二人でやりませうと決心をしたものゝなかなか
思ふようにはかどりません、主人は本を箱に詰め、
私は衣類を行李に入れたり道具を箱に入れたり
して居ります、醇郎さんから「避暑にゆく位の積り
で思い切つて荷物を減さねば入らない」と御注意頂いて
ゐます、信州ゆきの荷物の方が多くなるように思います
主人も長く居りましたから挨拶に行かねばならないところも
ありますし 私は陽子の病気見舞を方々から頂いて
ゐるのでその方の挨拶もしなければならず 毎日外の
仕事と内の仕事でなかなか大変です、縣營
住宅は押入一間の一つに半間のくぼんだところが二つしかないそう
で物置もなし 生活に必要な最小限度のものだけ持つてゆきます、