其後は心ならずも御無沙汰申上げてしまいました、いつの間にやら初夏の頃に
なりました、御機嫌およろしく何よりに存じます、只今はお忙しい事と御察し
申上げます。先頃醇郎様お越しの折は何よりの品を頂戴致しまして
有難く御礼申上げます、手せまな家の上何のおかまいも出来ず失礼致しましたが
御機嫌よくおとまり下さいましてうれしく思ひます、山形でも病氣つゞきで
実に大へんで御座いました、何の役にもたゝぬとは思ひながら私も出来るだけ働い
てまいりました、何分引越しの件が気になる様子で殊に延世は御母様の
御都合がわるくお越しのないのが困つた様子で経験もなくどこから手を
つけてよいか只すごして居りました、摂郎さんが先に入らしつた後
御母様お出をまつて荷物かたづけするとの事で御座いましたが
先日の葉書によりますと一同で月末頃上京なさるとの事で
御座います、子供づれゆゑ大へんで御座いませうと察しられます、
それからおたのみの紙入は口はチヤツクと云ふお話でしたがその様に丸孝へ
たのみました、只今は百円札がをもで大きくなりますがそれでよいと思ひ
ましたがなるべく早くとゆつてきました、出来ましたら御送り申します、
どうかお身を御大切になさいます様、御無沙汰おわびかたがた御礼まで
主人よりもよろしく申しました
六月三日