○一月一日(水)  晴後曇 暖
  午後、紘一郎、祐二郞をつれ、三の宮から元町へ行く。流泉書房、壽へよる。
  理論社から三千円來る。今年はエンギがよさそうだ。ゴヘイカツギのようだが。
  年始狀を書く。
  今年はどういう年になるだろうか。毎年同じことを考えるが、今年はいい年になってほしいものだ。神戸大学も余りひどすぎる。
  発信 年始狀、理論社、小宮山量平
  受信 年始狀三〇枚 理論社 野上とみ子

○一月二日(木)  雨後晴 寒
  午後、神戸へ行く。西新開地へ初めて行ってみる。大したことなし。新開地を歩く。今年は人出が少いようだ。
  夜、山本英一さんの所へ行く。久しぶりでかるたをとる。
  亀井蔀の奴、だまっていてけしからん。理論社以下になった。
  ハタの原稿書き始め。今年は少しあばれてやろう。
  発信 年始狀、
  受信 年始狀、一〇枚、

○一月三日(金)  晴 寒
  午後、延世といっしょに小川君を訪う。夕食の御馳走になる。延世を家にかえし、小川君といっしょに永積さんの所へ行く。いろいろの方法による相談。
  ハタの原稿。
  今日は今迄で一番寒い。室内、六度。まさに厳寒なり。
  発信 年始狀、
  受信 年始狀、一〇、

○一月四日(土)  晴 寒
  今朝、零下三・四度。
  午後、杉島君、三浦さん來る。
  夜、ハタの原稿。
  今年のお正月は久しぶりで、いくらかお正月らしかった。迷信のようだが、今年はエンギがいいような気がする。
  発信 年始狀、
  受信 年始狀、一二、

○一月五日(日)  晴 寒
  午前、兒玉医院。
  年始狀の返事が來はじめる。
  武市、岡田、服部、井上、世代的に共通点がある。
  ハタの原稿「哲学の貧血とその克服」終了。十四枚。
  発信 年始狀、
  受信 年始狀、四〇、

○一月六日(月)  曇 暖
  午後、みかげ。今井さん、楠さん、加藤さん等に会う。流泉書房へ行く。
  ハタへ原稿を送る。
  夜、雜用。
  一番不愉快な年始狀は服部英次郞。彼はすでに過去のものだ。
  ハタへ書いた文章は反響をよぶにちがいない。今年は少し活溌に動いてやろう。
  発信 年始狀、宮原克己 西牟田久雄 鈴木亨 門田勝一
  受信 年始狀、二四、醇郎

○一月七日(火)  晴 暖
  午後、みかげ。入学願書の書類を貰う。
  海文堂で戸田氏に会う。流泉書房で古川氏に会う。
  年始狀、山形から來はじめる。
  堀さんに弔電を打つ。
  ソ連、人間ロケットに成功? 先日のマクミラン声明といい、今年は面白くなりそうだ。大きい変化がありそうだ。
  『駅前旅館』をよむ。
  とにかく神戸大学のやったことはひどいものだ。頰被りをしているのだから、一層ひどい。
  『源氏物語(一)』着。今年の出版物が出始めた。
  発信 年始狀、渡辺史子、陸井四郎、三上陸
  受信 年始狀、二〇、

○一月八日(水)  晴 寒
  午前、兒玉医院。みかげへよる。三浦、伊藤(昭)、楠、井上(庄)等としゃべる。野中さんに会う。宮原さんに会う。
  家へ午後四時頃かえってモチをたべる。
  入浴。十三貫五〇〇匁。正月にモチをたべたので太ったらしい。
  田口君が野中氏と話をしていた。田口君の転任の件か? 井上庄七君にも何かあるらし。年度の変り目で移動があるらし。そこを利用できないか。
  『駅前旅館』をよむ。
  発信 年始狀、渡辺史子 醇郎
  受信 年始狀、五、

○一月九日(木)  曇 暖
  午後、みかげ。靑木、永積、長倉氏等に会う。
  留守中に工藤弘吉氏來る。
  松本新八郎へ『『弁証法讀本』を送る。
  猪井さん、行方不明。
  『駅前旅館』讀了。面白くない。
  発信 年始狀、松本新八郎 平凡社
  受信 年始狀、一〇、平凡社

○一月十日(金)  晴 暖
  午後、みかげ。宮原さんに会う。野島さんの件。小島さんにも会う。猪井さん、現れたよし。陽子の小説、かえってくる。
  年始狀、印刷三〇〇枚、普通一〇〇枚、全部終了。返ってきたもの、三枚。
  今日は一日中モチをたべる。御飯もパンもうどんもたべない。
  西鶴をよむ。
  発信 湯川和夫、渡辺史子、野島義一、山本晴義
  受信 年始狀、一三、

○一月十一日(土)  曇 暖
  午後、スカイ・シネマへ行く。「エデンの東」と「王子と踊子」を見る。
  夜、頭痛。映畫をみて疲れたのだろう。グレランをのんだらよくなる。
  『政界往來』の原稿書き始め。
  発信 岸一枝
  受信 年始狀、一〇、和郞、堀㐂望

○一月十二日(日)  小雨 暖
  午前、兒玉医院。
  午後、日文協一月例会。西鶴、好色五人女。猪井、三浦、杉島氏等と白ダンへよる。
  年始狀、一枚かえってくる。計四枚。
  『政界往來』の原稿。
  岸一枝さんへ「『弁証法讀本』を送る。
  夜、室内十七度。暖冬。しかし、近い中にカンパがくるそうだ。
  大相撲はじまる。朝潮まける。
  受信 年始狀、九、

○一月十三日(月) 雨 暖
  午後、大阪。渡辺さんに会い、民科の打合せ。創元社へ行く。保坂氏に会う。
  葉書一枚かえってくる。
  『弁証法讀本』五冊持ち歸る。創元社から。
  『政界往來』の原稿終了。七枚。発送。
  そう思いつめることもないだろう。悠々としかもきつくやろう。それにしても神戸大学はひどいものだ。このことははっきりいわねばなるまい。機会ある毎に言う必要がある。たしかに今迄は遠慮しすぎていた。馬鹿げたことであった。 
  ナハ、兼次候補当選。アメリカがっかり。
  『人民』は割合に人がよく讀んでいる。
  受信 年始狀、八、林和幸

○一月十四日(火)  雨後曇 暖
  午後、みかげ。小川君に会う。『徒然草』の演習に出る。
  年始狀、一枚かえってくる。
  陸井氏から電話。民科に出席。
  湯川君へ、民科ニュース「大阪より」を送る。
  二十日の文学部教授会に、非常勤講師任用計畫案が出る。ぼくの年間非常勤講師の件も入っているだろう。これはこれとしてとっておくこと。そして、あとは経濟問題を考えること。とにかく、今年の後期、山元一郎をもってきたのは奇怪なことである。とにかくここで少しあばれてやろうか。陽動、陰動の兩方から。
  発信 三上陸 湯川和夫
  受信 年始狀、二、三上陸、湯川和夫、

○一月十五日(水)  晴 寒
  午後、和幸君來る。
  陽子、祐二郞をつれて元町へ行く。三好野で相撲のテレビを見る。
  いよいよ寒波襲來。
  『国際』に『人民』一月号の批評が出ている。
  今日は兒玉医院へ行かず。これからは適当におろぬくことにしよう。
  松本新八郎氏に二枚續きの葉書を書く。
  夜、おそく風呂へ行く。十三貫五〇〇匁。変りなし。
  死をもって神戸大学に抗議する。ああいうくさった相手には、これ以外に方法はないだろう。今度は徹底的にやる。こっちで何もやらなければ、又頰被りですませるだろう。
  ハタへ出した文章、なかなか出ない。
  発信 松本新八郎(二) 黑沼栄一
  受信 松本新八郎 結城光太郎 松本新八郎

○一月十六日(木)  晴 寒
  ひる少し前、和幸氏といっしょに御影分校へ行く。のぶよをよび、天治、白ダンへ行く。午後、和幸をユーハイムまで案内する。
  夕方、和幸歸ってくる。九時半去る。北陸へ。
  寒波襲來。
  民科の通知來る。
  もし今井さんから、年間非常勤講師の件について正式に話があったら、経濟問題をはっきり出してやる。死の抗議をする。今度は譲らない。トゲのように、ドキッとささってぬけないようなことを言ってやる。早く話があった方が面白い。おとなしくしていれば切りがない。ここで怒るべき時だ。
  ゴーゴリの『外套』をよむ。面白い。夜、室内七度。一気に十度下った。
  受信 黑田梅夫 岸一枝 渡辺史子

○一月十七日(金)  晴 寒
  午後、富士銀行灘支店へ。御影分校へ。長倉君と会う。
  森信成も勝手な人間だ。
  ハタはぼくの原稿をのせない。けしからん。
  二十一日には徹底的に、はっきり発言してやろう。ここまで來たらもう絶対だ。何も恐れることも、気がねもいらない。ロールバック・ポリシイだ。もし、かりに七月までこのままで行ったとしたら、徹底的にバクロしてやる。
  『外套』讀了。面白い。
  今朝は零下二度。明朝はもっと下るだろう。
  受信 森信成 政界往來

○一月十八日(土)  晴 寒
  午後、入浴。靑木でテレビをみる。
  渡辺史子さんへ『弁証法讀本』を送る。
  『図書新聞』(三三・一・一八)で小田切秀雄が書いている。『論壇展望』はいい。
  ゴーゴリの鼻をよむ。
  受信 三一書房

○一月十九日(日)  晴 寒
  午前、兒玉医院。
  御影から大阪へ直行。二時、浪速莊着。哲学部会一月例会。司会をする。シンがつかれる。森さんの発言を制限するのが一仕事。しかし、今日の司会はかなり上手であった。陸井四郎氏「人工衛星」について。六時、終了。参加多数。のち、若草へよる。
  大相撲八日目。全勝若の花、一敗、千代の山、栃錦、大内山。案外、大内山に優勝をさらわれるかも知れない。

○一月二十日(月)  晴 暖
  寒気ゆるむ。
  午後、みかげ。教授会あったらし。三浦さん休み。
  『思想』をよむ。いいのは瀧沢克己だけ。古在、竹内、又かという感じ。
  吉葉山、引退。
  『月刊社会科(2)』着。
  考えてみれば、昨日の例会は劃期的であった。会のはこび方は万点。
  民科では森一人が困りものである。森さんがいなければ、民科はなごやかに、具合よく行く。森さん一人のために不愉快な思いもあるし、エネルギーも使う。しかし、昨日の例会ではかなり押えたし、本人もいくらか考えたろう。どうも精神検査を要するようだ。
  古林㐂楽のような奴は一度思い切ってどやさなければいかん。おとなしいことではごまかしてしまう。
  発信 湯浅光明(朝) 猪井久美子
  受信 和郞

○一月二十一日(火)  曇 寒
  午後、みかげ。
  六時、新島さんの家へ。そのごの相談など。
  永積さんから『中世文学論』の寄贈あり。
  ハタはぼくの原稿を出さん。けしからん話だ。何も問題になるような所はない筈だ。
  年間非常勤講師の件が早く出てくるといい。それにからんで、追及してやるから。
  靑木君も民科のような場所へ出ると意気地がない。研究室ではえらそうにしているが。
  渡辺さんへ電話。横山さんの件。
  皆、森さんにはうんざりしている。森さんの話がすめば、ホットするという人もある。アンチ森の統一戦線が出来そうである。これでは全く仕方がない。それが分っていないから困る。精神カン定を要する。電機(ママ)洗濯機がタイハイ的であるというに至ってはバカらしくて同意して(聞いて)いられない。パチンコはいいというだろうか。(判読不明)
  発信 横山智子
  受信 和幸 野島義一

○一月二十二日(水)  晴 寒
  午前、兒玉医院。みかげへよる。岡田さんに会う。
  山口さんから薬着。
  『人民』の原稿、書き始める。
  哲学科で、今日何か相談したらし。靑木君も、つまらないことで怒って、下らない人間だ。大事なことは忘れている。
  午後、入浴。靑木でテレビをみる。
  受信 新関岳雄 山口栄子

○一月二十三日(木)  晴 寒
  午後、みかげ。湯浅さんに会う。楠さんに会う。かなりショックをうけたらしい。当然のことだ。
  野島さんから原稿來る。
  昨日、横山さんから電話かかったよし。長谷川さんが返事をしてくれた。
  今日あたりが厳寒らしい。夜、室内六度。寒い季節風が吹く。
  楠さんに一カツくらわせたのはよかった。そうそうおとなしくしていたら仕方がない。
  ゴーゴリをよむ。
  神大の人間は何といやらしいのだろう。全く下らない人間が揃っている。もっと知性をもち、すっきりとしなければならない。
  発信 秋田和美 横山智子 門田陽一 野島義一
  受信 秋田和美 門田陽一

○一月二十四日(金)  晴 寒
  午後、みかげ。野島さんの原稿を小島君にわたす。三浦さん出勤。神谷君きたる。
  夜、原稿を書く。風止む。
  今年はなんだか様子がちがうようだ。書き物も去年の秋から多くなってきた。除々(ママ)に自信を回復してきたような気がする。少しだが、カム・バックの傾向が出てきたようだ。
  受信 松田道雄 三浦すみ子 横山智子

○一月二十五日(土)  晴 寒
  小川君、岸さん不参のため、理論部会なし。
  午後、入浴。祐二郞といっしょに靑木でテレビをみる。若、栃に勝つ。
  小田切秀雄の「論壇展望」(『図書新聞』)はよろしい。小田切氏へ葉書を書く。
  夜、原稿。
  結局、有効な方法は「死」より外ない。楠さんはたしかにかなりショックをうけたようだ。今井さんに話すにちがいない。年間非常勤講師の話が出たら、もう一太刀あびせてやる。
  小田切秀雄は、当然ぼくの『弁証法讀本』をとり上げるべきであった。
  やはり「死」で攻めることは一番強力だ。
  発信 小田切秀雄

○一月二十六日(日)  曇後雨 寒
  午前、兒玉医院。血圧、一〇六。
  午後、御影分校。哲研。神谷、宇田、大西、宮崎さん等。のち、田中屋へよる。
  大相撲千秋楽。若の花、十三勝二敗で優勝。鏡里引退。
  夜、原稿。
  小田切秀雄がぼくのことをとり上げないのはおかしい。
  『弁証法讀本』も大阪の出版という点でかなりのハンディ・キャップがある。
  発信 湯川和夫
  受信 林省吾

○一月二十七日(月)  曇 寒
  午後、みかげ。小島君、東京からかえってくる。岩波の件を聞く。三の宮へ。流泉で古川君に会う。
  夜、原稿。
  発信 粟田賢三

○一月二十八日(火)  晴 暖
  午後、みかげ。猪野さん、小川君等に会う。かえりに、杉島君、三浦さんといっしょに田中屋へよる。結婚式の件。
  粟田氏へ『弁証法讀本』を送る。
  神戸大学のいやらしさ。もうおとなしくしてもいられないようだ。
  夜、原稿。
  小川君に手紙を書く。もうぼくは関与しない。後は小川君にまかせる。
  発信 門田陽一 小川政恭

○一月二十九日(水)  小雨 冷
  午前、兒玉医院。みかげへよる。猪野さんに会う。
  午後、入浴。
  夜、井上さんへ行く。小川君きたる。
  神戸大学には実にいやらしい人物がいる。
  ハタもおかしい。つまらないものを先にのせている。
  『山形文学』着。
  夜、原稿。
  哲学科の件。意識的妨害。その位のことが分らんとは靑木靖三もあわれだ。とにかく、いやらしい人間がいる。殺してやりたい。
  若の花、横綱になる。
  発信 三上陸

○一月三十日(木)  晴 寒
  午後、みかげ。廊下で竹内好氏に会う。横山智子さん來る。湯浅さんの所へつれて行く。科学史の件。横山さんと田中屋へよる。奈良の話など。
  珍しく郵便一つもこない。
  悪質の宣伝をする奴は、しゃくにさわって仕方がない。靑木靖三もだらしがない。武市の妨害にちがいない。
  「新島さんをいたむ」を書く。三枚。
  「人間の研究(二)」を終了。三〇枚。(二)の方が(一)より面白い。
  『武藏野夫人』をよむ。面白くない。
  発信 常井直正 森信成

○一月三十一日(金)  晴 寒
  午後、みかげ。杉島君來る。三浦さんもいっしょに「たこやき」をたべる。二人は猪野さんの所へ。
  猪野さんから葉書。明日、国文研究室へ來てくれと。大した用事ではあるまい。
  『人民』の原稿を送る。
  粟田さんから葉書。別に具体的にきまってはいないらしい。
  レッド・パージの問題を、ようやく党でもとり上げ出した。今年は去年よりは発展するだろう。
  岡田正三にはヒューマニズムがない。服部さんも無責任だ。当然のり出して、岡田をおさえるべきだ。岡田正三は何とかしてぼくにケチをつけようとしている。いやらしいものだ。
  受信 猪野謙三 粟田賢三