○二月一日(日)  曇 暖
  午前、兒玉医院。延世、胃カタル。長倉君の所へよる。砂糖と酒粕を貰う。
  午後、海文堂へ。戸田に会う。後藤書店へ。本を売る話。
  横山さんから結婚式の写眞來る。
  『原点』をよむ。分らない。
  『人間の研究』の寄贈者の名前を書き出す。約五十人。
  発信 森川澄枝
  受信 森川澄枝 醇郎 阿部節 横山智子

○二月二日(月)  雨 暖
  午後、みかげ。小川君といっしょに田中屋へよる。のぶよといっしょに研究室の本の整理。
  みかげから吹田へ。醇郎へ報告。
  『新讀書』着。
  発信 林和幸

○二月三日(火)  曇 暖
  午後、御影局、神戸銀行、神戸大学。本の片づけをする。後藤書店へよる。
  東京にいるうちに、『人間の探究』の売れ行きが分るだろう。よければ、めでたしめでたしだが。
  陽子、六、〇〇〇、
発信 正木重之 橋本智子、
受信 橋本智子 藤井佐和子

○二月四日(水)  晴 暖
  午後、銀行。みかげへ。楠さん、出校。
  正木君から電報。名古屋の件。六日。
  誕生日祝日。立春。
  島田さんから紹介狀を書いて貰う。
  戸籍謄、抄本着。
  丁度、三一の用事が名古屋であるというのも面白い。どうもこの頃はついているようだ。
  葉書を沢山書く。
  明日の「いずみ会」の用意。
  発信 米沢支所、婦人民主新聞、森川澄枝、近藤勝彦、須田宗興 林省吾

○二月五日(木)  晴 暖
  午後一時半、石原宅へ。いずみ会。『矛盾論』の「一、二」について。つぎは「三」から。三の宮へ行く。吉川君に会う。センター街で杉島君に会う。エルムによる。
  『現代哲学(二)』着。
  送別会の話。私の葬式など出してくださいますな。私の死骸を御影の海へざんぶりとすてて下さいませ。
  発信 井上智行
  受信 正木重之 永安克江

○二月六日(金)  晴 暖
 午前六時、起床。延世といっしょに家を出る。七時五十八分三の宮発。十二時〇三分名古屋着。政世さんが駅に迎えてくれる。地下で晝食。名大へ行く。竹内、藤野等に会う。三一の田川來る。『哲学講座』の相談。五時、近藤宅へ行く。ウィスキーをのみすぎる。

○二月七日(土)  雨後晴 寒
  午前十一時、近藤宅を出る。十二時十分、名古屋発。七時、阿佐ヶ谷の家へつく。よもやまの話。

○二月八日(日)  晴 寒
  十時起床。十一時半家を出る。
  午後一時、赤門の学士会館。東京唯研発足總会。規約審義。運営委員、芝田進午、寺沢恒信、大井正、田村勝美、藤川覚、小松摂郎、森宏一の七人。会計監査、古在由重、野田彌三郎の二人。古在の講演。六時終了。栴檀寮へ行く。留守中、後藤宏行、土屋夫人來訪。
  唯研のことも、別に大した問題ではないが、それでも、今年は何かついているような気がする。
  『讀書新聞』(二・九)に『人間の探究』のかなり大きな広告がでている。キャッチ・フレーズもいい。
  須田へ電話をかける。明日午後一時版頃栴檀寮へ来るよし。
  これで本がベスト・セラーになれば、めでたしめでたしという所。内心実は大いに売れると思っている。二、五〇〇位すぐうれる。
  受信 淸水正徳

○二月九日(月)  晴後曇 寒
  十時起床。食後、新讀書社へ行く。『人間の探究』見本出來。
  午後二時半、栴檀寮へ。須田來る。いっしょに自動車で下井草へ。おじいちゃん在宅。延世、買物からかえってくる。須田去る。すしをたべる。
  自動車、五三〇円。
  本の出來た日に下井草の家へ入る。どうもついている。
  丸山さん、昨日引越し。
  発信 陽子 近藤勝彦 前原聿江 土屋保男 須藤宏行

○二月十日(火)  晴 寒
  風強し。
  午後、荻窪で晝食。阿佐ヶ谷の家へ行く。神田へ。理論社、小宮山氏不在。交通公社で定期を買う。新讀書へ。『人間の探究』は明日出來る。理想社へ。阿佐ヶ谷の家で夕食。下井草の家へ帰る。入浴。
  谷川雁をよむ。何を言っているのか分らない。こんなものはダメダ。
  ラジオがなくて静かでいい。

○二月十一日(水)  晴 寒
  正午ごろ、延世といっしょに外出。荻窪でチャブ台を買う。一、五〇〇円也。延世、阿佐ヶ谷へ。
  新讀書社へ。五二人の寄贈の宛名を書く。九冊持ちかえる。つまり、五二冊が著者買い上げ。前景気はいいようだ。阿佐ヶ谷へ。夕食。延世を荻窪駅に見送る。下井草の家へかえる。これから一人ぐらし。
  新讀書から『中公』『思想の科学』着。はじめての郵便物。
  『人間の探究』がうんと売れたらめでたしめでたしだ。たしかにさいさきはいい。かなり出るだろう。二月末に印税半分くれるよし。
  発信 楠照子 水野亜美 橋本智子 東電阿佐ヶ谷支社

○二月十二日(木)  晴 暖
  季節風おさまる。
  茶卓來らず。晝頃荻窪の「ふくや」へ行く。午後三時頃持って行くと。一旦家へかえる。三時半、又家を出る。「ふくや」へよる。行きちがい。新宿へ行く。『人間の探究』伊勢丹に出ている。七時半家へかえる。お隣りの池田さんに茶卓あづけてある。一日茶卓でなやまされる。
  バスの定期はやめにする。十一日以降はうらないよし。それに余りやすくならない。六五〇円のよし。
  今朝の最低氷点下二・七度。これが寒さの峠。
  「思想時評」を書く。

○二月十三日(金)  曇 暖
  午後、三一へ。新讀書へ。『穴』を貰う。『人間』の売行きよろし。三一へ。文理書院へ。『二宮尊徳』を貰う。夕食の御馳走になる。
  「思想時評」の原稿を書く。十二枚。
  ラジオもなく、新聞も郵便も人も來ない。島流しにあったような感じ。だが、呑気は呑気だ。

○二月十四日(土)  曇後雨 暖
  ひる頃、おじいちゃん、速達をもって來る。
  午後、三一へ。正木君に会う。『哲学講座』の件。
  新讀書へ。「思想時評」の原稿をわたす。浅草へ。
  『朝日』(夕刊)がはいっている。
  今日は誕生日。五十一歳になる。
  発信 図書新聞 のぶよ
  受信 図書新聞 延世、

○二月十五日(日)  曇 寒
  午前、尚彦、メルローポンティの本を持ってくる。
  午後、二時半、文理書院へ。『人生手帖』の会へ。のち、「すし」をごちそうになる。
  今度の上京の用件。下井草の家へ入ること、設営。『人間の探究』の売れ行き、印税。高校の交渉。
  発信 永安克江

○二月十六日(月)  曇小雨 暖
  ひる頃西高校へ行く。岸田先生に会う。転校の件。阿佐ヶ谷の家へ行く。
  午後、理論社へ。小宮山氏に会う。
  メルローポンティをよむ。余り面白くない。
  発信 のぶよ、
  受信 水野亜美 井上智行 陽子

○二月十七日(火)  曇 暖
  午前、ガス屋來る。うるせえ奴。
  午後、理想社へ。『人間の探究』寄贈。新讀書社へ。東販から十三冊注文。靑木書店へ。本郷へ。六時、学士会館。唯研運営委員会。九時終了。荻窪十時のバスに間に合う。
  夜、雨が降る。春雨。
  神戸大学へ『人間の探究』着。
  批評が出だしたら、大いに売れるようになる。サークルで使い出したら又売れる。たしかにこの本は売れる條件を見えている。
  受信 楠照子 後藤やゑ のぶよ

○二月十八日(水)  曇小雨 暖
  午後、図書新聞へ。唐木氏に会う。学士会館へ。土屋君に会う。森さんに会う。神田で夕食。
  発信 後藤やゑ のぶよ
  受信 後藤やゑ 戸崎曾太郎
  
○二月十九日(木)  雨 冷
  午後、二時半、平凡社へ。土屋君に会う。いっしょに大月書店へ。のち、水道橋ののみやへ行く。
  いろいろの人が『人間の探究』の批評をしてきて面白い。たしかに売れるという自信がついた。
  メルローポンティ讀了。よく分らないし、又つまらない。
  神戸の家の件、戸田がうまくやってくれればいいが。これがうまく行けば、重要問題はあらかた片づいたことになる。下井草の家のようにパッとうまく行けばいいが。
  水野さんの批評はいい。女性らしい感受性でうけとめている。
  新聞、雜誌での批評にはまだ一つもお目にかからない。『国際』はもう出たのではないだろうか。『朝日』か『週刊朝日』に出ればいいが。白石凡さんがやってくれればいいが。
  発信 戸崎曾太郎
  受信 後藤宏行 のぶよ 水野哲夫 猪野謙二 笠井淸

○二月二十日(金)  晴 暖
  一週間ぶりに晴。四月の陽気。二十二・二度。
  午後、新讀書社へ。『人間』売れ行き好調。『續人間の探究』の件。三一へよる。正木君に会う。
  『図書』の原稿を書く。出來が悪い。メルローポンティのこの本にはなやまされた。あまり意味のある本でもない。
  発信 水野亜美 のぶよ
  受信 山下正子 三田博雄

○二月二十一日(土)  雨 冷
  午後、図書新聞へ。原稿をわたす。田所氏に会う。
  日文協へ。上野へ出る。
  土ビンを買う。
  久しぶりで風呂へ行く。
  今年は神戸の奴等をアッといわせたことが二つ。一つ、東京の家をかりたこと。二つ、本が出て、しかもよく売れること。もう一つ、神戸の家を高く売ってアッといわせたい。それが出來れば、有終の美をなす。
  これからは神戸へかえることを念頭において行動せねばならない。
  『人間の探究』の批評はまだ一つも見当たらないようだ。もう出てもいい頃だが。
  発信 のぶよ 後藤宏行、
  受信 のぶよ

○二月二十二日(日)  曇 冷
  正午頃、尚彦、淸志來る。
  午後、阿佐ヶ谷の家へ。おじいちゃん、風邪でねている。尚彦の誕生日。
  受信 のぶよ 醇郎、

○二月二十三日(月)  晴 暖
  午後二時、理想社へ。佐々木と『哲学史』について相談。神田へ行き『一代女』を買う。
  草薙さんからお菓子着。
  『理想』の原稿、一気に書いてしまう。一〇枚。『理想』へ『人間の探究』の広告を出す件。これも一辺に片づく。なぜか、物事があざやかに片づく。神戸の家もそうしたいものだ。
  発信 草薙良子
  受信 小川政恭 草薙良子 橋本智子

○二月二十四日(火)  雪 寒
  雪が降る。
  午後、理想社へ。原稿をわたす。新讀書社へ。二十八日に印税の一部。
  阿佐ヶ谷の家へ。小包ついている。
  〝人間〟〒、24円
  発信 のぶよ 前原聿江 神戸徴税 鈴木亨
  受信 野島義一 鈴木亨 花崎皋平

○二月二十五日(水)  晴 寒
  午後、下井草郵便局。税金を送る。森氏と土屋氏へ本を送る。三一へ。岩波へ。粟田氏に会う。学士会館へ。銀座へ。ユーハイムへよる。又、学士会館へ。山田君と電話で話をする。三一の件。
  発信 湯川和夫 野島義一 醇郎

○二月二十六日(木)  雪後曇 寒
  午後、三一へ。正木君に会う。新讀書へ電話。新宿を歩く。
  二・二六事件を思い出す。今夜は昨夜より寒い。
  戸崎の原稿を書く。
  発信 後藤やゑ 樋口金吾 大井正 戸崎曾太郎
  受信 今井林太郎 のぶよ

○二月二十七日(金)  晴 寒
  午後、阿佐ヶ谷へよる。おじいちゃん、起きている。三一へ。『哲学講座』の件は明日。新讀書社へ。三月半出來。印税の件、出版記念会の件。『人間』売行きよろし。
  今夜も冷え込むが、昨夜よりはいい。
  葉書を何枚も書く。
  『人間の探究』の刊行、『新讀書』『理想』『図書新聞』にぼくの分がのる。『人生手帖』『図書新聞』にも『人間』の批評が出る。ここのところ、浪に乘っている。
  発信 寺島文夫 芝田進午 小松のぶよ 須田宗興 井上智行 亀井蔀
  受信 森川澄枝 水野亜美

○二月二十八日(土)  晴 寒
  午後二時、三一へ。山田君、北川君きたる。『哲学講座』の相談。
  六時、国際文化会館。思想の科学。佐々木基一の話。つまらない。鶴見俊輔、後藤宏行に会う。終バスで家へかえる。
  のぶよからの葉書。戸田、何もしてない。
  『現代思潮』(五)山田君からうけとる。
  神戸へかえってからの大問題、家を出ること。大活躍をせねばならない。あざやかに行けば、有終の美を収めるのだが。
  『アカハタ日曜版』を買う。面白くない。
  僕の名前が雜誌、新聞へボカボカ出るようになったのはいいことだ。だいぶ地盤をつくった。
  発信 水野亜美 前原聿江 本堂繁松 湯川和夫 醇郎
  受信 前原聿江 のぶよ