を法律文化社へ送る。

ルフェーヴルをよむ。

スエズ、ハンガリーの問題。簡單におさまりはしない。激動のはじまりだ。日本でも、今の国会がきっかけとなって激動がはじまりそうだ。

発信 理論社 人事興信所 亀井蔀

 

○十一月十六日(金)  晴 寒

午後、みかげ。井上幸次さんに会う。社研中止。

急に寒くなった。冬型の気圧配置。

新洋服を着る。

煉炭を入れる。

ルフェーヴルをよむ。

発信 湯川和夫

受信 湯川和夫

 

○十一月十七日(土)  晴 寒

午後、みかげ。原、近藤、靑木に会う。三時から日文協理論部会。岡君の報告。

延世と陽子のヒステリーにも困る。女はもっと精神力がある筈だが。家では逆だ。

「解説」を書く。

 

○十一月十八日(日)  曇 寒

午前、兒玉医院。予防法も八月で切れているよし。

夜、井上さんを訪う。

「解説」を書く。これがすんだら「随筆」を書こうと思っている。楽しみながら書く。

 

○十一月十九日(月)  晴 暖

午後、銀映会館へ行く。「残菊物語」の後半、「四十八歳の抵抗」を見る。割合に面白い。

志賀義雄が衆院の質問演説で、占領法規の被害者を救え、という。この指摘は重大だ。この問題が発展するといいが。発展しうる條件はある。志賀発言がきっかけになるだろう。

「解説」を書く。「協力」の問題終り。「解説」がすんだら、「日記」「随筆」を書く。これは長く續け、本にするつもり。

 

○十一月二十日(火)  晴 暖

午前、小川夫人來る。

午後、みかげ。永積、陸井、小川君等に会う。

「解説」を書く。これがすんだら、『徒然草』を書く。

 

○十一月二十一日(水)  晴 暖

午前、兒玉医院。

山口さんから薬着。

「解説」を書く。

 

○十一月二十二日(木)  晴 暖

午後、風呂。十三貫七〇〇匁。

三の宮へ行く。古川君に会う。海文堂まで行く。

岡君もどうにもピント外れで困る。

「解説」を書く。終り。二三枚。

この頃手紙、余り來らず。平穏。

これから「徒然草」を書く。楽しみながら。これでいくらか生活に張りがでてきた。

この頃身体の調子はいい。手術などしないですむだろうというような自信がでてきた。従って手術のことを余り気にしなくなった。

 

○十一月二十三日(金)  晴 寒

午後、大阪。教員会館。日文協関西共同研究会。のち、皆で梅田駅前のアサヒビールへよる。近藤、広末、榊原氏等に会う。

「解説」見直し。明日送る。

この一週間というもの手紙がこない。物足りない。

発信 亀井蔀

 

○十一月二十四日(土)  晴 寒

「解説」を送る。

午後、みかげ。コーンフォース研究会。のち三の宮へ行く。

金吾氏明日來る。

この頃食慾が出てきた。夜など食べようと思えばいくらでもたべられる。

発信 岡好賢 理論社

受信 植口金吾

 

○十一月二十五日(日)  曇 寒

午前、兒玉医院。

午後、七時神戸駅へ。植口金吾氏と行違いになる。家へかえったら來ている。井上さんも。打合せ等。

少し風邪気味のようだ。

 

○十一月二十六日(月)  曇、寒

午前、植口氏と延世、区役所へ行く。

午後、植口氏去る。

夜、七度一分。風邪。杉原さんに來て貰う。

発信 米沢支所

 

○十一月二十七日(火)  曇 寒

長くねむる。やはり疲れ、睡眠不足だろう。午後、六度七分。

 

○十一月二十八日(水)  晴 暖

午前、兒玉医院。

午後、ひるね。やはり疲れだろう。

シリア・イラク間緊張。つぎつぎと連鎖反応を起して行く。

風邪、まだ名残りがあるが、大体いい。

日本でも大変動が起っていい。それは世界の大勢だ。今年は全く目まぐるしい狀勢だった。來年も續くだろう。一度動き出したら、一応安定するまではとまらない。今後一、二年は面白い。

受信 山本晴義

 

○十一月二十九日(木)  曇 寒

休養。風邪、いいらし。

発信 醇郎

 

○十一月三十日(金)  晴 寒

寒波襲來。

のぶよ、元町へ買物に行く。

社研、休む。

夜、室内十二度。

病臥以来一年と一ヵ月。今年もあと一月でおえる。早いものだ。幸に順調だ。過去一年間随分大きな変動があった。ことに十一月は地辷りの連続であった。戦後十一年の体制の崩壊。日本でも砂川事件、日ソ国交回復。あと一年すれば、本当に大地すべりが期待できそうだ。

受信 理論社