三月一日土曜
天気よく少し暖かになり三月ハ争はれないもの
と思ふ新聞を読み後小包を出しに行く笹岡さんへ
過日寄つて小包を作り直しヽ御礼に卵五つ上げる
セキト耳なりとの薬を買ふパンカリン糖も買ふ
昼食後卵五百匁持つて事務所へ行く醤油ローソク
石けん等買ふ帰りて百枝に手紙を書き茅野の
物売りのおばさんに頼んで出して貰ふ流しの氷も大方
とけ掃除し黒豆がぼちやおしたし等作るやつと身体の動ける様になる
発信 手紙百枝へ小包も ヒ4 5
欄外メモ 卵五百匁

三月二日 日曜
時節ハ争はれないもの昨日今日倉の上の雪三尺以上も有りしか半分程
落ちて倉の前は屋根迄届く程壮觀なりシヤベルで歩ける様にする
井の上ハ何回形づけしや覚えなき程なり毛織の座ふとん醇郎の
居りし頃使ひよごれ洗ひ置きしものを作つて置かうと始
める虫食で穴だらけ一日ついでも未だ終らず明日ハ仕
上るでせう
首より上の薬母も欠ささず飲み居りし故効有るかと昨日買
つて来て飲む耳なりは止まずしばらく飲んて見てだめなら
上諏方へ行くつもり寒いので一日でも後の方かよいと思ふ
来信 手紙 伊藤よし江氏 ヒ0 2

三月三日 月曜
天気よく暖かなりしも午後少し吹雪寒し
倉の屋根の井の方の雪落ちそうなりし故井の上に張板
三枚置きしに大なだれ有り張板一枚割れる井の上へハ
屋根を作る事急務なり倉の屋根にも雪よけの棒を
入れる事は必要なり 座ふとんの裏の切を倉に入りて探
かし来り張つて張る一枚丈仕上げる 甘酒を仕込む
今日はお節句なればお雛様を出せばよいですが
厄介故止める昨年ナフタリンを入れて置きし故大丈夫ならん
来信 ハガキ 綾子 7

三月四日 火曜
天気よく寒さ大にゆるむ午前座ふとんを二帖仕上げ
午後平常のしゆはんの袖を作り居りしに田中その氏
泣いて家出して来たと云ふ養子と折り合い悪
るいよし 話を聞いたりして過ぐす
ヒ1 2

三月五日 水曜
天気よく時々曇り おひるに天ぷらを手伝つて
貰ひ昼をすました処へその氏のむすめ二人の
子供をつれて来る帰つてくれと云つて来しも返らず
今晩よく話しての上に帰るかよいと云つて今一晩
とまる事にする
松雄氏俵を三つ作りくれるお茶を上けて帰る
夕飯にとろヽを作り松雄氏を招くゆつくり
話して帰る後又その氏と話し十一時にやつと休む
ヒ3 6

三月六日 木曜
天気よく暖かなりその氏の娘来り帰る事に
なる菓子を持つて来る早く昼を餅を食べ
させて返す
その氏か使ひし夜具ふとんを干し敷ふとんの綿の出
た処を直しなどすじゆはん袖を作る此日寒気
かすると思ひ夕飯頃計つて見しに三七、六分有り
夕飯後タイアジンを二つ飲み休む
明日の米の供出に今朝雄氏を頼む

欄外メモ 夕方三七、六 タイアジン二つ

三月七日 金曜
曇り少し雪舞ふ
朝熱三六、一 ヒル頃三六五
今朝雄氏米三俵と六升程持つて行つてくれる後
から私も行く十一時頃に終り昼頃より少し寒
気かする様故昼食後一つ飲む
いろくの雑用をなし雪を掘りて大根を出し洗ふ
雞又巣入りを始める雪の中へタラヒにふせる
耳のがんく無くなりよく聞こ江る タイアジンの作用にも有るか等と思ハる
ヒ 1
欄外メモ 朝三六、一 ヒル三六、五 タイアジン一つ
午後六時三七、二 午後九時三六、九 ダ一つ

三月八日 土曜
朝起きて見しに一尺四五寸の大雪に驚く直ちに支度して
屋敷内をかく大変なりしそれより朝食をすましヽ
処へ雪かきに出よと云つて来る直ちに支度して出掛ける
大雪なり春の雪ハとけて重き事限りなし終つて
帰りて十一時なり少し当り新聞を見て昼飯を作つて
食し午後ハ床を敷きて休む安静にして居ると咳が
少い様なり二三日休んて見やうかと思ふ
百枝より手紙有り二人の子供秀才の様にて仕合せなり
ヒ4 7 来信 百枝
欄外メモ 朝三六 ヒル六、五 午後三時半三六、九

三月九日 日曜
晴天暖かなり長くすてヽ置きし洗濯をなす肌着上下
上つ張り足袋軍手夜具ゑり枕かけ腰のホータイ全
部ヒル前かヽる 午後政一郎氏方へ卵十持参す
ラシオの音楽を聞く帰りて洗つたものをついだり袖を
つけたり凡て手入す
今年になつて始めてと云ふ位暖かにて身体のびくす
ヒ2 4
欄外メモ 朝六時半三六 午後八時三六

三月十日 月曜
昨日ハはだかの洗濯と云ひたき位暖かにて日なたて洗濯を
して居れば汗が流れる程なりしに今朝起出で
見れば又雪降りにて驚く足ぐつに雪かきにて
屋敷内一通りかく 其内に止む午前中ハこだつに
て読書等す 午後日も当り暖かになる支度して
二時頃より今朝雄氏方へ行き夕飯迄御馳走になり
七時頃帰る 味出し百匁持参す三俵の米の運賃ハ
取らず
ヒ 1
欄外メモ 朝三六 午後八時三六、三 ダイアジン一ツ

三月十一日 火曜
晴れ寒気は相当強く凡て凍り居る
十時頃より出て北大塩の役場へ行く掛かりの人留守
書類も分らず麦の供済金ハ農業会の口座へ
入れる様に頼み帰る帰途いもしや一さん方へ寄り
風呂しきの催促をなす一ヶ月以上にもなつて未だ探がし
もしないらし無責任も甚し午後農協支店へ卵持
ち行きいろく買物をなす夕方新やのおはさん婚礼
客呼ひに寄るお茶トフロク等上げしはらく話して帰らる
ヒ3 6
欄外メモ 零下七度六分 卵五百匁一千匁

三月十二日 水曜
寒気かなり強し何でも凍り居るコヌカか必要故
米つきに行かうとせしに新やの松雄氏持つて行つてくれ
て助かるいろくの雑事をなす夕方半天のエリ
をなし裏さかし等す夕方醇郎に手紙を書く
伊藤よし江さんにも書く
新やの婚礼四月一日の由振袖一式を貸す今日
ハコセコも持つて行つて上げる
巣入の雞中々なほらず厄介なり
醇郎より小包手紙 マスイノ薬ヒロゲン ヒ3 4
欄外メモ 零下一度六分

三月十三日 木曜
朝ハ随分温度低くかりしが日中ハ暖かにて春の
日さし有り 午前中醇郎摂郎よし江さんに手紙
を書き醇郎とよし江さののを村へ出しに行く一本ハ
切手無く一日後になる仕方なし午後手紙を出しなから
糀やへ行くビンを返すフスマも一メ匁買つて来る
帰りに新やへ寄りお茶を御馳走になるそれから少し
ほときもの等す
発信 摂郎 醇郎 よし江さん ヒ 2
欄外メモ 午前六時零下十度

三月十四日 金曜
昨日は雪も大きに低くヽなり道もよくなり春の日さし新
しき心地せしに朝起きて見ればどんくと雪降り居り驚き
たり午後三時頃迄降る屋敷井の上凡ての除雪をなし
それより組の雪かきに出る
半天の表をついたりはいだりする こたつの下掛け破れ
し処をつぐ夕方綿入ノうら等布さがしをなす
半天も綿入も裏を張らねば使へず
ヒ3 5

三月十五日 土曜
晴れ
朝より洗濯つヽいて張物終つて昼飯(おそくなりしも)
それよりサカン氏方へ行く 去年の礼から本年の農事を
頼む快く引き受けてくれる嫁さん里へ行きしとて留守さかん氏
とゆつくり話して帰る 苗間を半分位さかん氏方と一緒にしてくれる
事を引き受けくれる 人参牛房ナス青節成胡瓜トマト
ダリヤ咲百日草 ポンく咲アスター萬寿菊 金蓮花 アスター
等の種を貰ふ
ヒ3 4

三月十六日 日曜
天気よし温度も大に暖かになる
倉の屋根の雪大きな音を立てヽ沢山落下し倉の
前迄沢山入る後残りハ少し明日暖かなれば皆落ちるか
綿入の半天ついだりはいだりヘラ付けをし夕飯前迄に
縫ひ終る 綿ハ明日フクメル
北山村湯川の寺にオソーデン有り念佛講の人々行きしが
咳か出るし日帰りならば疲れる故行かず
今日より巣入の雞よくなる
ヒ2 3
欄外メモ 零下三度七

三月十七日 月曜
天気よく暖かなり 咳がどうしでも完全に全快せず
ぜろくしたり咳が出たり老年でなほらないと
云ふなら仕方ないがなほるものならなほしたい矢ヶ崎の
牛山さんへ行く水薬をくれて注射を一つなす
帰りに買物等しおそい昼飯を食し床をのべて休む
眠り目がさめて少し熱気の感し有りはかりしに三七、三
分有り
ヒ2 4
欄外メモ 零下五度三分 午後三七、三

三月十八日 火曜
天気よく暖かなり朝より雑用をなすシマ台を出し見しに
餘りに古くきたなき故新やで他より借りるといふ
半天のフクミ綿を入れたヽみつける
野菜の雑煮に卵を落し午後念佛講に行く彼岸の
入り故
牛山医師の注射か飲み薬か右の背中痛み全身
こりし様に寒気有り薬のフク作用でハ無いかと思ハる
咳ハ別に変り無い様なり
来信 のぶよ ヒ2 3
欄外メモ 朝三六、六 零下三度六 夕飯後三七 ダイアジン一ツ

三月十九日 水曜
朝ハ小雨ナリシモ十時頃より大降りとなれり政一郎氏妻山羊乳
を持つて来てくれる寄つてお茶を飲んで十二時頃帰らる
朝も午後も綿入のつぎをなす
牛山さんへ行く日なれども服薬の工合よからず却て発熱等有り
雨も降りし故止める念佛講も休む
午後寒気すると思ひしに熱有り服薬して床につく歌集
を見たり下手な歌をつくつたりする夕方は下熱す
非常な大雨にて裏の内より水汲みに来る内の井も少しにごむ
ヒ3 4
欄外メモ 山羊乳四合 朝三六、二 午後二時三七、四 午後五時半三六、一 アスピリン一ツ

三月二十日 木曜
雨ハ止みしも寒さハ又かなり強くなる
かぼちや切りいか等を煮て念佛講に行く
夕方帰りし処へ笹岡栄子さん来る誠一さんも
大きくなり居る夕方なれば清一さんきげん悪るく
寄らずに帰る土産アワオコシと石鹸を頂く
来信 摂郎より 新らし流れ ニ冊 ニュース一部 ヒ2 3
欄外メモ 朝七時三六、一 十一時三六、九 アスピリン半分 午後八時三六、五

三月二十一日 金曜
天気よけれども雪も氷もとけず相当寒し
井のまハりの雪を少しなほす 米を洗ふ野菜も
むろから出して洗ふ天ぷらを作り念佛講に行く
大変の人なり子供も一ぱい来り菓子など貰つて
帰る
朝六時零下七、四 ヒ3 4
欄外メモ 朝六時三六、〇

三月二十二日 土曜
天気よし 雑用をなし用意して念佛講に行く
五時半頃帰る
朝三人にはかきを書くそこへ醇郎より手紙来る
ダリアの芋をほしいと云つて来る 私ハすつかり
忘れ居たりそこは雪深くそんな事体力へる処へ
行かず
念佛講にて咳かなり出る服薬を忘れ行きしなり
カン音様へ五十円供へる
発信 摂郎 醇郎 和郎 来信 醇郎 ヒ2 3
欄外メモ 朝三時半三六、七 午後八時半三六、四

三月二十三日 日曜
朝起き雨戸引きあけ見しにこわ如何雪こんくと
降り相当につもり有り驚きたり彼岸も明けに
なるに如何なる年なりや
十一時頃止む気の候ハ暖かなり すし一重 おしたりなます
を作り念佛講に供へる すし米五合 かんぺう二把
にてすし十本作る残りなし 一重に八本山盛りなり
庭の面にまだらにとけし雪の間より
水仙のつぼみふくらみて見ゆ
ヒ3 4

三月二十四日 月曜
晴れたり曇つたり中々寒し
午前中綿入のヘラ付をなす午後は彼岸明けの
日にて寺へ行く米一升つヽ持参すいもじやの人も来り
中々にきやかなりしいもじやから八人位来らる
げんとうをいろくなす茶菓の御馳走になり
夕飯迄頂く其後にて御詠歌のおどりをなす
六時半帰宅す
ヒ3 5

三月二十五日 火曜
天気よくかなり寒し午前中昨日ヘラ付せし綿入の裏
丈縫ひ終り昼食後事務所へす買ひに行き一美
氏方へ寄り都合を聞きしに明日が都合よしと聞き
し故帰りて矢ヶ崎へ明日の買物に行くフタ肉トーフ
コンニヤク生菓子ミカンそれにペナパスタを買ひ帰る
明日の煮豆をなしなますを作り等す
毎日新聞に和歌と俳句と有るが何れがやさしい
事□□ふ和歌の方よきか思ふ
巣入りノ雞産ミ始メル ウマナイ日十三日 ヒ1 4

三月二十六日 水曜
晴れ暖かなり此日一美氏夫妻を招き有れば朝より
家の中掃除形つげねきを洗ひ切りおしたしを作り
ナマスも作りスキヤキの用意すつかり出来る午後二時頃
奥さん来る四時頃一美氏来るてぬくひ二本生菓子を頂く
お茶を飲みつヽ話しドブと甘酒を上けしも一美氏は手も
つけず すきやきにおいしく夕飯を終りゆつくり話し
九時半頃帰らるそれより後形つけをなし十時半頃休む
亀雄氏雪を形づけ井に近道を作りくろし
此日一美氏結婚記念日なりし由都合よかりし

三月二十七日 木曜
くもり昨夜レスタミン二粒飲みし故かねむき様なり
新聞等包分けしたり雑用に半日終る雞の飼を煮
て与ふ午後オニバの下駄やへ行き咳薬を買ひ糀やへ
行き玄米一升持参ツケ賃十五円て一枚半外に此間に上けるべき
だつたと一枚餘分にくれる家の人二人留守居女一人にて
帰りて御飯を炊き作ろうと思ひしが明朝にする事にして
綿入の表を縫ふ 夜迄雨
オニバの咳薬をねる時飲みしに夜間一回位より咳出ず効有る様なり

三月二十八日 金曜
朝起きて見しに雨晴れ暖かなり敬老会に老人お寺へ
行くによき日なり午前中綿入を縫ひ上げ早昼にてお寺
へ行く同研会の男女の人々歌おどり等いろいろ有り
中々上手にて驚く許りなり

三月二十九日 土曜
天気よし綿入のふくみ綿をなしそれより綿づくり
正午迄にすむ午後新やへ用有らば手伝ふつもり
にて行きしが用なしとの事に帰り半天の綿づ
くりをなし之れをくけ上げ尚綿入の袖丈つける
暖かなり日も長くなり仕事の能率上がる
ヒ3 6

三月三十日 日曜
天気よく暖かなり 暑つ過ぎる程なり
朝より新やへ手伝ひに行く
午後三時頃背中寒い様なりしに三八、度有り
タイアジン二つ飲む 又手伝ふ 夕飯後帰り
十時頃三七、八分なり又二つ飲む
ヒ4 7
欄外メモ 午後三時三八ダイ二ツ 午後十時三七、八ダイ二ツ

三月三十一日 月曜
くもり正午頃より雨降る
朝雑用をすまして竹内医師に行く診察を受け
薬を貰ひ来る中央病院前よりハスに乗り
十一時帰宅それより種々の雑用をなし一時頃新やへ行く
座敷を掃除しくれ有る餘りしちらし置き恥かしき
心地す 上便所の掃除等なす
ヒ2 3
欄外メモ 朝六時三六、八 正午三六六 午後三時三七、二度
夜中より