○一月一日(木)  曇 冷
  天気悪く、あまりいい正月ではない。午後、三の宮、新開地へ行く。人出多し。
  前原さんから、一月十日の通知狀、速達でくる。御影局へ出す。
  早くも仕事はじめ。『人間の探究』の仕事を再開。
  発信 年賀狀、のぶよ、奥村久美子、前原聿江
  受信 年賀狀、四五、野中春水、

○一月二日(金)  晴 寒
  午後、三の宮。流泉、ドンバル、モナミ、海文堂へよる。
  夜、原稿。
  大みそか以来よくねむる。疲れが出たのか。緊張から緩和へ、か。
  陽子、『ゴッホ展』を見に行く。
  発信 年賀狀
  受信 年賀狀、三〇、

○一月三日(土)  曇 冷
  午後、大阪。ミナミの正月風景を見物する。五時、吹田へ。東京の引越しの件など。夕食。七時半辞す。
  『新讀書』七冊着。
  夜、雨。原稿。
  発信 年賀狀、井上智行、亀井蔀
  受信 年賀狀、四〇、井上智行

○一月四日(日)  曇 寒
  ひる頃、兒玉医院へ。三の宮へ。古川君に会う。
  延世から電報。明日かえる。
  室内九度。はじめて十度以下になる。寒波襲來。
  原稿。
  発信 年賀狀、森川澄枝、矢島羊吉
  受信 年賀狀、一〇、森川澄枝、

○一月五日(月)  晴 寒
  ひる頃、室内五度。今朝、神戸、マイナス二・七度。寒波襲來。
  午後、みかげ。からっぽ。ニュー・コウベへ行く。内野、川辺、則武に会う。
  午後八時、のぶよ歸宅。家の件等。
  年賀狀二〇〇枚終り。二〇〇枚で足りない。
  はじめて冬のオーヴァーを着る。
  原稿。こんどの本はぼくとしても自信がある。野心的である。單なる啓蒙書ではない。
  ことしはワガハイの活躍する年。ここらで活躍しなかったらおしまいである。
  発信 年賀狀
  受信 年賀狀、二〇、

○一月六日(火)  晴 寒
  今朝、神戸マイナス三・三度。
  午後、みかげ。
  原稿。いまは『人間の研究』にエネルギーを集中している。
  昨日今日が厳寒だろう。
  山内氏から恩給の件につき話あり。
  発信 須田宗興
  受信 年賀狀、

○一月七日(水)  晴 寒
  午後、みかげ。今井さんに会う。
  今日の最底、マイナス二・一度。
  『天才の心理学』をよむ。面白い。
  夜、室内十度。平年並になる。
  原稿。一段落。まだ手を入れねばならないが。
  発信 鈴木亨 米沢支所
  受信 年賀狀、奥村久美子

○一月八日(木)  曇 寒
  寒波、一まずおさまる。
  午後、みかげ。国際松竹へ行き、「風花」を見る。佳作。
  少し風邪気。
  一美から、味噌がくる。
  原稿、一通り見終る(三、四)。これから又少し手を加える。
  発信 靑木書店
  受信 年賀狀、

○一月九日(金)  曇 寒
  午後、みかげ。猪野さんと田中屋へ行く。
  川崎君の件。楠さんから。
  明日の講演の用意。
  発信 伊藤一美
  受信 吉井政俊 年賀狀、

○一月十日(土)  晴 寒
  午後、大阪へ。二時、市大理工学部会議室。科学史学会阪神支部。約五〇人。「科学と哲学との関連」について話す。原光雄氏の話。五時終了。水野亜美さん等とシルヴァーへ行って夕食。又、市大へかえる。哲学研究室。九時終了。
  今泉三良、一月五日死去。
  又、寒波襲來。
  『世界』着。須田から手紙。下宿の件。
  発信 森川澄枝 吉井政俊
  受信 今泉泰子 須田宗興

○一月十一日(日)  晴 寒
  ひる頃、兒玉医院。
  三の宮へ行く。流泉へよる。古川不在。後藤書店へよる。
  渡辺義晴氏から『童話』を送ってくる。
  井上夫人に川崎君のことを話す。
  『人間の探究(三、四)』をよみ直す。やはり相当面白い本になりそうだ。明日送る。
  発信 須田宗興 森川澄枝
 
○一月十二日(月)  晴 寒
  午後、みかげ。文学部の新年宴会に出る。流泉へ行く。
  『人間の探究』の原稿を送る。
  「思想時評」書き始め。
  井上さんの慎重もじれったい。あれでは何にもできない。
  『人間の探究』は注目を引くにちがいない。全くユニークなものだ。
  発信 渡辺義晴 文理書院、
  受信 文理書院、

○一月十三日(火)  曇小雨 寒
  午後、みかげ。奥村さんに会う。流泉へ。『思想の科学』をかりる。
  『中央公論』着。
  『讀書新聞』に『人間の探究』の広告が出ている。
  「思想時評」の原稿を書く。
  受信 山下正子 須田宗興

○一月十四日(水)  晴 寒
  午後、みかげ。『思想の科学』をよむ。井上庄七君と田中屋へよる。
  「思想時評」の原稿終り。送る。
  鈴木亨君から原稿とゲラがくる。
  発信 森川澄枝 鈴木亨 須田宗興

○一月十五日(木)  晴 暖
  午後、三の宮で東京行の切符を買う。流泉へよる。阪神特急で大阪へ。阪急で山内に会う。シル・ヴァーでテレビをみる。
  夜、入浴。十三貫一〇〇匁。
  『人間の探究(五)』を送る。あとは「あとがき」だけ。
  発信 竹内道雄、後藤宏行、湯川和夫、吉井政俊、正木重之、森川澄枝、前原聿江、猪野謙二、須田宗興、

○一月十六日(金)  晴 暖
  午後、みかげ。分校自治委員來る。陸井君に会う。
  チッキでふとんを出す。
  又、冬の気圧配置。
  『人間の探究』の「あとがき」を書く。
  発信 樋口金吾

○一月十七日(土)  晴 寒
  昨夜から今朝にかけて物すごく寒い。午前七時、寒風の中を家を出る。八時、三の宮で「高千穂」に乗る。汽車中暑し。午後六時、東京駅着。須田君が迎えてくれる。東京駅(大丸)の食堂で夕食を食べる。須田君といっしょに栴檀寮へ。早くねる。

○一月十八日(日)  晴 寒
  大寒波。零下六・一度。
  正午、増林寺へ。四十九日の法要。おじいちゃん、尚幸、淸志、和幸等二十人。
  午後四時、学士会館(赤門)へ。猪野さんに会う。ルオーへ行く。いっしょに土屋君の所へ行く。猪野さん先にいかれる。夕食の御馳走になる。和田氏等。九時、寮へかえる。
  下井草の家、一月末にあく。なるべく早く入ってほしいよし。神戸の家を売ることが必要な問題となる。
  「あとがき」に手を加える。六枚。
  発信 のぶよ、

○一月十九日(月)  晴 寒
  今朝もマイナス六度。
  尚彦から電話がかかる。正午、三菱商事へ。『白痴』の券。
  午後、理論社へ。小宮山に会う。靑木書店へ。靑木に会う。新讀書社へ。もう『人間の探究』の注文がきている。三一へ。「哲学講座」の件。五時、銀座へ。ガス・ホールへ。『白痴』の試写を見る。すばらしい。七時半終了。
  新讀書社で「あとがき」をわたす。『中国赤軍物語』をもらう。
  発信 のぶよ、

○一月二十日(火)  曇 寒
  正午、お茶の水へ。明治パーラーで山田坂仁に会う。
  午後、新讀書社へ。ムライ君に会う。『人間の探究』、順調に行けば、二月五日には出來るよし。理想社へ。佐々木、大江、飯島氏等に会う。
  寮長竹内氏に会う。
  夜、銭湯へ行く。
  今日は少し寒をゆるむ。
  『人間の探究』、たしかに注目を引くにちがいない。『弁証法入門』からは格段の進歩である。
  発信 亀井蔀

○一月二十一日(水)  曇 寒
最底、マイナス四度。ひるは寒さゆるむ。
  午後、岩波書店。粟田氏と会い、ユッカへ行く。文理書院へ行く。寺島氏に会う。新宿で買物など。阿佐ヶ谷へ行く。おじいちゃんと和ちゃん伊豆へ。夕飯の御馳走になり、七時半辞す。
  発信 のぶよ
  受信 土屋保男 小川政恭

○一月二十二日(木)  曇 寒
  朝、尚彦へ電話をかける。静岡氏、こんどの日曜に來る。引越しは二月八日のよし。
  正午、法政へ。湯川君に会う。図書新聞で田所氏に会う。赤門の学士会館へ。山田君に会う。
  今日までで会うべき人には一通り会った。日曜の下井草の用事がすめば一段落という所。
  受信 湯川和夫

○一月二十三日(金)  晴 寒
  午後、新讀書社。すぐ、銀座七丁目山葉ホールで「影」を見る。すさまじい映畫。三一へ。竹村に会う。理想社へ。ヤスパースの件など。
  久しぶりで暖い。しかし、夜、風寒し。
  『人間の探究』、明日ゲラが出るよし。
  若の花、時津山に負ける。
  発信 前原聿江、のぶよ 芦屋税務署
  受信 のぶよ

○一月二十四日(土)  曇 寒
  午後、新讀書社。ゲラは二十六日。学士会館へ。ハナワ金太に会う。本堂繁松に会う。理想社から原稿料を届けてくる。神楽坂へ行ってテレビを見る。若の花、朝潮に勝つ。
  発信 のぶよ

○一月二十五日(日)  晴 暖
  正午、阿佐ヶ谷の家へ。尚彦といっしょに下井草の家へ。丸山氏に会う。家を見る。カギをあづかる。阿佐ヶ谷の家へかえる。
  午後五時、東京駅で須田に会う。浅草へ。夕食。いっしょに栴檀寮へ。須田、しゃべってかえる。
  若の花、栃錦に勝つ。
  発信 のぶよ
  受信 亀井蔀 東京唯研

○一月二十六日(月)  曇少雨 暖
  十一時半、新讀書社へ。堤君といっしょに東海出版へ。校正、一部分。明日、終りまで出る。神戸へかえるのを一日のばす。
  午後五時、三一へ。正木君と『哲学講座』の打合せ。
  西高校、杉並区にあり。
  やはり、どうも本郷は不便だ。
  発信 のぶよ

○一月二十七日(火)  曇 暖
  午後、新讀書社へ。森川さんといっしょに東海印刷へ。校正、全部出る。二一〇ページ。さすがに今日は若干疲れた。七時過ぎ印刷所を去る。新宿へよる。九時、寮へかえる。こんどの本はたしかに面白いと思う。問題になるだろう。
  明日神戸へかえる。「なにわ」で。
  下井草の家を借りたこと、『人間の探究』の校正を見たこと、これはこんどの上京の二つの大成果である。この十日間はやはり有意義だった。やはり上京の必要があった。それに、集金も。理想社の件、三一の件等。たしかに、今度の滞京十日は充実していた。金もかかったが、それだけのことはあった。

○一月二十八日(水)  晴 暖
  八時起床。八時半寮を出る。九時、東京駅。九時半発「なにわ」に乗る。午後七時、大阪着。八時家へつく。
  ヤスパースの書物四冊、理想社から着いている。
  発信 いずみ会、森川澄枝 醇郎 前原聿江
  受信 いずみ会 藤井佐和子

○一月二十九日(木)  雨 暖
  午後、みかげ。五時、阪大の丸山氏來る。三田、山内、湯浅等。
  ヤスパースを調べる。文献が多すぎてかなわん。
  やはり、疲れがあるようだ。
  『人間の探究』には絶大な期待をかけている。大げさに言えば、運命をかけている。それだけの価値はあると思う。
  発信 鈴木亨 井上智行 湯川和夫 橋本智子 須田宗興 栴檀寮 戸籍係

○一月三十日(金)  曇 寒
  又、冬型気圧配置。寒し。
  午後、みかげ。二宮さんと会い、田中屋で話をする。資料室、神津さん、笠井さん、後藤さん等。
  流泉へ行く。古川君に会う。
  新讀書社から『原点』がくる。
  堂本さんに会う。恩給の件。
  明日の哲研の用意。雜用。とにかくいそがしい。
  やはり、なるべく早く栴檀寮を引き上げて、自分の家の下井草へ入った方がいい。そして設営をすること。気分がずっとちがう。九日の予定。須田に來てもらう。気がつくから、役に立つだろう。駒込吉祥寺も案外不便な所だ。
  発信 藤井佐和子 林尚彦 山田宗睦 正木重之 唯研 
  受信 前原聿江

○一月三十一日(土)  晴 寒
  午後、大阪へ。阪急へよる。ミナミへ行く。梅田へかえる。シルヴァーで前原さんに会う。北浜の損保へ行く。哲学研究会。十人。九時終了。前原さん、水野さんといっしょにカームへよる。
  資料室勤務、今日で終り。全くコッケイなことを文学部もしたものだ。
  夜、季節風おさまる。これからは又暖くなるだろう。