御葉書拝見、小生の前の手紙はもう御覧になつたでせ

う、皮膚炎悪いようで困りましたね、手を回して新薬探

して見ませう、

和郎の建てた隣家へ三,四日前晝強盗がはいりました、

犯人は例の目の前の家の奴。それは警察へ連行されまし

たが未だヂーサン、長男が晝は寝て夜盗む仕事をしている

ので物騒で仕方がない、女、子供だけでは危険です、しつ

かりした留守番が見付かれば(多分見付かる)御盆の頃一寸

信州へ行きます、昨晩摂兄來訪、摂兄にも十三日頃信州へ

行くとのこと、一緒に行くか別に行くか今の処一寸分り

ません、留守番は長く頼めないので小生二,三日です。和

郎には葉書出してあるが連絡つきません、

非常に忙しかつたので毎晩三,四時間位しか寝られない

日が続き食慾は失せだいぶ衰弱しました、會う人が皆小

松さん近頃顔色が悪いという、そういうときに強盗騒ぎ

が生じ余計神經使い閉口しました、仕事も一段落しまし

たので休養も考えています、八月末迄の仕事が又控えて

いますから余り長く休養もできませんが御盆の頃は休養

としたく思つています、

大阪は随分暑いです、七月颱風來る前の日拙宅で38゜に

なりました、本日(8,6)は35゜、相当暑いです、昭子近來

元気になりました、純子は二,三日7゜2、7゜4位の発熱して

いますが大したことはないようです、昨日市場で美代吉と會

つた、後妻氏と榮子と口論ありたる由。明後(8日)摂兄と二人で笹岡家訪問の予定。

(小松証子→小松いさの)

長い間御無沙汰申し上げて

居りました。

昨日はおはがき有難うござ

いました。

お母様の皮膚炎お悪いよう

でお案じ申し上げて居りま

す。晝間お忙しくいらつし

やいますのに夜おやすみに

なれなくては御身体にもさ

わりますでせうし何とかよ

いお藥でもないものでせう

かと申して居ります、

当方昭子もだんだんよくな

りました、子供が二人もあるとかわる

がわる病気をしますので本当に大変です、

お父ちやまが毎夜おそくまで御勉強なさるので

大分お疲れになられたやうです。お休みですから

なるべく休める日はお休みになつて休養しなけれ

ばと仰言つていらつしやいます、あつさもそろそろ

峠を下ること思ひます、昨年の今頃の信州の生活

をなつかしく思ひ出して居ります、

ではどうぞくれぐれも御身御大切にあそばします

ようお願ひ申し上げます、        かしこ

八月七日           証子

御母上様