○三月一日(日)  雨 寒
  午後、新宿へ。阿佐ヶ谷へ行く。夕食。
  明日神戸へかえる。用意をする。
  たしかに東京にもかなりの地盤を作った。
  戸田のやつ、けしからんやつだ。とっちめねばなるまい。
  発信 新讀書社

○三月二日(月)  曇 冷
  七時、起床。七時五十三分中瀬中学校発。八時十六分、荻窪発。九時少し前東京着。九時半、東京発「なにわ」号にのる。汽車中ねむる。六時五十八分大阪着。本山へ。八時少し前家へつく。紘一郎、ねている。オートバイと衝突。大したことないらし。九時、オートバイの人來る。
  郵便物多数。渡辺義晴氏の『信陽新聞』の批評。これはずい分よく考えて書かれてある。
  渡辺氏の批評は、地方新聞とはいえ、印刷された批評の第一号。しかもいい批評だ。
  神戸での大仕事は家を売ること。
  発信 渡辺義晴 林省吾 醇郎
  受信 渡辺義晴、鶴見俊輔、榊原美文、山本晴義、山口栄子、野上とみ子、岸一枝、阿部節

○三月三日(火)  晴 暖
  午後、元町。海文堂で戸田氏に会う。靑泉社の件。流泉で古川君に会う。
  夜、井上さん來る。家の件。
  入浴。
  少し疲労感あり。
  歯がいたむ。一本抜かねばならないだろう。
  山口栄子さんの理解はまったく表面的。水野さんの理解が一番いい。

○三月四日(水)  晴 暖
       午後、のぶよといっしょに大阪へ行く。靑泉社へ行く。木村氏不在。阪急へ行く。山内に会う。シルヴァーで一休み。又、靑泉へよる。木村氏に会う。ビジネスライク。のぶよと別れ、又シルヴァーへ行く。前原聿江さん、山本和子さん、水野亜美さん來る。民科の打合せ等。前原さんからテトロンのワイシャツを貰う。
       梅田の辺りの本屋で『人間の探究』を一冊もみない。
       戸田というのは実のない人間だ。たしかに戸田の連絡が悪い。
  水野さんへの二〇部、ようやく今日着。
  大阪から吹田へ電話。明後日行くことにする。
  発信 伊集院俊隆 杉島壽美子

○三月五日(木)  晴 暖
  午後、陽子をつれてみかげ。本を持って歸らせる。阿部さん、奥村さんに会う。三の宮へ行く。古川君に会う。家の件。
  『思想の科学』をよむ。三号が一番いいようだ。
  『人間の探究』は今でもよく売れているが、書評が出だしたら飛躍的に売れるようになるにちがいない。家が建てる位に。自信はある。ここの所を突破できればいい。
  発信 山本晴義 
  受信 民科 宮下秀子

○三月六日(金)  曇後雨 暖
  『世界』(四月)と『現代ヨーロッパの精神』着。
  午後、みかげ。楠さん、今井さんに会う。
  延世といっしょに吹田へ行く。樋口金吾の件、家の件等。
  加藤周一をよむ。非常に聰明。だが、人を動かす力はない。説明があるだけ。
  発信 前原聿江 森川澄枝 山本晴義

○三月七日(土)  曇小雨 暖
  『理想』「人生手帖」着。
  午後、三の宮。流泉へよる。『人間の探究』大阪の取次に一冊もなし。
  鳩山一郎死去。
  『理想』『人生手帖』が出たので、又注文が行くにちがいない。この本は十分にベスト・セラーになる素質を持っている。しかし、あわてる必要はない。地力がある。新讀書からそのごの狀勢を知らせてくればいいが。おそらく新讀書には注文がサットウしているのではないだろうか。もしそうなら、又今後の生活について考えようもある。
  もし金があったら、神戸の家を売らずに、東京、神戸の兩方に家を持って、行ったり來たりするのだが。
  コーンフォースをだまって増刷している。
  発信 亀井蔀 瀧沢克己 宮下秀子
  受信 瀧沢克己

○三月八日(日)  曇 暖
  午後、三の宮へ。新開地へ行ってみる。
  ブローカー横井龍太郎來る。
  『人間の探究』十冊着。
  夜、庫本夫人來る。本を寄贈する。
  加藤周一をよむ。聰明だが物足りない。
  『人間の探究』、サークルで使い出されたら売れる。四月には売れるにちがいない。サークルのテキストには丁度いい。出版記念もたしかに一つのきっかけになる。案外影響は大きい。
  横井がうまくやってくれればいいが。百万円で売って、アッと言わせたいものだ。
  発信 森川澄枝 芦屋税務署

○三月九日(月)  晴 暖
  午後、みかげ。本の整理。島田さん、向井さんに会う。三の宮へ行く。『朝日ジャーナル』を買う。
  『思想の科学』(3)着。
  湯川君へ『人間の探究』を送る。
  金吾の金も、和博へ言ってやればきっと何とかする。早ければ明日にでも來る。これが來れば一息つく。家が売れるまでのつなぎ。
  明日の哲研の用意。
  発信 林省吾 湯川和夫 森川澄枝
  受信 前原聿江 山本晴義 湯川和夫

○三月十日(火)  雨 冷
  午後、大阪。シルヴァーで前原さんに会う。明治校舎へ。哲学研究会。十人。第四章。
  横井氏等家を見にきたよし。
  甘粕さんへ本を寄贈する。
  経濟的にももう先が見えたというものだ。いまは一寸ピンチだが。金吾の金がくれば、つなぎとして息がつける。和博に言ってやれば、何とかするはずだと思う
加藤周一をよむ。聰明だが、物足りない。
それでも一つ一つ問題は解決して行く。
二、三日中に土地を買う人が手付金でも持ってくるにちがいない。ぼくの予想。当るかどうか?
発信 吉井政俊 亀井蔀 伊集院俊隆
受信 亀井蔀 伊集院俊隆

○三月十一日(水)  晴 寒
  午後、みかげ。後藤書店をよび、本の整理をする。
  森信成に本を送る。
「思想時評」書き出す。
発信 醇郎
受信 鍵本芳雄 山本晴義

○三月十二日(木)  晴 寒
  午後、大阪。阪急へより、山内に会う。四時、シルヴァー。山本夫妻の送別会。
  冬型の気圧配置、寒波。
  「思想時評」の原稿。これは全くしんどい。「續人間の探究」の方がいい。
  発信 森川澄枝

○三月十三日(金)  晴 寒
  午後、みかげ。後藤書店來る。本を売る。二万七千円也。
  ブローカー來たよし。
  「思想時評」の原稿終り。
  神戸大学の教官たちは『人間の探究』のことを何も言わない(猪野さんは例外)。感覚のマヒしたバカども分らないだろう。モンテーニュやパスカル以上のものだ。
  夜、室内、一〇~一一度。厳寒。一時は二〇度を越したことがあった。
  それでもかなり東京に地盤を作った。ぼくは東京で活躍すべき人間だ。
  発信 岸一枝 亀井蔀
  受信 岸一枝 湯川和夫

○三月十四日(土)  晴 寒
  午後、三の宮。モナミへ行き、中村さんへ本を贈る。流泉へよる。
  「思想時評」を送る。雜誌を一つ持っていることはたしかに強みだ。
  紘一郎の問題。西高校か新宿高校かということになると、新宿高校の方がよさそうだ。
  発信 古在由重 正木重之
  受信 古在由重 鈴木亨 醇郎 栫紀一郎 新讀書社 林省吾

○三月十五日(日)  晴 寒
  午後、大阪。教員会館で民科の出版記念会。湯川君出席。二十数名。五時終了。淸水、元浜君といっしょにシルヴァーへよる。
  今日の『人間の探究』の批評は愚劣だった。水野さんがいれば、まともな批評も出ただろうが。
  発信 森川澄枝 芝田進午
  受信 淸水正徳

○三月十六日(月)  曇 冷
  午後、京都へ。法律文化社で亀井氏に会う。『哲学史』の件等。「志る幸」で夕食。十時家へかえる。
  これで用事は一段落。後は土地のことが大問題。
  発信 井上智行 鈴木亨 前原聿江 靑木春雄  
  受信 樋口芳子

○三月十七日(火)  雨 冷
  午後、みかげ。楠さんに会う。後藤書店、まだ本をとりに來てない。流泉へ行く。猪野さんに会う。ボントンへよる。
  夜、延世といっしょに加藤俊子さんへ電話をかける。土地の件。
  小田切秀雄へ本を送る。
  発信 林省吾 小田切秀雄

○三月十八日(水)  晴 寒
  午後、みかげ。後藤書店、本をとりにくる。
  流泉で古川に会う。
  税務署ほどシャクにさわるものはない。
  自分で書きたいことを自由に書く。他の哲学者たちが論理学をやっていようと、認識論をやっていようと、そんなことはかまわない。自分の好きなことをやる。そこにオリジナリティがある。
  西鶴をよむ。
  樋口和博から葉書。近い中に送金してくるだろう。
  紘一郎、レ・写眞、無事。
  発信 淸水正徳 小宮山量平 山田宗睦 戸田曾太郎 
  受信 淸水正徳 野島芳子 樋口和博 東京唯研 特別徴税 戸崎(ママ)曾太郎

○三月十九日(木)  晴 冷
  午後、大阪。阪急へよる。山内不在。創元社へ行く。矢部、保坂、田代に会う。シルヴァーへ行く。水野さん、前原さんに会う。前原さんから出版記念会の写眞を貰う。
  どうも神戸にいるとボケる。
  発信 特税
  受信 藤本進治 横山智子

○三月二十日(金)  晴 暖
  午後、みかげ。井上庄七君に会う。三の宮へ。テレビを見る。栃錦、朝汐に負ける。
  ひる頃、橋本、横井來る。土地の件。
  夜、井上さんを訪う。
  引越しのための片付け。
  発信 東京唯研 栫紀一郎
  受信 井上智行

○三月二十一日(土)  曇 暖
  ひる頃、横井、広上來る。広上と契約する。七五万円。手付金十パーセントをうける。
  午後、一美へ弔電。そごうで買物。後藤へよる。テレビを見る。朝汐、若の花に勝つ。
  伊藤三平死去。
  新讀書社へ写眞を送る。
  どうも今年はついているようだ。
  こんど東京へ行ったら大活躍をする。雌伏十年。
  今日家と土地を売ることにきまったのは大事件だ。しかも、延世が東京へ発つ前の日に。
  発信 森川澄枝 前原聿江 橋本智子 醇郎

○三月二十二日(日)  雨後晴 暖
  午後、祐二郞といっしょに庫本さんのテレビを見る。栃錦優勝。
  ひる頃、横井來る。転売の件。
  ひるね。睡眠不足を回復する。
  朝、延世と紘一郎、東京へ出発。
  今日は一日中電車にのらず。こういう日は全くめずらしい。久しぶり。
  夜、室内十七度。もうそう寒くなることはないだろう。
  『人間の探究』、もう初版が終っていい頃だが。どんな具合だろうか。発刊以來一ヶ月以上たつ。印税、後約二万円。これが終る頃は再版が出る。当分月一万円位は入る予定。
  発信 和郞 伊藤一美 濱田広告社 
  受信 鈴木亨

○三月二十三日(月)  晴 暖
  午後、みかげ。神戸銀行、郵便局。分校で楠さんに土地の話をする。
  五時、元浜君の所へ。鈴木君と会う。『現代思潮』の相談等。八時辞す。
  夜、雜用。
  後は、紘一郎の編入試験の問題。これが具合よく行けば、それで終り。後は引越しの事務的のことだけ。
  発信 小宮山量平 正木重之 後藤宏行 のぶよ
  受信 石井順三 林和幸 伊藤一美

○三月二十四日(火)  曇後雨 寒
  午後、みかげ。楠さん、今井さん等。後藤さんにタイプのテキストをわたす。送別会の件。四月二十五日。流泉へ。古川君に家の件を話す。
  豊多摩高校から今頃願書がくる。
  発信 井上智行 寺島文夫 延世 石井順三
  受信 小田切秀雄

○三月二十五日(水)  晴 冷
  午後、京町で「情炎」と「若き日の信長」を見る。
  夜、庫本さんへ行く。家の件。
  朝汐、横綱、大内、引退、明暗のコントラスト。
  祐二郞、終業式。
  紘一郎、明日発表。今年はついているから大丈夫とは思うが。
  発信 図書新聞
  受信 恩給局 図書新聞 のぶよ

○三月二十六日(木)  曇 冷
  午後、県住宅課へ。家の件。
  図書新聞社から電報。返事の電報を打つ。
  延世から電報。紘一郎、新宿高校パス。
  今年は全くついている。もう後はビジネスだけ。
  後藤書店、雜誌を持って行き、パッキング七つを持ってくる。
  「論壇展望」の原稿。
  今日はいろいろの問題が解決して気分がいい。お祝いにブドウ酒を買ってきてのむ。
  発信 荒木繁 住宅課 図書新聞、電報、寺島文夫 須田宗興 醇郎
  受信 のぶよ、伊藤一美 前原聿江 図書新聞・のぶよ電報

○三月二十七日(金)  晴 暖
  花が咲き始める。
  みかげ。楠さん、今井さん、猪野さんに会う。大阪へ行く。山内不在。
  理論社社から一万円來る。
  「論壇展望」を書く。終り。発送。
  コーンフォースをよむ。明日の用意。
  実際役に立つ哲学者は東京でもあまりいない。ワガハイの活躍すべき余地は大いにある。
  発信 理論社
  受信 理論社 のぶよ 御影局

○三月二十八日(土)  晴 暖
  朝、延世と紘一郎かえってくる。
  午後、大阪。阪急へよる。山内不在。ミナミへ行く。五時半、シルヴァーへ。前原さん來る。明治校舎へ。哲研。第七章。十時発の阪神夜間特急の最後でかえる。
  粟田氏から訳書を貰う。
  新讀書が何も言ってこないのはけしからん。樋口もおかしい。
  発信 粟田賢三
  受信 伊藤一美 井上智行

○三月二十九日(日)  曇 暖
  桜が咲き始める。
  午後、大阪。阪急で山内に会う。千里山の和郞を訪う。七時半辞す。
  発信 いずみ会、林和幸 林省吾
  受信 図書新聞 いずみ会

○三月三十日(月)  雨 暖
  午後、御影局。速達を出す。東京へ金を送る。恩給の研。分校へ。猪井さん、楠さんに会う。住宅課へ電話。永恵氏不在。三の宮へ。古川君に会う。
  『理想』四月着。つまらない。
  「論壇展望」を書くことは影響が大きいにちがいない。しかも、四月というのはタイミングがいい。「論壇展望」を哲学者が書いたのは久しぶりだ。三浦つとむは問題外。眞矢さんがだいぶ前に書いたことがある。つまらなかったが。哲学者で書ける人はあまりいない。
  『思想の科学』(四号)をよむ。面白い。
  発信 寺島文夫・森川澄枝(速達) 山本太一 杉浦武 井上智行  
  受信 山本太一

○三月三十一日(火)  晴 冷
  午後、みかげ。正徳氏に会う。送別会、民科の件。
  大阪。吹田へ。醇郎にそのごのことを話す。
  住宅課へ電話。宅地の件。
  陽子、下宿へ荷物をはこぶ。
  「論壇展望」原稿。
  発信 樋口和博
  受信 近藤忠議 図書新聞 東京唯研 日文協