小松攝郎→小松いさの
1947年4月3日

 毎日同じようなので今日高波さんに來て頂いて診て
貰いました、打診でわ分らないが、十日以上も熱が
下らないのわおかしい点もあるのでもう少し様子お見
てからレントゲン写眞おとつてみるとゆうことでした、
 毎日平熱になるかと思つてやきもきしても毎日
同じ様です、午前中わ熱も無く気分も良いので
今日わいいかと思つていると午後からわ気分も悪く
熱も出て來ます、午前わ具合が良いのでだまされ
ますが、午後になると熱が出るのでがつかりします、昨
夜わ七度六分でした、七度二分から七度八分位迄
出ます、明日から薬お代えて、それで下らなけれ
ばレントゲンおとつてみます、今迄も下熱剤わ入つて
います、こんな調子でわ諏訪えも何時行けるか
分りません、高波さんも諏訪行わ中止した方が良い
と云われました、今の汽車でわ相当丈夫でないと無
理だと思います、白石さんも横濱え行つて來て
肺炎になり、治りましたが一時わ危かつたと
ゆうことです、
 去年以來大変忙しく三面六臂の活躍おした
ので疲れたことわたしかです、熱お計つてみたのわ
三月二十三日頃ですが、今から考えれば、その前も
恐らく熱があつたのでしよう、風邪おこじらせた
のでしようが、少しおかしい節もあります、

 毎日諏訪え行こうと思いつつ、段々のびて來ま
したがどうも致し方ない次第です、身体わ大事
で無理わ出來ません、
 「農地調整法」「農地調整法の解説」の載つて
いる『法律時報』とゆう雜誌(去年の五月号)
お結城光太郎君から借りました、持つて行こうと
思つていたのですが、別封で御送りします、
土地のために身体おこわしたら全くつまらない
ことで、主客顛倒です、十分に御注意願い
上げます、
 私以外の者も未だ咳わしていますが、大体よく
なりました、

             四月三日   攝郎

 母上様

 四月に入つてタバコ、郵税が上り、それにつられて物價
が猛烈に上つて來ました、樂觀するのわ石橋湛山
ばかり、この調子で行けば破局もそう遠くないでしよう、
此処まで來ればカンフルももう利かないでしよう、大衆
わ益々困窮するばかりです、
 三月に原稿料が三千円程入つたので、色々のもの
お買つたり、玉子、牛乳等榮養もだいぶとつています、
苦勞して色々送つて頂かなくても要するに金があれ
ば良い訳です、これからも入る筈の金があるので
特に困りませんが、併し金わある方が良いものです、
物價わ上るにきまつているので、借金しても物お買つて
おく方が賢明です、