○四月一日(月)  曇 冷
  午後、みかげ。靑木君に会う。
  『神戸新聞』昨日の朝刊にぼくの文が出ている。面白い所を削ってしまったので、平板になった。原稿を頼むときはやいやい云ってきながら、後は知らん顔をしている。
  『国際』の一面トップに「レッド・パージ、関西の復職運動は盛り上る」が出てる。商業新聞がとり上げたのは最初であろう。レ・パの問題が、アカハタの枠を終えて、ようやく公然と出てきた。これはいいことであり、重大である。もしジャーナリズムが大きくこれを取り上げるようになれば大変いい。ぼくの問題にとっても側面援護になる。実際あんなメチャなことはない。当然とり消すべきだ。たしかに党の無責任と立ちおくれがある。党の文化人を動員すべきだ。岩間正男のごときはよく知っている筈だ。
  「日記」を書く。
  今日は記念すべき日だろう。
  いろいろの仕事が出てきた。四月、面白いようだ。どうもついてきたらしい。
  発信 醇郎 藤井照頼、

○四月二日(火)  曇小雨 寒
  午後、みかげ。堀さんに会う。平凡社の原稿。
  哲学部会の通知がようやく來る。
  「日記」を書く。
発信 図書新聞
  受信 民科

○四月三日(水)  曇 冷
  午前、兒玉医院。
  午後、散髪。
  神戸新聞記者來らず。いいかげんなものだ。亀井氏も何もいってこない。
  湯川君へ手紙を書く。哲学部会の「ニュース」着。ぼくの文章がのっている。シンラツと思われるだろう。
  発信 湯川和夫
  受信 民科哲学部会

○四月四日(木)  晴 暖
  午後、三の宮。流泉書房へよる。神戸新聞社へよる。木村勝という人に会う。三月三十一日の新聞を貰う。御影分校へ行く。
  大工がきて、お勝手の戸をなおす。
  発信 山本晴義 古川雅章
  受信 醇郎

○四月五日(金)  曇 冷
  午後、みかげ。平凡社の原稿を書く。阿部さんに会う。
  亀井氏から何もいってこない。忙しいのだろう。神戸新聞から原稿料來ない。いいかげんなものだ。
  アメリカにおける都留教授喚問の問題。ノーマンの自殺。アメリカも戦爭末期の日本ににてきた。
  三島由紀夫『金閣寺』をよむ。面白い。

○四月六日(土)  晴 暖
  午後、入浴。商船大学がはじまったらしく。大勢きている。
  夜、井上さんを訪う。
  向井君、今夜銀河で立つ。
  平凡社へ原稿を送る。
  「日記」を書く。
  一つの案。靑木君を講師にする。その後、鍵本君を助手にする。そのあと、図書課へ延世を入れる。これが実現すれば、いろいろ具合がいい。とくに、鍵本君の助手は適任。靑木君の助手は不適任。学生がにげてしまう。
  非常勤講師の件が出てから、ぼくはことさら淡々としている。これは戦術にすぎない。レッド・パージの復讐を忘れたわけではない。地盤をきずいてから大いにやる。
  発信 神戸新聞 野島義一 平凡社
  受信 法律文化社 神戸新聞

○四月七日(日)  晴 暖
  午前、兒玉医院。
  午後、大阪。梅新のイタリアン。民科哲学部会。約二十名。のち、岡、重原、深沢君と阪神食堂へよる。深沢君の件。
  陽子と祐二郞で検印終了。法律文化社へ送る。これで『日本の知識人』もようやくできる。おくれたが、却って時期はいい。
  発信 法律文化社 醇郎

○四月八日(月)  晴 暖
  午後、みかげ。三浦さん等に会う。のち、流泉書房へ行く。古川君に会う。
  『挽歌』をよむ。
  小、中、高校、始まる。
  静かな登場。
  藤本さんの報告は感心しない。かなり独断的だ。

○四月九日(火)  晴 暖
  午後、甲南朝日へ行く。「大番」を見る。面白い。
  山本君は全く相不変だ。善意ではあるが、ザルだ。
  民科グループより鍵本グループの方がずっといい。鍵本君の助手の件、どうだろうか。早く実現するといいが。そうなれば、哲学科もだいぶ気分が変るが。アンチ武市が強化され、明るくなる。井上さんのいったこともどれだけ根據があるだろうか。
  『世界』「夫人公論」をよむ。
  受信 平凡社

○四月十日(水)  晴 暑
  午後、兒玉医院。みかげへよる。メーデー前夜祭の件。
  醇郎から電報。明日東京へ行く由。
  文学部の時間表來る。
  森さんの論文。ピント外れの所へ力こぶを入れている。
  『挽歌』をよむ。
  一時に花が咲いてきた。
  『日本の知識人』も今週中にはできるだろう。
  十一日入学式。十二日授業開始。
  発信 森信成 樋口金吾
  受信 神大文学部 醇郎

○四月十一日(木)  小雨 暖
  午後、みかげ。伊藤君等に会う。三浦さん、後藤さんといっしょに三の宮、元町へ行く。後藤さん等がうれて來たときの写眞出來。
  『政界往來』着。
  『岸うつ波』をよむ。面白くない。
  発信 政界往来社
  受信 政界往來社

○四月十二日(金)  曇 冷
  休養。
  靑木のかえりに山下英一氏の所へよる。
  『岸うつ波』をよむ。

○四月十三日(土)  晴 暖
  午後、入浴。
  延世、陽子、神戸へ行く。陽子、めがねを買う。
  とにかく山本君というのは頼りない。善意ではあるが、あまりにも抜けている。
  『日本の知識人』も今日あたり出來てもいい頃だ。
  『岸うつ波』讀了。感心しない。何だかいやな感じがする。
  発信 理論社

○四月十四日(日)  晴 暖
  午前、兒玉医院。
  午後、みかげ。日文協例会。のち、杉島君、三浦さんといっしょに白ダンによる。
  『日本の知識人』五冊着。
  奥村久美子さんが国文の助手になる。
  『日本の知識人』をよむ。
  発信 法律文化社 古川雅章 山本晴義
  受信 野島義一 法律文化社

○四月十五日(月)  晴 暖
  午後、みかげ。小川君、新島氏に会う。哲学研究室で岡田氏、三田さんに会う。
  『日本の知識人』をよむ。よくできている。だいぶおくれたのだが、いろいろの意味でかえってタイムリイになった。ことに都留問題など。
  これからの半年で文学部内に確固たる地盤を作ろう。
  楠さんに、延世の件について聞く。
  発信 湯川和夫
  受信 湯川和夫

○四月十六日(火)  晴 暖
  午後、みかげ。文学部研究室で『挽歌』をよむ。
  流泉書房へ行く。『ドイツ史』がきている。
  とにかく、人は筆不精なものである。
  『日本の知識人』はまだ小売店に出ていない。
  『挽歌』をよむ。

○四月十七日(水)  晴 暖
  昨夜、雨。今日は雨上りで気持がいい。
  午前、兒玉医院。御影分校へよる。
  金吾氏から金がくる。
  『挽歌』讀了。伊藤整『誘惑』は、『挽歌』からヒントをえている。原田康子は石原慎太郎より才能がある。
  政界往來社から原稿を返送してくる。
  午後、入浴。
  夜、明日の用意。
  受信 樋口金吾 政界往來社

○四月十八日(木)  晴 暖
  午後、みかげ。近世哲学の講義の最初。ところが学生少数。これからのやり方の打合せをする。拍子ぬけの感。学長、部長が臆病に、愼重にしているのが、全くバカげている。世の中は皮肉にできている。
  赤飯をたく。
  『女坂』をよむ。面白くない。
屋根修繕、二四、四二〇
  発信 醇郎 樋口金吾 亀井蔀
  受信 醇郎

○四月十九日(金)  雨 冷
  午後、富士銀行灘支店へ行く。かえりに御影分校へよる。
  『女坂』讀了。
  この頃、ようやく気分が明るくなった。神戸へ來てから始めてといえるだろう。
  受信 伊藤㐂昭

○四月二十日(土)  雨 暑
  午後、みかげ。理論部会。『雜種文化』について。
  明日の武庫川教室の用意。キリスト教。
  発信 醇郎

○四月二十一日(日)  曇小雨 暑
  午前、兒玉医院。
  午後、みかげ。武庫川。キリスト教の話。
  亀井氏の何ともいってこないのもおかしい。山本君にも困りものだ。
  発信 山本晴義

○四月二十二日(月)  小雨 暑
  午後、みかげ。毛沢東の研究会。今後の打合せ。のち、岡田、三田、靑木氏等に会う。
  近世哲学史が一番人数が少いから皮肉である。
  発信 伊藤嘉昭

○四月二十三日(火)  小雨 暑
  午後、醇郎の所へ行く。スワの件その他。八時去る。
  『讀書新聞』に『日本の知識人』の広告が出ている。
  醇郎、五月一日から京大教授になる。
  数年間のことを考えてみても、山本君のいうことは殆ど全部実現していない。この位の間抜けはみたことがない。もう何も期待できない。期待してもむだだ。
  発信 理論社

○四月二十四日(水)  晴 暑
  午前、兒玉医院。みかげへよる。猪井さん、楠さん、三浦さん、後藤さんに会う。
  午後、ねむる。過去一週間、かなり多忙であったので、やはり疲れたとみえる。
  『挽歌』の批評会、メーデー以後にのばす。
  午後、入浴。
  明日の講義の用意。
  文学部へも急激に根をおろし始めた。これが大変なことである。もう削ろうと思っても削れない。後期には又工夫のしようがあろう。とにかく、上昇期に入った。延世の就職もかなり可能性がある。
  山本君、理論社、法律文化社のだまっているのは全くけしからん。それぞれ往復葉書を出した。こんどは何とかいってくるだろう。
  貯金額、三七三・七三〇
  現金と足せば、約四〇万、農地の金は五五万來たから、くい込んだのは約一五万。(樋口氏の報告と一〇万くいちがう)、
  発信 樋口金吾 法律文化社

○四月二十五日(木)  小雨 暖
  午後、みかげ。哲学史。ギリシア哲学の話。こんどは約十人。みかげから元町コトブキへ行く。日文協書記局会議。八時終了。
  『日本の知識人』五冊着。野島氏等五氏にも送ったよし。
  いま重点をおく仕事は、学部の中へ徹底的に根をおろすことだ。そうすれば、無視しようとしても無視できなくなる。事実、まだ四月であるのにかなり効(ママ)を奏している。
  発信 法律文化社
  受信 法律文化社

○四月二十六日(金)  曇後晴 暖
  午後、大阪。中央公会堂。エレンブルグ氏講演会。新島氏等に会う。九時終了。さすがに、エレンブルグ氏は悠々たるものである。

○四月二十七日(土)  晴 暖
  午後、六甲へ行く。メーデー前夜祭。なかなか面白い。宮原さんといっしょにかえり、六甲ガーデンへよる。
  受信 尾崎静子 法律文化社 山本晴義

○四月二十八日(日)  曇 冷
  午前、兒玉医院。
  山口さんから薬着。
  鶴見俊輔氏から「戦爭責任について」を送ってくる。
  『神戸新聞』今日の朝刊に『日本の知識人』の短評がのっている。
  『日本の知識人』五冊着。
  『図書新聞』に『日本の知識人』の広告が出ている。
  「解説」については、神戸新聞も「インテリゲンチャ必読」といっているが、たしかによくできている。
  発信 鶴見俊輔 尾崎静子 山口栄子 山本晴義 日本哲学会 法律文化社
  受信 山口栄子

○四月二十九日(月)  晴 暑
  午後、三の宮。流泉書房、古川君に会う。
  『実存主義』『現代物理学』着。
 理論社は何もいってこない。往復葉書を出したのに。けしからん奴だ。
 山本、岡、重原は、ほっておけば何もしない。しめる所はピシリとしめねばならない。日文協の方がケタ違いにしっかりしている。民科はいつでもだらしなく、後手にばか廻っている。あきれた間抜けどもだ。ヘーゲル研究会をやるといいながら、何もいってこない。

○四月三十日(火)  曇 暖
  午後、みかげ。猪野さんに会う。
  夜、後藤さん等來る。
  受信 野島義一 林省吾