一昨日私はいつものやうに一番早く晝のごはんがすんだので、お湯を取りに行こうと思つて、やかんのある所へ行くと、何だかけむいやうな、こげくさいやうな臭がするので、座敷の方を見ると、こたつの人の出た後のやうな所から青いやうな白いやうな煙がもくもくと出てゐて、天井まで一つぱいになつてゐた。私は思はずあつ煙と、ちようどからまつてゐたたんの引つかゝつたやうな聲で叫んだ。私はそれを見ると、もとねえさんが二階に一人で寝てゐて、やぐらを眞黒にして、かけぶとんまで穴を明けた事を思ひ出した。其の時に、おつかさまは、ばけつさら水を持つて行つたので私は此時だと思つてやかんを持かけたのを、そこに置いて、ばけつを持つて飛んで行つた。其の時にねえさんがそうだそうだと言つてゐるやうだつたが、私はむちゆうだつたのでよく聞へなんだ。おつかさまや、おばあさんも、のこのこ飛んで行つた。私がばけつを持つて其の部屋のしきいの所まで行るとおばあさんはこたつを明けてゐた。私は知らぬまに、ばけつをぶらさげたまゝ立つてこたつの中を見てゐた。見ると、こたつの火の中に手ぬぐひが落ちてゐて、其こから、しけた藁をもやしたやうに煙ばか出てゐた。皆手ぬぐひでよかつたとさも安心したやうに言つてゐた。