九月一日 曇り 日もさす時有り 朝より服薬せず
大に気分よし 衣類のほどき 手入等色々なす
トマト赤くなり食べきれぬほどなり毎食後
必す食す
九月二日 二百十日 あんじられたが 天気よく風もなくよい
二百十日なりし内の田も上二枚全部穂か出下の田の
水口少し出ない葉か有るが後二三日で出揃ふ
と思ハる かんぺう引きをなす午後休んで後
㐂七氏へ行つて干草まるけの都合を聞く明日
来る由 菜種 魚を買つて 帰りに正勝氏方へ
寄りお茶の御馳走になり 政平氏に逢ひ
雞のオンのヒナを手放す様頼む夕方来り
三羽二百五十円で持つて行く
和郎より手紙有り工事の金か入らなくて帰
れなかつたと云つて来る
欄外メモ 来信 和郎
九月三日 天気よく朝夕涼し 㐂七氏干草マルケに
来る 午後三時頃終り後 ヒエ取りをなす
夏敷ふとんを干しかや等干して仕舞ふ 干いた
さヽげもろこし等取る 夕飯後映画見に行く
十一時過ぎに終り帰りて休む 寒いほとなり
欄外メモ ○㐂
九月四日 朝夕寒く日中晴天暖かなり
家の中の掃除 ぜん 棚等 掃除形つげ 午後休み
明日九月五日ハ主人の死去せし日なり 今晩御飯を炊
き供へる
欄外メモ 来信 のぶよ
九月五日 曇り涼し 雞の巣の掃除をなす
とまり木を板になす 矢ヶ崎に菜種買ひに行く
下の千房さん方へ一寸寄り だりやの礼を云ひ
等す 午後休み其後いもしや電気やへ礼に
行くドフロクの残りを上げる 帰りて庭の菜蒔
く処の草取りをなす いもしやへ行く前に
午後四時前にお経を上げる 夕飯にいろいろ作つて
供へる故人に通するや否や つまらないものなり
九月六日 晴天 日中暑し 昨日ハ雨か降りそうなり
し故菜も降つて後の方かよい様に思ひしが何時
降るとも分らぬので 朝より畑を深く掘りそこへ
タイ肥を沢山入れ土をかけ水を沢山かけ そこへ
下肥えを入れ土をかけて結球白菜 山東白菜
イネコキ菜 を蒔く一仕事すんでほつとしたり
蒔きものは時節をはすせば工合悪しき故
まだ ほーれんそうを蒔かねばならず冬菜も
欄外メモ 来信 百枝 和郎
九月七日 天気よし涼し 百枝に手紙 和郎醇郎に
はかきを出す 客用枕かけ等洗ふ 夏座ふどんを
一帖洗つて見る 美しくなる 矢ヶ崎へ買物
かたかた手紙を出す
九月八日 曇り 麻の着物二枚洗ふ 上の畑
の木ウリの棚をこわし 上の畑と ねぎさヽきの
中 倉の後の畑全部草取りをなす
米をかますに移す軽く四つ有り 金物を
上の倉へ移す 今年の味噌の手入をなす
山岸いつ氏孫をつれて寄りカボチヤ枝豆
木ウリ等にてお茶を上げる
欄外メモ 醇郎より速達
九月九日 雨降り 半天 カタビラ二枚 のつくろいをなす
倉にて布さがし小布整理等をなす
夜 さヽげ豆皮むき等す 夜も雨降り寒し
講和條約成り安保條約も調印なる
吉田さんの演舌等新聞にて見る老年なから実に
しつかりして居り日本の国の代表として世界のヒノキ
ブタイにて立派になし遂げ実にゑらひ事なり
九月十日 天気よく暖かなり 新やへ蚕ひかしに
手伝ひに行く
九月十一日 天気 くもり夕方よくなる
㐂七氏来る朝米すりに行く私も手伝ふ
午前矢ヶ崎に買物に行き米買人の家に寄り
頼む 米悪しく仕方なし つきに行く
買人来りしも間に合ハず返す夕方㐂七氏
ホビエなり終り 御社宮寺 庭の木ウリの後
にホーレンソー菜を蒔いてくれる 夕方又
買人来り 私か置いて利用部へ行つて見しに
出来居り 急き帰り㐂七氏取りに行つて
貰ひ さまして渡す 大にきれ居たり
欄外メモ ○㐂
九月十二日 天気雲有り 洗濯 ケンチウのふとん
を干して仕舞ふ 夏座ふとんを洗ふ 自分身のまハり
のもの全部洗ふ 午後かんぺう引き今年の最後か
ナベカマの全部 川に持ち出し洗ふ 疲れたり
九月十三日 天気 家の中全部掃除をなす
午後夜具の肩当等直し居る 午後五時のバス
にて醇郎来る
九月十四日 曇り 大阪の用意をなす持
参するものを出し袋につめ等す 午後矢ヶ崎へ
買物に行く 酒買ひに今井一さん方迄
行く スキヤキをなす
九月十五日 雨降り後止む 小包作りをなし十一時頃二人にて
小包出しに行く ひる後色々用意し倉に運び
クロールピクリンを入れる ねぎ玉ねきも蒔く
九月十六日 八時のバスにて醇郎と共に出発塩尻にて長野より
の汽車に乗る超満員 善光寺参りの団体客大阪着いし
困難甚たしく二等車に乗り替へる 名古やより電車にて
四日市市の証子の里に行き一泊す(土産小豆升フロシキ ミスヾアメ)
九月十七日 早昼にて茲を出て夕方吹田へ着く小包も着いて
居るすみ子の大きくなりしにハ驚く
九月十八日 醇郎と病院へ行く 谷村 志水 両先生に金五百円
とみすヾ飴一個土産として上げる 谷村先生金ハ
返す 醇郎に前に薬を送つて貰ひしにつき千円渡す
摂郎の処へ行く畳ひとくなり居り六帖上敷コザを買
て敷いてやる電車賃として 摂郎に千円渡す
神大の事につき 井上小川氏よりいろいろ支持しくれし事を
聞く井上氏方へ醇郎とアイサツに上る 菓子折り一個持参す
晩井上氏摂郎方へ来て話しくれる
和郎の処へ行く中々しつかりした立派な家なり
和子きれいなみなり幼稚園へ行つて居るよし
醇郎の処昭子大きく大人らしくなり居る
すみ子昨年ハラジオ位より何も云へなかつたのに
何でもよくしやへり顔も頭も働き言葉もよく使ひこ
なし驚く許りなり丸々たり丈夫そうなり昭子ハ
少しきやしやの感じ 学校で課外に画を習ひ居
るとか 役に立ち先生の手伝ひをよくやるとか少し
過労になるのでハ無いかと思ハる
摂郎の処陽子ハ大きく 大人の様になりおとなしく
おおどかの感じ 二人の男の子ハ大きくなり
居り 中々親の云ふ事も聞かず男の子ハ大変なり
始めにハ病院へ醇郎と同道し貰ひしが後は
一人で行く 道の横切りあぶなく病院内ても迷ふ
様にて神経を使ふ事多し
九月末志水先生九州の別府へ学會に行かれし
につき休み だんく後れる