昭和二十四年

○一月一日（土）　　雨　　暖
午前、雜用。
午後、外出。元旦の街頭風景をみる。日本娘
とよつぱらいが多い。
“哲学と人間”十册到着。
去年わ６册の著書を公にした。戦後のarbeitわ
これで一応まとめられた。今の所次の著作の計畫わ
ない。生活上でもここに一轉機を來したので、これ
から更めて再出発したい。
夜、雜誌をよむ。
発信堀尾勉
受信北岡哲、母

○一月二日（日）　　雨　　寒
午前、亘理がくる。　後から大野さんが來る。メッ
セージを書く。
午後、大野さんと一緒に事務所え行く。
野島さんの奥さん來訪。
夜、“妻よねむれ”をよむ。
発信　須田宗興、
受信　須田宗興、安部博、創生社、

○一月三日（月）　　晴　後雨　　暖
午前十時、日農え行く。細代会議。
午後、るす番をする。延世と子供三人街え行く。
夜、“妻よねむれ”讀了。
書留が４つ來る。
発信　東大新聞（二）、民科、民擁同、民友社、
長谷川泉
受信　民科、民友社、東京大学新聞、塙書房、
民擁同、和郎、白土吉太郎、金子平次郎、
板井道生、

○一月四日（火）　　晴後雨　　暖
午前、書物の荷造りなど。あちこちえ送る。
午後、外出。各方面ともまだ活動が始まつ
ていない。
“実存哲学批判”１０册着。
子供のうるさいのにわ全くかなわん。
夜。雜誌をよむ。
発信　和郎、白石静男、創生社、
受信　河合和男

○一月五日（水）　　雪　　寒
昨夜から降雪。　どつと大雪がふる。
午前、雜用。
午後、外出。富士え行く。電産で今井君に会
う。一緒に全逓え行く。　民擁同の件。
夜、雜誌をよむ。

○一月六日（木）　　雪　　寒
午前、雜誌をよむ。
午後、外出。　学校え行く。学校とは静かな所
である。山新で土屋君に会う。黨事務所えよる。
共社合同のメッセージ出来る。
夜、“唯物弁証法入門”をよむ。
受信　永島宗三郎、吉田収、羽仁五郎、渡辺四郎、

○一月七日（金）　　雪　　寒
午前、雜用。
午後、子供二人をつれて紅花劇場え行き、“鐘の鳴る丘“をみる。
夜、讀書。
受信　常井直正、鳥海正男、松本文二

○一月八日（土）　曇　　寒
午前、子供二人をつれて学校え行く。
午後、大映で“三十三の足跡”をみる。
生徒がボツボツ歸つて來た。
マーシャル国務長官辞任。
夜、雜誌を読む。この休みわ雜誌をよんでくら
したようなものである
受信　岩淵直助

○一月九日（日）　　小雪　　寒
午前、雜用。
午後、学校。一時―四時、大学の件につき会議。
この休みわ全く単調であつた。
夜、雜誌を読む。

○一月十日（月）　　晴　後雪　　寒
午前、雜用。
午後、延世と子供二人街え行く。
学校。山新等えよる。十日市で賑う。
夕方、大野さん來る。
“別册哲学評論”着。中々立派である。
夜、明日の用意など。
発信　林勝郎、白石静男、母、民友社
岩淵直助、
受信　民友社、林和幸、岩波書店小売部、
堀尾勉、母、キネマ旬報発行所、

○一月十一日（火）　　晴　　寒
今日から授業開始。　理一、話。　文二、アリストテレスの
生涯と著作。
学校から小池旅館え行く。山岸外史氏等に会う。
午後二時半から教授会。　生徒課長の件。
９対１４。
夜、金谷と津田がくる。
梅本克己氏入黨。
夜、雜用。
発信　梅本克己、

○一月十二日（水）　　晴　　寒
午前、雜用。
午後、学校。三時から協議会。
夜、原稿のPlan。
山高の教授会もあわれなものである。すつかり
時代から置去りになつている。
発信　民友社、
受信　堀尾勉、松本文二、

○一月十三日（木）　　晴　　寒
午前十時学校。十一時から三大で共社合同
統一懇談会。
午後二時、学校。講堂で午前の続き。伊藤律
氏來る。二時半から教授会。生徒課長田中さん。
後、講堂え行く。五時終了。
“哲学と人間”４０册着。

○一月十四日（金）　　晴　　暖
午前、学校。　文三、先験的辯証論。街え行って
買物など。
午後二時から講堂で余と大野氏との入黨記念講
演会。四時すぎ終了。ホールえ行く。コンパ。九時終了。
受信　民科、学生評論社、

○一月十五日（土）　　晴　　寒
午前、読書。
午後、高陽堂迄行く。　紅花劇場で“破戒”
をみる。佳作。
配電会社來る。
“唯物弁証法入門”讀了。
発信　林勝郎、学生評論社、長谷川泉、
受信　山崎謙、八木林二、

○一月十六日（日）　　雪　　寒
午前、雜用。延世、“破戒”をみに行く。
午後、外出。須藤さんに会う。黨事務所で
大野さんに会う。一緒に野島さんを訪う。
夜、明日の用意など。

○一月十七日（月）　　曇　　寒
午前、学校。文一、理一、ハイデッガー。文三、“純
粋理性批判“終り。
午後、学校。二時半―五時、細胞会議。
関戸嘉光入賞。
発信　日本評論社
受信　日本評論社、東京大学学生新聞会、

○一月十八日（火）　　曇　　暖
午前、学校。理一、ハイデッガー。文二　アリストテレス。
午後、事務所。統一促進委員会。社会黨え
行く。
夜、花岡さん來る。

○一月十九日（水）　　晴後雪　　寒
午前、雜用。
午後、学校。一時から中心教授会議。三時
から全学協議会。
夜、讀書。
発信　母、共産黨長野縣、
受信　母

○一月二十日(木)　　晴後曇　　暖
午前、雜用。
午後、学校。二時半から教授会。
東京の林氏え雜誌をおくる。
夜、明日の予習など。
受信、梅本克己、鈴木裕、鈴木平八郎、

○一月二十一日（金）　　晴　暖
午前、学校。文三“実践理性批判”に入る。
午後二時半、教育会館。縣教連え共社合同
の申入れ。暖かくて春の如し。
母のことわ困つた問題である。段々啓蒙する
より外ない。
夜、山一高の原稿を書く。
発信　民友社、白石静男、林勝郎、上田庄三郎、
鈴木平八郎、醇郎、母、
受信　醇郎、母、上田庄三郎

○一月二十二日（土）　　曇小雨　　暖
午前、吾妻がくる。
午後、学校。　三時から組合総会。教員組合
わ駄目なものである。
夜“学生評論”の原稿を書く。４枚也。
発信　三一書房、唯物論研究所、
受信　三一書房、唯物論研究所、

○一月二十三日（日）　　曇　　寒
午前、投票に行く。場所わ二高。
午後、皆で齋藤写眞館で写眞をとる。後
子供二人をつれて街え行く。
“実存哲学批判”３５册着。
国民政府無條件降伏。
“学生評論”の原稿発送。
夜、明日の予習など。
発信　白石静男、

○一月二十四日（月）　　曇　　寒
午前、学校。　文一、理一、ハイデッガー終り。文三、
“実践理性批判”終り。
午後、市役所迄行く。　選舉速報に人だかり
がしている。　家えかえてつてラジオをきく。民自の
優勢と共産の進出。　長岡、竹内落選。
夜、明日の予習など。
共産党３５名。
発信　讀賣新聞社、世界評論社
受信　林勝郎、宮本政泰、讀賣新聞社
鳥海正男、大東出版社、今井清一、
民友社（電報）

○一月二十五日（火）　　晴　　暖
午前、学校。　理一、ハイデッガー。　文二、アリスト
テレス終り。
午後一時、師範え行く。学校センコウ委員会。
街え行き、大映で“新妻会議”をみる
夜、“毛沢東の思想”をよむ。
受信　長谷川泉
発信　鳥海正男、宮本政泰、

○一月二十六日（水）　　小雪　　寒
午前、讀書。
午後、学校。二時半から全学協議会。
神戸大学から学長、学部長投票用紙來る。
共産党３００万。この前の３倍。
夜、讀書。
発信　服部英次郎、神戸大学
受信　神戸大学

○一月二十七日（木）
午前、讀書。“毛沢東の思想”讀了。
午後、学校。二時半から教授会。
夜、明日の予習など。
発信　長谷川泉
“これからの哲学”十册着。

○一月二十八日（金）　　晴　　暖
午前、文三、カント終り。これで僕の三年の
授業わ終り。軍政部え行く。
午後一時半、梅月。文乙三のコンパ。黨事務
所え行く。　大野さん等と下條え行き、餅の御馳走になる。
“西田哲学の根本性格”３０册着。
受信　上田庄三郎、堀尾勉、醇郎

○一月二十九日（土）　　晴　　暖
午前、学校。　雜用。
午後、本の荷造りをして各所え発送。夕方、街
え行く。
夜、細胞会議。　和田、鈴木、橋本、小松。
発信　社会教育連合会、山本英一、林勝郎、醇郎、
鬼頭英一
受信　鬼頭英一、林勝郎、民友社

○一月三十日（日）　　前（雨）　　冷
おそく起る。　午前、雜用。
午後、外出。
夜、“今後の哲学”書き始める。
発信　出隆、山田坂仁、堀尾勉、
受信　三一書房、
山形もうるさいから、良い加減で（３月にでも）
神戸え行つて了おうかとも思う。

○一月三十一日（月）　　晴　　暖
午前九時、学校、十時―十二時半、メンタル・テストの
監督。
午後、外出。至誠堂に青島さんを訪い、本を贈呈
する。黨事務所えよる。橋本氏、西村氏山高え行く。
齋藤写眞店えよる。写眞出來ている。
留守中に坂本都留吉氏来訪。
“ヘーゲル哲学解説”、“哲学と文学”到着
夜、明日の予習など。
発信　坂本都留吉、
受信　冬書房、