赤んぼの名前は小松醇郎(アツオ)

一日御出しの御葉書うれしく拝見いたし候 先日のお葉書も有りがたくいただき申し候

其後私の経過極めてよろしく今は赤んぼの世話だけ一人でいたしあとはねたり起きたりいたし居候

前より頼みつけの看護婦十日間つききりといたし候事とて何一つ不足なく手の届かぬ事無之候ひし故御安心下されたし 今度は前より非常に滋養分を食し出産当時の如きは一日に牛乳四合卵五六個鯛味噌汁オカヒ等食し居り今も沢山にいろいろ食し居候間肥立非常によろしく顔色等も大によろしと皆申居候

乳は沢山出でて衣類を志ぼるほどに候間御安心下され度し 昨年にこり候故今度は乳に最注意いたすつもりに候 赤んぼは醇郎(アツオ)と名づけ申し候 非常に丈夫なる子にて生まれし時はやくびすわり居り丸々と太り居り候乳沢山故日に日に太り居り候

いもじや母上は専ら摂郎の日夜の世話をいたしくれ候随分困難の様見うけられ候 私の世話は凡て看護婦がいたしくれ候

今度ㇵ武平様も澪子摂郎も皆風一つ引かず丈夫に候間御安心下されたし

お宮参りの着物はコリか等に入れ書留小包にて御送り下されたし

母上様其後御様子如何に候や 薬は送り致さんと存居る折から出産いたし候事とてそれことてそれきりとなり申訳●●候

父上様にも御変りあらせられず候や

五月始め武平様東京出張あり其時いもじや母上丈送り返し私共に七月末迠当地に居らんかとも存候 皆五月末に帰国の方よろしく候や御都合御伺申し上候

いもじや笹岡末吉氏当地に奉職の事となり候今日明日子頃來阪の事故七月末二所に帰り貰ハば汽車中も好都合と存じ候(私の長師範の友人の恩田氏も四五月半に来阪奉職の事に候)

先ㇵ一寸用事のみあまり長く書きては疲労してはと存じ次にゆつり候

 

かしこ

四月三日

御両親様 御まへに