○五月一日 (水) 曇後雨 暖
メーデー。東京地方は50万。山形は6千。
朝、延世、市役所等へ行く。陽子、道を迷って泣いて歸ってくる。意気地がなくて仕方がない。
午前、学校。
午後、日活へ行く。“キューリー夫人”を見る。数年振りで映畫らしい映畫をみる。
心理、哲学の問題を作る。明日から三日間試験。
発信 日本読書組合.
○五月二日 (木) 雨後曇 暖
今日から三日間試験。今日は立番三つ。心理(勝川さんの代りをする)、哲学の試験あり。
自由大学出講の大山さんに会ふ。
片岡さんから牛肉170匁貰ふ。夕食スキヤキ。久し振りにうまい牛肉をたべる。坂部さんへ50匁あげる。
一年振の試験。試験はいやなものである。
関さんが“雪国”創刊号を持って來てくれる。
新來の教官も礫な者はゐないやうである。
家の生活が不愉快である。
答案をみる。実に面白くない。
受信 池田和、中野宗直.
○五月三日 (金) 曇後晴 寒
試験、立番二つ。独語(理甲二)の試験あり。
留守中に菅藤が來て、“飛躍”第二号を置いて行く。
延世も駄目な人間である。知性が無い、むやみに興奮する、精神力が足りない。
○五月四日 (土) 晴後曇 暖
午前、学校。立番一つ。これで試験も終り。
大畑さん、花岡さんと一緒に教育会館へ行く。千歳講演会の午餐会。十二時から一時迄。
教育会館から裁判所へ行く。山本判事に会ふ。濱田の件。家主の所へ行って家賃等を拂ふ。日活へよって“元禄女大名”をみる。
三木清訳“ドイッチェ・イデオロギー”読了。
鳩山一郎追放。
○五月五日 (日) 曇後雨 冷
午前十時、勞協へ。勤勞学校の相談。
午後からずっと家にゐる。萩生來る。
人事課の武田氏來る。
夜、福永來る。近野來る。
十二日に谷地町へ行く。
片山内閣になりさうである。保守戦線の敗北、民主戦線の勝利である。共産黨の大臣も出来さうである。面白くなって來た。
発信 中村吉治.
○五月六日 (月) 曇後晴 暖
午前、学校。答案の残りをみる。実数計算と記入。神谷さんに手傳って貰って正午迄かヽる。
午後、学校。久し振りでテニスをする。
醇郎榮養失調の由。
授業は十三日(月)から。五月中は古い時間割による。
“跋”を除いて高山岩男著“續西田哲学”読了。
発信 母(婦人公論).
受信 母、日本読書組合.
○五月七日 (火) 晴風強し 暖
午前、学校。成績表作製。
午後、遠藤へよる。兩銀へよる。学校へかへる。
夜、宇治川先生の所へ行く。不在。
入浴。祐二郎を入れる。
社会黨内閣難産。自由黨と手を切らねばならない。
三木清の論文をよむ。
発信 高山法彦、民主主義科学者協会.
受信 高山法彦.
○五月八日 (水) 曇小雨 冷
午前九時から及落会議。午前、二年生。畫食に家へかへる。午後、一年生。五時二十分終了。
発信 母、ナウカ社、中野宗直.
受信 母.
○五月九日 (木) 晴後曇 むし暑し
午前、学校。
午後二時―四時、火曜会。花岡さんの“兎の卵”の話。花岡、深町、小松、白石、平松、寺崎、佐藤、黒沼、㐂多の九人。
母へ300円を送る。
夜、西尾がくる。
発信 社会教育協会.
受信 須田宗興.
○五月十日 (金) 雨 冷
自由大学。題は“日本哲学の諸問題”。午前十時―十二時、午後一時―三時、講演。三時―三時四十分、質問。相当の勞働也。
須田から“国家と革命”着。
幣原は何時のまにやら大統領になれり。
発信 須田宗興.
受信 和郎.
○五月十一日 (土) 曇小雨 冷
午前、学校。谷地町から電話あり。
午後、二時、日赤へ。社会教育協会の理事会。寄附の件等。四時細谷牛肉店へ。懇親会。六時散会。第二回自由大学へも出ることになる。
発信 百枝.
受信 百枝.
○五月十二日 (日) 晴 寒
谷地町へ行く。十時山形発、十一時神町着。バスで谷地町へ。国民学校へ行く。畫食。午後一時から四時迄講演。自由大学と大体同じ話。四時―四時半、質問。對葉館で夕食。六時、バスで寒河江へ。寒河江から汽車で山形へ。七時半家へつく。谷地文化協会発会部の記念講演也。
受信 佐藤文龍、日本読書組合
○五月十三日 (月) 曇後晴 寒
今日から授業開始。文三、哲学、中世哲学に入る。
午後、大映へ行って“彼と彼女は行く”を見る。
この数日又寒い。
受信 原清次、民主主義科学者協会.
○五月十四日 (火) 晴 寒
午前、学校。雑用。
午後、同じく。三時―五時、インターハイの相談。
夜、宇治川さんを訪う。又、不在。高波さんの所へ行く。
煙草配給あり。きんしとのぞみ。みのりなし。
バリカン着。
発信 母(雑誌)、醇郎(雑誌)、布川角左衛門、民主主義科学者協会.
○五月十五日 (水) 晴 寒
文二、哲学、アウグスティヌス。十時四十分日赤へ行く。文化聯盟常任委員会。勤勞学校の件。午後一時終了。新関から握飯一ヶ貰ってたべる。商工経濟会等へ行く。
学校へかへる。高山法彦がくる。左沢行の件。
四月三十日附、荒田氏五高教授となる。
○五月十六日 (木) 晴 冷
午前、文二、論理。開講の辞。
午後一時半、土屋氏、橋本氏とともに軍政部へ行く。勤勞学校の件。三時、学校へかへる。四時すぎ迄教授会。後、大畑さんの所へよる。
漸く四月分の俸給が出る。
母から手紙來ず、心配である。
吉田茂に大命降下。幣原内閣と変りなし。
夜、神谷秀夫がくる。
発信 母、原清治.
○五月十七日 (金) 晴後曇 暖
午前、学校へ常井氏來る。文二、アウグスティヌス。二十日に酒田へ行くことになる。学校へ宇治川氏來る。
午後一時すぎ女子師範附属国民学校へ。学事振興会評議員会。始まったのは二時半。おそろしくスロー・モーションである。五時から懇親会。六時すぎ辞す。
二十日の講演(青年学校)は延期して貰ふ。
○五月十八日 (土) 曇小雨 暖
午前、学校。雑用多し。自由大学に土屋清氏來る。ひる休み級長任命式あり。
午後一時半―四時、ニッセイで映畫同好会。
夜、小川と今野がくる。
入浴。
発信 木村先生(青年学校).
受信 芦田弘夫.
○五月十九日 (日) 曇後雨 寒
左沢行。十時家を出る。十時四十五分山形、十二時左沢着。高山氏迎へてくれる。白田氏の所で畫食。
午後国民学校へ行く。二時―三時半、“日本の生き方”について話をする。聴衆五十名。三時半―四時半、質問。白田氏の所で夕食。六時左沢発、七時二十分山形着。雷雨に逢ふ。妙な天気である。
母から手紙。無事なり。どうも着かない手紙があるらしい。
吉田茂組閣断念。面白くなって來た。
受信 母.
○五月二十日 (月) 曇暴風 暖
午前、学校。文二、スコラ哲学。十一時、軍政部へ行く。文化聯盟の件。山新へよる。学校へかえる。
酒田行。午後一時五十分家を出る。駅へ。三時山形発、少しおくれて六時二十五分酒田着。田中氏が迎へてくれる。下小路の菊水ホテルへ。街はお祭りでにぎやかである。
受信 中谷あきえ、民主主義科学者協会.
発信 芦田弘夫.
○五月二十一日 (火) 晴 暖
七時起床。九時田中氏が迎へに來る。中学へ行く。十時―十二時、講演。
午後一時―三時、講演。三時四十分迄質問。鈴木正敏氏來る。公園、街を見る。五時菊水ホテルへかへる。
夜、嘉治氏來る。
発信 八木清.
三木清著“社会科学の豫備概念”読了。今讀んでも少しも古くない。
○五月二十二日 (水) 晴 暑
七時起床。田中氏來る。八時、田中氏とともに縣の自動車で駅へ。八時半酒田発、新庄で乘りかへ、十二時二十分山形着。家へかへる。畫食。
発信 八木清、岸啓司.
受信 八木清、今泉三良、母.
余目行は延期。
菊水ホテルは感じ悪し。嘉治隆一は面白くない人間也。
午後四時五十分家を出る。五時五十分山形発、七時米沢着。誰も出てゐない。茜屋へ行く。教育課の者ゐる。一泊。酒田より感じよろし。
吉田内閣成立。
○五月二十三日 (木) 晴 冷
七時起床。九時少し前工専へ行く。九時―十一時、講義。畫食。
午後、正午―二時、講義。二時四十分迄質疑。質問は米沢が一番秀れてゐる。河内氏とともに街を歩く。閑散な街である。文化協会へ寄る。茜屋へかへって夕食。六時駅へ。六時三分米沢発。少しおくれて七時四十分山形着。八時家へつく。留守中に鈴木さん來た由。
三木清著“觀念形態論”読了。
受信 須田宗興.
発信 今泉三良.
○五月二十四日 (金) 晴 冷
午前、学校。文二、トマス等。
午後、外出。遠藤へよる。山新に寄り、土屋氏に会ふ。兩銀による。二千円を越す。日活へよる。
夜、萩生外二人が來る。
雑用多し。
発信 岩波茂雄氏遺族、中村吉治、日本読書組合.
○五月二十五日 (土) 曇 暖
午前、学校。
午後霞城館へ行く。“迷へる天使”を見る。篠田病院に田口を見舞ふ。
夜、草賀が來る。反動的なり。
久し振りで自由な土曜日曜である。
受信 母.
○五月二十六日 (日) 小雨 暖
おそくおきる。やはり疲れてゐる。
午後、外出。散髪。買物をする。
“濹東綺譚をよむ。
発信 中谷あきえ.
○五月二十七日 (月) 小雨 寒
午前、文二、哲学。中世、終り。封建制と民主制の話。
午後、学校。久し振りで余裕ある時間をすごす。
鈴木安藏著“民主憲法の構想”をよむ。憲法の勉強をする。
発信 醇郎.
受信 母、今泉三良.
○五月二十八日 (火) 小雨 暖
午前、学校。
午後二時からホールでロゴス会。田辺さんの“哲学通論”をテキストにする。
○五月二十九日 (水) 晴 暑
午前、文三、哲学。近世に入る。
ひる休み、級長会。
午後二時勞協。勤勞学校打合せ。
レーニン著戸田愼太郎訳“国家と革命”読了。
○五月三十日 (木) 晴 暑
午前、文二、論理学を始める。
午後三時―四時半、教授会。
夜、橋倉氏來る。吉田収來る。
だるくて気持が悪い。
発信 母.
○五月三十一日 (金) 晴 暑
午前、文三、クザーヌス等。
午後、篠田病院へ行く。田口道友今朝死去。
午後三時から火曜会。憲法草案についての座談会。五時半終了。深町、吉野、小松、花岡、村岡、常木、寺崎、黒沼の八人出席。
資格審査の調査書を書く。
來週から時間割変更。余は六時間(一週)と変る。但し全部合併。
マルクス著堺利彦訳“ゴータ綱領批判”をよむ。