○十二月一日(土) 晴 寒
ひる、六度三分。
午後、みかげへ行く。小川君に会う。流泉堂へ行く。古川君に会う。
恩赦の問題。レッド・パージの取消しの方へ持って行かねばならない。
○十二月二日(日) 晴 暖
午前、兒玉医院。風邪、大したことない。
祐二郞、発熱八度。
恩赦の問題。この問題は発展させねばならない。
発信 学術会議
○十二月三日(月) 晴 暖
午後、みかげ。そごうへ行く。時計の修繕を依頼する。
『くるわ』をよむ。
○十二月四日(火) 曇後小雨 暖
夜、井上さんを訪う。
風邪、いいらし。
井上さんも常識的だ。山本英一氏も同じ。小川君はちがう。
『くるわ』をよむ。
療養所に入っていたとしたら、とっくに手術していたろう。その方が良かったかも知れない。もっとも、今迄のやり方が積極的に悪かったということはない。
○十二月五日(水) 晴 寒
寒波襲來。
午前、兒玉医院。みかげ。永積さんに会う。
祐二郞、平熱。陽子、発熱。
日ソ共同宣言成立。
英仏軍スエズから撤退。
恩赦はまず占領政策犠牲者から。ハタの主張。神大Sは動かんだろう。
『くるわ』をよむ。
受信 靑木書店
○十二月六日(木) 晴 暖
午後、久しぶりで入浴。
『くるわ』讀了。
これから一年をくぎって考える。経濟的なこと。健康もどうやらよくなるだろう。
恩赦の問題。期待できるだろう。悠然として待っていた方がいい。
恩赦の問題が強力に出てきたら、復歸も案外早く実現するかも知れない。日ソ国交回復、国連加盟。歴史は動き出すと早い。全学連も動き出してきた。植民主義反対が日本でも起るべきだ。その條件は熟している。
受信 植口金吾
○十二月七日(金) 曇 暖
午後、みかげ。社研。
『認識論史』着。
亀井へ『神大新聞』を送る。
『徒然草(日記)』を書き始める。
発信 靑木書店 世界評論社 植口金吾
受信 世界評論社
○十二月八日(土) 曇 暖
「恩赦の問題」、ハタ。
「恩赦について」、国際へ。
日ソ国交回復、国際連盟加盟はとにかく大きな出來事だ。來年一月からは国内でも新しい動きが出てくるにちがいない。
発信 山本晴義
○十二月九日(日) 晴 寒
午前、兒玉医院。
午後、みかげ。日文協十二月例会。のち、魚勝で忘年会。
亀井氏から『知識人』の修正を云ってくる。どうもやることがおそいし、ひつっこい。
寒波襲來。夜、室内八度。
今年は戰爭責任論、共産党批判等がジャーナリズムの寵兒であった。來年はレッド・パージの問題でも出てきそうなものだ。そうあらしめたい。
○十二月十日(月) 晴 寒
亀井氏へ返事を出す。『日本の知識人』もこれで終結。原稿を返送。
日本の政治はたしかに重大な轉機へ來た。さらにファッショ的な方向へ行くか、平和的共存の方へ行くか、だ。
発信 亀井蔀 重原定立
受信 須田高興
○十二月十一日(火) 晴 寒
午後、みかげ。三の宮へ行く。流泉堂へ行く。元町を歩く。急に歳末気分になった。そごうへよる。時計の修繕。
恩赦について、国際。党もこの問題をとり上げるようになった。來年は大きく展開しそうだ。
十四日の自民党大会はみものだ。
分裂するかも知れない。それに續いて予想外のことが起るかも知れない。
雜誌をよむ。
昨日の朝、神戸、零下〇・六度。
○十二月十二日(水) 曇 寒
午前、兒玉医院。
日ソ国交回復。批准書交換。
学術会議選擧。永積氏当選。出さん、伊藤さん落選。
六疊のふすま張りかえ。
たしかに今日は記念すべき日だ。日本の方向轉換のきっかけになる。十五日、安保理事会。十四日、自民党大会。これは一騒動起るだろう。
受信 鈴木平八郎 醇郎
○十二月十三日(木) 曇 寒
午後、入浴。
安保理、日本の加盟を決定。
祐二郞の誕生日。すしの御馳走。祐二郞にとって、今日は一番いい日だったよし。
「日記」を書く。
発信 鈴木平八郎 理論社 国際新聞社
○十二月十四日(金) 曇 寒
午後、みかげ。三の宮へ。流泉堂で買物をする。
石橋湛山、総裁になる。
志水さんへタバコを送る。
「日記」を書く。こういう自由な書き方で書くのは楽しい。当分續ける。たまった所で本にする。
国際に岸本玉枝さんの投稿。
発信 志水靖博
○十二月十五日(土) 晴 寒
午後、みかげ。社研。のち、小川君に会う。田中屋へよる。
「日記」を書く。だいぶ調子が出てきた。面白いものができそうだ。
「雪どけ」から「雪崩」へ。部分的には逆戻りのように見えるが、全体としてはそうではない。平和への「雪崩」だ。來年はそれがはっきりするだろう。
受信 山本晴義
○十二月十六日(日) 晴 寒
午前、兒玉医院。
午後、大阪、民科。船山氏の報告。のち、日本食堂で忘年会。
『知識人』の依頼狀にサインする。亀井氏へ送る。
発信 亀井蔀
受信 亀井蔀
○十二月十七日(月) 曇 寒
この冬はいつもの年より寒そうだ。
昨日の哲学部会はたしかに盛大だった。船山、甘粕、新島、小松、山本、靑木等。これをのばして行くことは重要である。
夜、岡君きたる。
山口さんの送ってくれた薬不着。郵便物はだいぶおくれている。
「日記」を書く。
○十二月十八日(火) 晴 寒
午後、みかげ。靑木、市川等に会う。靑木君も近頃いよいよボケてきた。
山口さんは薬を送ることを忘れていたにちがいない。
「日記」を書く。
岡田正三は悪質の反動だ。文学部のガンになる。いな、もうガンになっている。岡田を教授にしたのは大失敗。三田、靑木が岡田に引っぱられているのはだらしがない。文学部の中でも哲学科はもっとも沈滞している。沈滞の極。しかも半身不随。学生のこないのも無理がない。文科が発足したときは、哲学科が一番期待されたものだったが。今、一番活溌なのは国文。つぎが西洋史。哲学科は一度つぶして再建するより外あるまい。今井林太郎、さらに進んでは学長の責任も大きい。
○十二月十九日(水) 晴 寒
午前、兒玉医院。
午後、みかげ。楠さんに会う。教官より楠さんの方がよほど見識がある。五時半、阪急三の宮。ドン・バルへ行く。日文協の書記局会議。のち、永積さん、小川君と壽屋へよる。
『国際』からの通知が五日かかってくる。
日本、国連加盟。
受信 国際新聞
○十二月二十日(木) 晴 寒
午後、入浴。散髪。
石橋湛山、首班指名。
ひるね。やはり昨日の疲れがあるのだろう。
「日記」を書く。
○十二月二十一日(金) 晴 寒
午後、みかげ。延世の件につき、楠さんから聞く。社研中止。国文科の忘年会に出る。猪野さんに会う。
秋田さんからクリスマス・カードがくる。
どうやら明るい方向へ向ってきたようだ。
ルフェーヴルをよむ。
楠さんの言ったこと。おそらく非常勤講師の件だろう。現に、今「近世哲学史概説」の講義がない。それでは哲学科は成り立たない。延世の件とこの二つとが実現したら、一応順序がついたというものだ。事実、近世哲学史概説のできる人はいない。山元氏がドイツへ行ってしまったから。非常勤講師でもその意義は大きい。
受信 秋田和美
○十二月二十二日(土) 曇 寒
少し雪が舞う。
午後、みかげ。理論部会。
湛山内閣、今日も成立せず。事態は深刻のようだ。面白くなってきた。
「日記」を書く。
來年はどうやら明るい年になりそうだ。どん底から抜け出して、上向きになってきたように思う。
発信 植口金吾
○十二月二十三日(日) 晴 寒
午前、兒玉医院。
森宏一著『弁証法的唯物論』着。
一美からリンゴ一箱來る。
夜、井上さんを訪う。延世の件、話す。
理論社から印税來る。
石橋内閣ようやく成立。
「日記」を書く。当分種切れにはならない。
発信 理論社 靑木書店
受信 理論社
○十二月二十四日(月) 晴 寒
午後、三の宮へ。国際松竹で「台風騒動記」を見る。面白い。街はクリスマスで賑っている。
山口さんから薬着。消印は十二月十二日。二週間かかっている。たまっていた郵便物が來始めた。
「日記」を書く。酔っ払いのこと。
発信 法律文化社 和郞
受信 法律文化社 山口栄子
○十二月二十五日(火) 晴 寒
一日中ねてばかりいる。疲れが出たとでもいうのだろうか。そう疲れるわけもないが。
夜、「日記」を書く。たしかに面白いものになりそうだ。ぼくの能力を遺憾なく発揮したいものだ。
○十二月二十六日(水) 晴 寒
午前、兒玉医院。
夜、岡君きたる。クリスマス・ケーキをもってきてくれる。
『血ぬられた日曜日』着。
「日記」を書く。面白いものができそうだ。
今年は、哲学者が日本思想を研究しだしたことが特徴である。これはいいことである。
○十二月二十七日(木) 晴 寒
植口氏から手紙(と金)來る。
午後、富士銀行神戸支店へ。みかげ分校へ行く。三浦さんに会う。又三の宮へ行く。流泉書房へよる。古川君に会う。
兒玉さんへ奈良漬(八〇〇円)を送る。
現在の預金高、三七五、四〇五円也。現金と合わせると約三〇万。これだけでも後一年はもつ。
レッド・パージの問題は去年の暮から出ていた(川造等)。今年はそう大した発展はなかった。尤もたかなり(ママ)進んでいた。來年は大きな展(ママ)換がありそうだ。党中央も本気でとり上げたらしい。これが要である。
來年こそはいい年がきてほしい。
発信 醇郎
受信 植口金吾
○十二月二十八日(金) 曇 暖
午後、入浴。十三貫七〇〇匁。今迄の最高の体重で年を越す。
今日もよくねむる。なぜこんなにねむるのか分らない。今年の疲れが出たとでもいうのだろうか。
芝田進午から『アメリカ・イデオロギー論序説』着。
那覇市長、瀬長当選。
久しぶりで冬型気圧配置が崩れてきた。
農地の金は今迄で三五万円。有り金三〇万とすれば五万くいこんだことになる。ただし、理論社、井上さんの所にかなりあるから、殆んどくいこまなかったことになる。
來年こそ日本で大きな変動が起りそうな気がする。沖縄の問題がきっかけになるだろう。
発信 植口金吾 伊藤一美
○十二月二十九日(土) 晴 暖
午後、省線本山まで行く。
『世界評論』着。
レッド・パージの問題、ようやく党がとりくみ出した。期待できるだろう。
「日記」を書く。一〇〇枚(二〇〇字)突破。
発信 時事通信社
○十二月三十日(日) 曇 暖
午前、兒玉医院。この次(一月二日)は省くことにする。
井上さんへ行く。金吾氏の件。
与平氏から餅がくる。
テヴォシャン副首相、駐日大使にきまる。
來年は日本が台風の目になりそうな気がする。沖縄問題はその前ぶれ。
「日記」を書く。
受信 関西哲学会
○十二月三十一日(月) 曇 暖
非常に暖い。
午後、入浴。十三貫八〇〇匁。今迄の最高。
これで今年も終る。療養の一年。幸に順調。來年はどういう年であろうか。いい年であってほしい。今年は、平凡な年であった。ぼくの個人生活にとっては。
世界狀勢は今年の後半は荒れた。雪どけから雪崩へ。この雪崩は來年へ續くだろう。
【補遺】
ロジェ・ガロディー『自由』(上)淡徳三郎訳 靑木書店刊
Ⅰ 自由の歴史、必然と自由の問題のマルクス・レーニン主義的解訳
下巻 第三部 ブルジョア的自由と民主主義
- ソヴェトの民主主義
ルカーチ著『階級意識論』平井俊彦訳 未來社刊
一・三 鍵本芳雄他(果物 一、〇〇〇円〈ギフト・チェック〉
(鍵本芳雄、田村欽一、熊野茂、沢田哲夫、三浦壽美子、後藤やゑ、戸崎曾太郎、山口嘉一、土井道代、西村英子、寺本勝 中村憲市、石井亮一)
一・六 笹川儀三郎 一、〇〇〇円
一・八 常井直正 三〇〇円
〃 天沼紳一郎 一、〇〇〇円
一・一一 道家忠道 二、〇〇〇円
一・一四 新関嶽雄 玉子二十ケ、
一・一五 後藤信義 玉子二十ケ、
一・一六 市村 仁 二、〇〇〇円
一・二一 山口栄子 カステラ
一・二五 小川政恭 玉子二十ケ
一・二九 野島義一 バタ、チーズ
二・六 山本晴義 玉子十ケ
二・九 阿部文龍 一、〇〇〇円
二・一〇 山形大学 二〇、〇〇〇円
二・一六 永井和雄 ハム
二・二一 土屋保男等 一、七〇〇円
二・二三 名越 悦 玉子二十ケ、キャラメル、
三・二 市村仁他 四、〇〇〇円
三・七 靑木靖三 ケーキ
三・二九 山本晴義 菓子
三・三〇 服部英次郎 牛肉、玉子十五ケ、菓子、
五・二七 森信成 五〇〇円
六・一二 有坂岩雄他 三、六〇〇円
六・二四 秋田和美 たばこ、